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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第二章 独り立ちの週末 -A Weekend of Independence-
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第38話 第三階層

 俺は第三階層を一人歩く。景色はこれまでと変わらないのだが、静かだった第一階層や魔物の気配でざわざわしていた第二階層ともまた違う雰囲気だ。ただ俺が緊張しているだけなのかもしれないが、非常に緊張感のある空気感だ。

 第二階層までは時々探索者の姿を見かけたのだが、今のところここでは見かけない、人気がない階層なのかもしれない。この階層に出没するゴブリンは人型の魔物である。もし探索者と出会ってもゴブリンと間違えて襲ってしまってはいけない。気を付けなくてはいけないだろう。

 そんなことを考えながら曲がり角を曲がった時、そいつはいた。


 事前に調べた情報の通り、身長は約1mくらい、全身緑色の体をした小鬼。ゴブリンだ。明らかにゴブリンだ。さっき人間と間違えてしまってはいけないと思っていたが、これは間違えることはない。人間とは全然違うのだ。緑色の体は実際に目にするとかなり気持ちが悪い。


 俺は手にした木刀を強く握った。

 幸いゴブリンはこちらに気づいていなかった。先制攻撃ができればかなり優位になると思い、足音を立てないように静かに忍び寄る。

 と思ったが、どうしても足音は消せなかった。

 ザッ、という俺の足音にゴブリンは振り返った。

 ゴブリンがこちらに気づき、表情を一変する。口を開けて牙をむき出し、俺という敵を見つけたゴブリンは殺意を全開に向けてきた。


「……怖え。でも、やるしかねえ!」


 ゴブリンは俺に向かって襲い掛かってくる。

 俺はとっさに構え直した木刀を、勢いそのままに振り下ろす。

 ゴンッ!と頭蓋を打つ乾いた音。衝撃でゴブリンは前のめりに転がった。

 だがゴブリンの目はまだ死んでいない。手をつきよろめきながらも、再び立ち上がろうとする。


 俺は瞬時に判断する。木刀を振るには近すぎる。


「チッ!だったら……!」


 俺は右足を跳ね上げた。

 つま先には鋼が入った探索者用ブーツ。そのつま先がゴブリンの腹にズドンとめり込む。


「ギャッ!」


 悲鳴をあげて吹き飛ぶゴブリン。地面を転がり腹を抱えて痙攣している。

 俺はすぐに間合いを詰める。

 ゴブリンはまだ死んでいない。

 ゲームのようにはいかない。軽く木刀を振っただけじゃ魔物は終わらない。

 どこを狙えば確実に仕留められるか、木刀を構えたまま黙考していると、突然ゴブリンは起き上がろうとした。


「クッ!」


 考えるよりも先に体が動いていた。

 俺はゴブリンが立ち上がるよりも先に、その首を足で踏みつける。

 ブーツ越しにゴブリンの首の骨が、バキッと折れる感触が伝わってきた。

 その瞬間ゴブリンの体が霧のように崩れ、マジックジェムだけが地面に転がっていた。


 俺は短く息を吐き、額の汗を拭う。

 心臓が嫌なほど早く打っていた。だけど、それでも俺の手に震えなどはなかった。


「ふう……」


 第三階層での俺の初めての戦闘が終わった。


 俺はジェムを拾いながら、今の戦いの反省をする。


 レベル3推奨の第三階層にレベル2で降りてきてしまったが、やはり攻撃力が弱くなかなか苦戦するということが分かった。

 ゲームの世界では一番弱いザコキャラであるゴブリンなのに、倒すのにこんなに苦戦するとは思わなかった。

 今回はゴブリンがたまたま一匹だったからよかった。ゴブリンは群れることがあるという。今の感じだと、もし複数匹のゴブリンと出会ってしまったら大変だと思う。

 それと、人型の魔物を殺すことに対する嫌悪感だが、俺は意外と平気だった。俺にはやはり魔物は魔物という感じがあるのだ。人間に対してはできなくても、魔物に対してなら殺すために攻撃することができる。

 それらを踏まえ、今日はこのままこの階層の探索を続けるが、一度帰るかを決めなければいけない。


 俺にはもう一つ気になってることがあった。俺は今レベル2だ。一人で第二階層の魔物を100匹倒せばレベル2から3になるというなら、第三階層の魔物を何匹倒せばレベル3に上がるのだろう?

 俺はゲームと同じように、魔物には経験値があるのだと思っている。もし経験値が10倍多いなら、ゴブリンを10匹倒せば俺はレベル3になれるのではないだろうか?

 今日はとりあえずそれを目標にしてみようと思い、第三階層の探索を続行することにした。


 第三階層の探索は、まだ始まったばかりだ。


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