表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第二章 独り立ちの週末 -A Weekend of Independence-
37/98

第36話 第二階層

 結局俺一人で第二階層へと降りてきた。

 三宮たちは自分たちの力で倒したわけじゃないからもう一度挑戦しなおすと言って、部屋を出て行った。

 なんか順番を割り込みしたみたいで申し訳ない。


 気持ちを切り替えて、さあ、念願の第二階層の探索を始めよう。

 階段を降りた底は、第一階層と同じような洞窟のような風景が広がっていた。

 しかしながら俺は予習して知っている、出現する魔物が全然違うのだ。

 第二階層にはスライムはいない。いるのは大トカゲや大カエル、大ナメクジなどの動物系の魔物だ。スライム一種類だけだった第一階層と違って、魔物の種類が増える分、魔物に合わせた対応力が必要となってくる。

 と、知識だけではやはりなんとでも言える。とりあえずは魔物を見つけたら戦ってみて、実践してどうかを感じてみよう。

 俺は第二階層を歩いて行った。魔物の気配がほとんどない第一階層と違って、常に遠くで何かが動く音がしていて、いつ魔物と遭遇してもおかしくない雰囲気を感じる。良い感じの緊張感だ。俺は木刀をギュッと握りしめる。


 10分くらいは歩いただろうか?なかなか魔物と遭遇はしない。

 そういえば今日は土曜日だ。


「今日は魔物もお休みですか……? 」


 なんでやねん!

 あまりに退屈で、ついしょーもない独り言をつぶやいてしまった……。

 それにしても道中何組かの探索者とすれ違ったのだが、魔物とは本当に出会えない。第一階層でもそうだったが、もしかしてここのダンジョンって、魔物よりも探索者の方が数が多いのだろうか?

 それと思い返せば学園のダンジョンの第一階層でも、普通に歩いているだけではなかなか魔物と遭遇しなかった。ここも同じなのだろうか。だとしたら魔物がいそうな場所を探すしかない。

 例えば岩陰とか……と思って壁際にあった岩を見ると、表面が微妙に動いている?

 あっ!違う、これ岩じゃない!


「うわっ!」


 岩だと思ったのは、ごつごつした体表に覆われている大カエルだった。


「ゲコ、ゲコ」


「うわあああ!」


 俺は大カエルの鳴き声にびっくりして、慌てて木刀で思い切り殴った。

 殴った瞬間、手に伝わってくるヌメっとした感触と、想像以上の重さに思わず顔をしかめる。

 思わず木刀を構え直すと、大カエルがこちらを睨んだ──ような気がした。

 いや、睨むとか、カエルにあるのか?……でも怖いものは怖い!

 俺は恐怖心を振り払い、再びカエルに木刀を振り下ろした。

 硬い。何発も殴っているのになかなか死なない。

 だが逆に大カエルからも特に激しい攻撃をしてくるわけでもないので、俺はとにかく殴った。

 なん十発木刀で殴っただろうか、ようやく大カエルは死にマジックジェムをドロップした。


「はぁはぁ……」


 ちょっと慌ててしまって息切れしてしまった。

 額の汗を拭う。

 よし、問題ない。先へ進もう。

 その先では3匹の大コウモリと遭遇した。足元にばかり気を取られていたため、突然上からバサバサと音がした時にはまたビックリしてしまった。こんな姿をユノたちに見られたら笑われてしまうところだった。幸い今俺の周りに俺の驚いた姿を笑う者はいない。これが一人探索の良いところだ。

 大コウモリにはびっくりしたが、野球のようなフルスイングですぐに倒すことができた。スピードは速いが、普通のコウモリと違ってデカいので、こちらの攻撃も当てやすい。田舎育ちの俺は、夜街頭に群がるコウモリを見たことがあるが、あれは動きが早かった。同じように打ち落とすことは難しい気がする。


 そんな感じであまり第二階層の魔物と遭遇することなく進んでいた。地図に載っている階層主の部屋を目指して歩いていたため、いつの間にか第二階層の階層主の部屋までたどり着いてしまった。

 扉の前では、ここでも順番待ちの行列ができていた。

 列に並んでいる探索者は、見たところ全員がパーティを組んでいた。ソロは俺だけだ。

 中には立派な鎧を着た男や、女性だけのパーティもいる。全員が大人なのでちょっとだけ気圧される。


 それで……、どうしよう?

 初めてのヒュージスライムとの闘いを反省し、俺はあらかじめある程度の魔物の知識を調査しておいた。

 第二階層の階層主はジャイアントリザード。第二階層に出没するオオトカゲのさらに大きいバージョンだ。体長が3mから4mくらいあるらしい。写真を見たがほぼワニだ。だがワニより口が小さい。

 ジャイアントリザードとの戦い方は、噛みつき攻撃にだけ注意すれば特に問題ないらしい。


 さて、階層主の事は分かっているが、学園では第二階層の階層主と戦うには自分がレベル3になっていることが条件となっている。ぶっちゃけ第二階層でほとんど戦っていない俺はまだレベル2のままだと思われる。この階層でもっと戦ってレベルを上げてから挑戦するのが良いか、それともレベル2のまま挑戦してみるか、どちらにしようか悩むなあ。


 もしレベルを上げてからにするとしたらどうだろう?

 基本的に第二階層で一人でおよそ100匹の魔物を倒すとレベル2になると言われている。今日これだけ歩いて4匹しか遭遇していない。今のペースだと今日明日第二階層の探索を続けてもレベル3になるのは難しいだろう。

 もしこのまま第二階層主に挑戦するとしたらどうだろう?

 もしかしたらレベル2の自分でも倒せるかもしれないし、手に余るかもしれない。でもその時は入り口から逃げて出てくればいいのだ。第一階層で会った三人組も、第一階層主の部屋をやり直したと言っていた。簡単な話だ。

 そもそも学園のカリキュラムは安全性を重視しすぎていて効率が悪い。ここは学園のダンジョンではないのだから、俺は俺のやり方でやらせてもらうとしよう。それじゃとりあえず腕試しで挑戦してみますか!


 俺の考えはまとまった。と、入り口で並びながら長考していたら、そろそろ俺の順番がくるな。

 まあ頑張ってみますか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ