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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第一章 迷宮と少年たちのはじまり -The Beginning of Labyrinth and Youths-
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第25話 百田マイカの魔法の練習

 俺たち四人は、百田マイカの水魔法の練習をするために、ダンジョンの第一階層へと降りてきた。

 同じように探索に来ている他の誰かの邪魔にならないよう、ある程度広さがある場所へとやってきた。

 ここで迷宮マニアの俺は、まだ授業で習っていない知識を三人に披露する。


「スライムの弱点は火属性だ。逆にスライムは水属性には強い。だからマイカの水魔法が成功してもスライムを倒せない可能性があるが、今回の目的はスライムを倒すことじゃないから気にするな」


「えー、それじゃこの第一階層に来た意味がないんじゃない?」


 俺の説明に早坂ユノが反論する。


「そうは言っても俺たちはまだ第二階層へ降りる許可をもらってないじゃないか。ホールで練習してもダメだったのは、実戦の緊張感がなかったからかもしれない。だとしたらここでやるしかない。うまくいかなかったら条件を変えてやってみるのは実験の基本だ」


「シロウはそんなんばっかだね」


「迷宮攻略は検証の繰り返しなんだ!」


 熱く語る俺。他の三人の冷ややかな視線を感じる。


「ま、まあいい。じゃあマイカ。いつものように水魔法を使ってみてくれ。スライムが出てきたら俺たちで対処する」


「う、うん!」


 俺から言われ、マイカは両手を上に挙げて魔法をイメージした。

 マイカの頭上に、大きな水の塊が現れる。明らかにでかい。家庭用の風呂が一杯になるくらいある。

 水球ウォーターボールの魔法は、野球のボールくらいの大きさが基本らしい。モンスターに与えるダメージは、水球の大きさよりも射出速度の方が重要だ。

 両手を挙げたマイカは、水を小さくしようとイメージしているようだ。だが頭上の水の塊は、ゆらゆらと揺れているだけで小さくはならない。


「ダメ……うまくできない……」


 苦しそうな声でマイカが言う。そこで俺は声をかける。


「よし、いったんその水を投げてみろ)


 それまで小さな水球を作ることだけ練習してきたらしいマイカは、俺の指示に驚いたような顔をする。


「え、でも……」


「大丈夫だ!ほら、早く」


「う、うん)


 俺に促されて、マイカは両手を前に向けて降ろした。

 ざぱーん!

 マイカの頭上の水は、前方に飛んでゆくことなく、重力に負けてそのまま俺たちの目の前にぶちまけられた。

 当然俺たち四人は水浸しになる。


「ご、ごめん!」


 慌ててマイカが謝る。なにを謝ることがあろう?そのために俺たちは服の下に水着を着てきたではないか。


「気にするな。こうなるのは想定内だ。さあ、もうこれ以上濡れても気にならないはずだ。もう一度やってみよう!」


 びしょぬれになりながら、俺はそう伝えた。

 ここにはマイカに怒る人はいない。

 マイカは俺、ユノ、イオリの顔を見て、怒っていないことを確認し、もう一度挑戦してみるのだった。


「ん?」


 接近するまで気づかなかったスライムが一匹足元にいるのに気づき、俺は木刀で突いてそれを倒した。

 スライムを倒したのを確認し、マイカはもう一度頭上に水の塊を浮かべる。

 やはりでかい。でかいと前方に射出するのも難しそうだ。


「とりあえずそれも捨ててしまいなさい」


「はい」


 俺の指示で、もう一度頭上の水を前方に落とす。

 激しく水が跳ねた。


「やっぱりうまくいかない……」


 びしゃびしゃな水たまりの中、マイカが残念そうにつぶやいた。

 俺はマイカの魔法に、ある推論を立てていた。マイカのやる気がなくなる前にそれを伝えておこう。


「俺の想像なんだが……、マイカは魔力堆積症という病気だと言ったよな。体内に溜めすぎた魔力が脂肪に変わってしまうという……」


「うん」


「だとしたら、ゲームでいうとマイカはMPが高いってことだと思うんだ」


「MPって何?」


 マイカから想定外の答えが返ってきた。

 思わずユノ、イオリの顔を確認する。


「私も知らない」


「私もだ」


「え?うっそ?ゲームやらないの?」


 俺の質問に、三人とも肯定の頷きを見せた。


「まじか?一般常識だと思ってた。MPってのはマジックポイントの略で、その人が持っている魔力の量のことだ。同じ魔法の消費魔力は一定として、MPが高いほど使える回数が多くなるんだ」


「なるほど」


「それで、マイカは本来の最大魔力量以上の魔力が今体内に溜まっている状態だと考えられる。そのせいで使う魔法、今回はウォーターボールの魔法を使おうとした時、例えば本来の消費MPは10だとして、体内の魔力量が多すぎて加減ができず100くらいMPを使ってしまうんじゃなかろうか?」


「それででっかい水が出ちゃうの?」


「俺の仮説だとそういうことだ」


「じゃあどうすればいいのよ?」


 早坂の問いに、俺はよくぞ聞いてくれたという顔で答える。


「まずは余分な魔力を消費することだ。失敗でもいいからたくさん魔力を消費して、体内のMPが減ってきたら、消費魔力も調整しやすくなるんじゃないか?」


「なるほど!」


 俺の説明が腑に落ちたようで、マイカが明るい表情を見せた。


「じゃあ、とりあえずは水球を小さくするイメージはやめて、何回か水を撒いてみよう!」


 俺がそう説明している間も、イオリが何匹かスライムを倒していた。


「なんだか今日はスライムがよく湧くな……」


 ザッパーン!

 俺が倒されたスライムの後に残されたジェムを見ていると、再びマイカの水魔法が地面へと振り撒かれた。

 すると、また新たにわらわらとスライムが集まってくるのが見えた。


「1、2、3……」


 俺はスライムを数える。明らかに通常よりも出現数が多い。

 これはいったい何が起こっているんだ?

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