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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第一章 迷宮と少年たちのはじまり -The Beginning of Labyrinth and Youths-
24/97

第24話 名前の呼び方

 その日の放課後、約束通りダンジョンへ潜るため、俺たち四人はダンジョンの入り口までやってきた。

 百田の水魔法が失敗してびしょぬれになる前提で、濡れてもいいように全員服の下に水着を着てきた。


「百田はいつもこのロビーで練習してたみたいだけど、今日は第一階層に潜ってみないか?」


「え?でも、危なくないかな」


「大丈夫。スライムが出たら俺たちが倒すし、ここで練習して上手くいかなかったなら、場所を変えて環境を変えたら何か変わるかもしれないじゃないか」


 そう言って俺が百田を説得する。


「そんなこと言って、自分が戦いたいだけなんじゃないの?」


 早坂が的確なツッコミをしてくる。

 確かにそれもある。百田が魔法を練習している間、俺たちはアドバイスするか応援するか、要するにただ見てるしかできない。それならばいっそスライムを倒しながら見守っていた方が時間の有効活用ではなかろうか?

 第一階層へ降りることに特に反対もないため、そうすることになった。


「それじゃあパーティーを編成しなくちゃね!」


 一緒に迷宮に潜るのであれば、パーティーを組んでいた方が経験値の効率がいい。

 授業でなくてもそうするのが良いだろう。

 早坂の号令でパーティーを編成した。


「それでは、マイカ、イオリ、一ノ瀬君、パーティーに入ってください」


「はい」


「ああ」


「あー」


「何そのやる気のない返事?」


 俺の変な相槌に、早坂はあきれるように言った。


「これも検証の一つだ。どんな回答でもパーティーに入れるかどうかの検証だ」


「何それ?」


「まあ確認してみよう」


 そう言って早坂を促す。早坂がホール中央にあるスキルボードに手をかざすと、そこに早坂のスキルが表示された。


・・・・・・・・

早坂柚乃:LV1

スキル:治癒魔法LV1

パーティメンバー:百田舞香、瀧川伊織、一ノ瀬獅郎

・・・・・・・・


 俺も問題なくパーティーに加入していた。

 スキルボードを見ながら俺は呟く。


「やはり、意思表示だけすれば、どんな言い方でもパーティーに入れるんだな」


「どうでもいいよそんなの」


 早坂が俺を冷たい目で見ながらそう言った。いろいろ試したくなる俺の性格を否定するような事を言われた気がする。しかしそんなことはないはず、一つ一つ検証してこのダンジョンのルールが分かってくるはず。教科書に載っていることがすべてではないのだから、自分で確認することは大事なのだ。

 その時、瀧川がみんなに話しかけてきた。


「ところでみんなに提案なんだが……」


「何、イオリ?」


「さっきの編成の時も思ったが、私たち3人はお互いに名前呼びだけど、一ノ瀬の事は苗字で読んでるだろう。一ノ瀬も私たちのことを苗字で読んでいる」


「そうだね」


「だが、苗字呼びだと、少々面倒な気がするんだ。いちのせも4文字、私たきがわも4文字、迷宮探索をしてると、なるべく早く意思疎通を図らなければいけないこともあると思う。そしたらできるだけ二文字が三文字で呼び合う方がいいと思うんだ、というかこれは私の父の受け売りなんだが……」


 そういえば瀧川の親は迷宮探索者だと言っていた気がする。そういうものなのだろうか?いや、学園の迷宮はそこまで危険ではないらしいので、そんな細かいことを気にしなくてもいい気もする。三文字も四文字もそんなに変わんないだろう。


「分かった、そうしよ!じゃあこれから一ノ瀬君のことも名前で呼ばせてもらうね!」


 早坂は瀧川の提案に速攻で乗っかった。ノリが軽い。これがコミュ強というものか。

 まあ別に反対する理由もないし、良いだろう。


「分かった。ユノ、イオリ、マイカ。これからは三人とも名前で呼ばせてもらうよ」


「よろしく、シロウ」


 瀧川もすんなりそう呼んできた。もしかしてこいつが面倒だからそう呼びたかっただけなのかも?

 そして百田も俺を名前で呼んでくる。


「し……シロウ君……」


「マイカ、恥ずかしがってちゃダメだ」


「え……ええ……?」


 瀧川の注意されたが、百田はそれほど親しくもない異性の俺の事をいきなり名前呼び捨てにするにはハードルが高かったようだ。


「まあいいじゃないか、緊急時じゃなきゃ。でもマイカも緊急時は俺の事呼び捨てで呼んでくれ」


「う、うん。分かったよ」


「よろしくね、シロウ!」


 最後に早坂からそう呼ばれた。

 俺はそう呼ばれたことに既視感を感じた。


「なんかユノから前にも名前で呼ばれてたことがあるような気がするな。中学の時はずっと苗字で呼ばれてたよな?」


「そうだね。幼稚園の時はシロウって呼んでたね」


「ああ、それだ!そういや俺たち幼稚園の時も同じだったっけ?俺あんま覚えてないや」


「私は覚えてるよ」


「でも何で途中から一ノ瀬君って呼ぶようになったんだ?」


「そりゃあ、小学校に入ったら周りに男子を呼び捨てにする子がいなかったから恥ずかしくなったからだよ」


「そうなのか?じゃあ何で今は恥ずかしくないんだ?」


「今でも恥ずかしいよ!」


 早坂はそう言いながら、照れ笑いを浮かべた。

 恥ずかしいなら止めればいいのに……。

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