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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第七章 天衣無縫 -individuality-
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第104話 早坂ユノ 2 弓術部体験入部

 もしかしたら弓なら私もパーティーの役に立てるのでは?今日の武器術の授業で初めて弓術を習った私はそう思い、放課後弓術部のドアを叩いた。

 体験入部を申し出て弓術部の練習場へ入っていくと、そこには知った顔がいた。


「あら?早坂さん」


「ヒカルさん。それにメイさん」


 そこにいたのは1年A組の九条ヒカルさんと如月メイさんだった。


「あなたも弓術を習いに来たのね」


「うん。ヒカルさんたちも?」


「ええ。私はやっぱり剣が向いてないみたいで、弓なら皆さんのように活躍できるかもしれないと思って」


 ヒカルさんと言えば、連休前には第二剣術部で特訓をしてスライムを一撃で倒せるようになっていた。あんなにがんばっていたのに剣術を諦めたのだろうか?


「ヒカルさんは第二剣術部に入っていたんじゃないの?あんなにがんばってたのに?」


 私の問いに、ヒカルさんは苦笑いを浮かべながら説明してくれた。


「ゴールデンウィークに第二階層を体験したのだけれど、どうしても私の力では第二階層の魔物を倒せなかったんですの。それで剣以外のアプローチを試してみたいと思ったのですわ」


「……私と一緒だ。私もマイカと一緒にジャイアントトードを何十回も叩いてようやく倒せたんだ。第二階層の魔物って硬いよね。でもイオリとかシロウは一撃で倒しちゃうんだよ」


 あの時はレベル2だったが、レベル3に上がった今ならもう少し早く倒せるかもしれない。


「私も一ノ瀬さんにレベリングしてもらった時に、彼が一撃で魔物を倒すところを見ましたわ。彼は本当にすごいですわね」


 ヒカルさんが遠い目をして呟く。そう言えばゴールデンウィークに少しだけシロウ一緒にダンジョンに入ったって言ってたっけ。剣術であんなに努力していたのに上手くいかなくて、それでも前を向けるなんて、やっぱりヒカルさんは強いなと思った。

 私たちがそんな会話をしていると、鷹宮先輩が私たちに気付いてこちらに来てくれた。


「ヒカルさん。来てくれたのね」


「レナ様、ごきげんよう。ええ、体験入部をさせてもらいにきましたわ」


 声を掛けられたヒカルさんは、華麗にカーテシーをしてみせた。


「まあ、素敵な挨拶ができるレディになられたのね。ごきげんよう、ヒカルさん」


 そう言って挨拶をして返す鷹宮さん。二人ともとても洗練された動きで、見とれてしまう。


「メイさんもようこそ。それと早坂さんだったかしら?」


「は、はい!早坂ユノです!よろしくお願いいたします!」


 私はつい緊張してしまい、直立不動で返事をしてしまう。


「フフ……そんなに緊張しなくても大丈夫よ。さっきまで仲良くお話されていたみたいだけれど、お二人はお知り合いなの?」


「は、はい!」


 私が緊張しながら答えると、ヒカルさんが続ける。


「はい。早坂さんたちとは仲良くさせていただいていますわ」


「そうなのね。クラスが違う生徒と仲良くできるなんて、この学園では珍しいわね。素敵な事だわ」


 公爵令嬢のヒカルさんの口から仲良くって言ってもらっちゃった。嬉しいな。


「せっかく三人が来てくれたんですから、今日は私自ら案内するわ」


 弓術部部長の鷹宮先輩から直々にそう言ってもらえた。たまたまだけどヒカルさんと会えてラッキーだ。

 私はワクワクしながら動きやすい服装に着替えて改めて集合した。

 今日体験入部に来ているのは、私たち三人だけのようだ。


「今日は三人だけなのね。せっかく武器術授業で紹介したのだから、もう少し来てくれるかと思ったのだけど」


 鷹宮先輩が残念そうにつぶやく。

 そう言われて道場を見回すと、部員はそんなに多くなさそうだ。それに女子ばかりだ、

 私は恐る恐る聞いてみる。


「あのー、弓術部って人気がないんですか?」


「そうね。剣術部と比べたら全然少ないわ。特に女性ばかりの部だから男性が入部してくれないのも悩みなの。男性はどの人も前に出て直接魔物と戦いたいようなのよね。でもあなたたち三人だけでも来てくれて嬉しいわ。今日は楽しんでいってね」


 鷹宮先輩は、柔らかく微笑んだ。その笑顔に、不思議と緊張がほぐれる。

 どうやら人気のある剣術部は人数が多いため、第一と第二に分かれているらしいが、弓術部はそうではないらしい。だけど練習場に関しては一般の練習場と貴族用のハイテク練習場の二か所が併設されているそうだ。

 私たちはまずは一般の練習場へと案内された。

 そこは今日の授業でも訪れた場所で、学園の喧噪から切り離されたように静まり返っていた。

 建物は木造で、長い年月を経た梁や柱が柔らかな光を反射している。磨き上げられた板の間は足裏にひんやりと心地よく、ほんの一歩踏み出すだけで、外の世界とは違う空気に包まれるようだった。

 生徒たちが立つ射位の先は一段低くなり、そこからは屋外の射場が見渡せる。風通しのよい壁のない空間で、正面には白と黒の同心円が描かれた的がずらりと並んでいる。

 その距離は思っていたよりもずっと遠く、矢を放つというより「心を届かせる」ような儀式にも思えた。

 どこからともなく風が流れ込み、的の紙面がわずかに揺れる。

 そのわずかな音さえも、場の静けさを破らない。部員たちは誰ひとり声を発せず、弓を引くたびに竹の軋む音と、矢が放たれる鋭い風切り音だけが、場の空気を震わせていた。

 私は思わず息を呑んだ。

 ――ここでは、一本の矢を放つことが、祈りのように重く、神聖な行為なのだ。


 そしてその静寂を破るように、鋭い音とともに一本の矢が的の中心を射抜いた。

 鷹宮先輩だ。


「まずは和弓を使う練習をしてみましょう。これは技術だけでなく、精神の集中も大事になるわ。特にダンジョンの中では集中力が欠けやすいものよ。何度も何度も練習をして、そして戦いの中でも心が乱されることのないようにすることが大事よ」


 精神の集中……私もがんばらなくちゃ!

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