表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第二章 独り立ちの週末 -A Weekend of Independence-
42/97

第41話 日曜日の冒険

 日曜日。学園の迷宮はいつもより静かだった。


「みんな休みの日まで探索しないのかな?」


 俺は、学園のダンジョンに篭っていた。ポーションを手に入れるためだ。

 昨日の新宿ダンジョンの探索で、俺はポーションの必要性を強く感じたのだ。

 ポーションがなくては積極的に先に進むことができないし、昨日のようにもしものことがあった時に対処できなくなる可能性があるのだ。

 ポーションは確率で言うと、スライム100匹倒すと一個くらいドロップするという。

 でもユノたちと大量にスライムを倒したときも、ポーションは落ちなかった。

 俺ってドロップ運ないのか……?

 ……いや、違う。アシッドスライムを倒した時に、R4ポーションを手に入れてる。


「そのぶん、今は出にくい」


 ――そう考えれば納得がいく。

 ……でも、本当は運が良ければすぐ出るんだろうなぁ。

 まあいい。ドロップしなかったら購買で買えば良いだけだ。でもお金がない。バイトでもするか?でもそうすると迷宮を探索する暇がなくなってしまう。ジレンマだ……。


 なかなか見つからないスライムを探しながら、ぐだぐだと頭の中で考えていたが、そんな俺にもついにR1ポーションがドロップした!今日ちょうど10匹目のスライムを倒した瞬間だった。


「うおおお、やったぞー!!!」


 つい叫び声を上げてしまった。しかしそれだけ嬉しい!

 最悪今日一日中ずっとスライムと戦う羽目になるかと思っていたので、午前中の早い段階でポーションを手に入れられたことは幸運だった。

 俺は腕時計を見る。まだ午前9時だ。今日はまだ一日時間がある。そうと分かれば昨日気になっていたあの場所へ行ってみよう。探索者リサイクル市に。


★★★★★


 新宿駅近くのダンジョン関連ビルの前には、いくつものテントと簡易テーブルが並んでいた。

 そこは週末限定で開かれるという「探索者リサイクル市」――現役探索者や引退したベテランが使わなくなった装備やアイテムを持ち寄り、フリーマーケット形式で売っているのだという。


「……おお」


 俺は思わず声を漏らした。思っていたよりも、ずっと賑わっている。

 場末のバザーみたいなのを想像していたけど、武具の並んだテーブルや、防具の吊るされたハンガー、何に使うか分からない金具や工具などが並ぶ雑多な景色に、探索者としての血がちょっと騒ぐ。


 商品を見ながら俺は歩く。

 錆びた短剣に「五百円」の値札が貼ってあったり、何に使うのか不明なガジェットに「魔力感知器」と書かれていたり。

 中には「鑑定済・呪いなし」と書かれた指輪も並んでいて、たぶんマジックアイテムなんだろうけど、いつか俺もこういうの買うのだろうか……などと、眺めているだけでも楽しい。


「いらっしゃい、何か気になるものはある?」


「あ、今日は武具を探しに来たんですけど」


 楽しく見ていたが、このお店は武器防具はおいていなかった。


「それなら腕の立つ探索者のお店で買うといい。実力がある人ほど武具にはこだわるからね」


「なるほど」


 そんな店員との会話を楽しみながらも、俺は何店舗か商品を見て歩く。


「いらっしゃい。お兄さん、安くしとくよ。革のジャケット、防刃仕様だ。二度までの切り傷には耐えるよ」


 声をかけてきたのは、おばさん……というにはちょっと目が鋭すぎる。たぶん現役だ。


「新品の三分の一の値段。サイズも合いそうだし、試着してみな」


「ありがとうございます。あの、こっちの鉄の短剣は……?」


「そっちは引退した旦那が使ってたやつ。刃こぼれはしてないけど重いから注意ね。バランスは悪くないよ」


 俺は短剣を手に取って、重さとバランスを確かめる。確かに木刀よりは断然殺傷力がある。でもこれを使って、魔物を斬る――。その感触を、少し想像してみる。


「……これ、いただきます。あとそのジャケットも」


 両方合わせて七千円。交渉の末、端数を切ってもらえたのはラッキーだった。


「ありがとうお姉さん!」


「やだよ!お姉さんって、あんた上手だね!」


 前世の記憶で、女性に対しておばさんと呼んではいけないという認識があった俺はお姉さんと呼ぶと、おばさんは照れて俺の肩を思い切り叩いた。

 バン!


「痛い!」


 おばさん、俺より絶対強いんだから、加減しないとお客さん殺しちゃうよ!

 思ってもそれは言えなかったけど。

 それにしても、学園の購買で売っている新品の武具に比べたら格段にお得に買い物をすることができた。

 なかなか良さげな武器防具を手に入れて満足した俺は、やはりそれを実際に使ってみたくなるわけで……、目の前にはダンジョンがあるわけで……。


 昼飯食ったらちょっと行ってみますか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ