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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第二章 独り立ちの週末 -A Weekend of Independence-
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第37話 ジャイアントリザード

 第二階層の階層主の間に入った瞬間、ズズズ……と鈍く低い唸りが響いた。

 そこは第一階層と同じ構造でドーム状の部屋になっていた。部屋の中央にいるのは巨大なトカゲ。ちろちろと長い舌を出している口元に見えるのは鋭い歯、鉄のムチのようにぶんぶんと尾を振っていた。

なんというか写真で見たよりもかなり凶々しい。写真ではワニみたいだと思ったのだが、実物を見たらワニというよりもはや恐竜だよ、これは。

 その存在感の大きさに、戸惑う俺。

 階層主のジャイアントリザードはこちらの出方を伺っているようだ。


「やるしかないか……」


 怖気づいていても仕方ない。俺はジャイアントリザードと戦うべく、一歩ずつ前に踏み出していった。


「キシャーッ!」


 口を開けて牙を光らせて威嚇してきた。

 俺は一歩横へスライドし、斜めの角度からジャイアントリザードの首を叩く。

 ぼすっ!と、肉を叩いた感触。スライムとは違う、生物独特の感触が木刀から伝わってくる。

 すぐに木刀に噛みつこうとするジャイアントリザード。俺は手を引いて木刀を引く。

 今度は脳天に一撃を叩き込む。

 ガツン!という頭蓋骨に当たった衝撃。ジャイアントリザードは肩をすぼめる。

 効いているのだろうか?

 と、すぐにジャイアントリザードは俺に向かって突進してきた。

 短い四つ足を素早く動かし迫ってくる姿に恐怖感を覚え、俺は素早くサイドステップで横方向へと避ける。

 ジャイアントリザードの噛みつき攻撃が空を切る。

 こんなのに噛みつかれたら大けがどころじゃすまない。死ぬな……。

 そう考えた時、なぜか俺は恐怖よりも心地よい緊張感を覚えた。


 その後は奴の噛みつきにだけ気を付けながら、木刀で思い切り叩きつけることの繰り返し。

 木刀ではなく鉄の剣ならばもっとダメージを与えられるはずだ。武器の強化も必要だと感じながら、それでも目の前の戦いに集中する。


 そしてジャイアントリザードが一瞬止まった。四本脚を踏ん張る。この動きは俺は事前に調べて知っていた。

 尾の横なぎだ。

 体を大きく反転させたジャイアントリザードが、太い尻尾を思い切り振ってきた。これは打撃として強力なだけでなく、この一撃で姿勢を崩して倒れたところへ奴は圧し掛かり噛みついてくるのだ。


「よし、今だッ!」


 俺は逆にそれがチャンスだとも分かっていた。

 振りつけられた尻尾を飛び越え、無防備になったジャイアントリザードの横っ面を木刀で思い切りぶん殴った。

 痛恨の一撃だった。

 ジャイアントリザードは、俺の攻撃を受けその巨体を仰向けに倒れた。

 ドスン!という巨体が倒れた音とともに、奴は絶命し、消滅した。マジックジェムを残して。


「ふう……。ま、レベル3で挑むのが正解だったかもしれないけど──レベル2でも、やってやれないことはないってことだな」


 俺はそう呟くと、マジックジェムを拾い上げた。

 そして目の前に出現した、第三階層へと続く階段を降りてゆくのだった。


 ★★★★★★★★


 第三階層もこれまでと同じような洞窟の中だった。ちなみに第四階層からは雰囲気が変わるらしい。

 そういえばジャイアントリザードを倒してレベルが上がってないかが気になり、俺はスキル偽装を使って、自分の今の状態を確認してみた。


一ノ瀬シロウ LV2▶

スキル:スキル偽装(非表示)▶

パーティー:なし


 宙に浮かぶスキルボードに映し出されたのは、代り映えのない同じ情報だった。


「まだレベルは上がらないか……」


 第二階層の魔物を一人だったらだいたい100匹、四人パーティーなら約400匹倒すとレベル2から3に上がるという。

 俺はレベル2になってから第一階層のスライムをたくさん、ヒュージスライムをパーティーを組んで2回、さらにソロで1回倒し、第二階層では合計4体の魔物と、階層主のジャイアントリザードを倒した。

 階層主なんだからちょっとくらい経験値が髙くてもいいと思うのだが、とにかくこれくらいの数ではレベル3には届かないらしい。

 レベル3になっていなかったのは残念だが、迷宮の入り口のスキルボードまで戻らなくてもその都度確認できるという点では、この”スキル偽装”というスキルは便利だ。意味のないスキルだと思ったが、役に立つところもある。


 さて、俺はスキルボードを消すと、辺りを見回す。

 ここは第三階層だ。出現する魔物は第二階層とまた変わる。

 第三階層に出現するのは、ゴブリンだ。

 身長が1m程度の小鬼。狂暴だが、力も弱く俺の好きなテレビゲームではザコ敵の代表的存在だ。

 だが現実世界ではそこまで弱くないらしい。

 まず、二足歩行で武器を手に持っていることがある人型のモンスターだという点が厄介だ。第一階層のスライムや、第二階層の動物型モンスターを倒すのと、また違った忌避感があるのだ。

 凶悪な顔をしていて知能が低い魔物ではあるが、ゴブリンの体のサイズ的に小さな子供を殺しているような気になってしまう人もいるらしい。そういう心の人は、この階層でリタイヤせざるを得ないそうだ。

 魔物は魔物、人は人、そう割り切れる心があるかどうかが試される階層らしい。

 俺の場合はどうだろう?

 自問自答してみるが、なんとも分からない。とにかく戦ってみて、俺がどう感じるかだ。

 俺は第三階層の通路を、前に歩き出した。

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