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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第六章 森林に眠る宝 -Legacy in the Forest Cave-
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第100話 お土産交換

「まさかあれほどの毒消し草がまだあるだなんて驚きだ」


 ダンジョンから地上へと戻ってきた公爵は、未だに驚きが治まらないようで、興奮気味に語った。


「それに新芽の部分だけ切り取ると再生するという話も驚きでした。斎藤さんという方はすごい探索者だったのですね」


 公爵ほどでもないにせよ、生駒さんもまだ少しテンションが高いままのようだ。


「後はそれがどれくらい待てば再び採取できるまで再生するかだな。その辺は実際に経過を観察しながら確認するとして、採取専門の探索者を手配する必要があるな」


 二人は毒消し薬作りの今後を熱く語り合っていた。

 そんな二人を見ていると、ヒカルが俺に話しかけてきた。


「一ノ瀬さん、ありがとう」


「お?」


「あなたのおかげで私もレベル3に上がることができましたわ。こんなに早く、そして簡単にレベルが上がるなんて思いませんでしたわ」


 ヒカルのレベリングも大きな問題もなくできた。

 家族旅行の最中にこんなところまで呼び寄せてしまったのだ、これくらいのお礼は必要だろう。それにレベリングのためにヒカルとパーティーを組んだついでに、こっそりヒカルのスキルをスキル偽装で使えるようにさせてもらった。これくらいしてもバチは当たらないだろう。


 ・・・・・・・・

 一ノ瀬獅郎:LV5▶

 スキル:スキル偽装(非表示)▶

     治癒魔法LV2(有効・非表示)▶

     水魔法LV1(有効・非表示)▶

     解析(有効・非表示)▶

 パーティメンバー:なし

 ・・・・・・・


 ヒカルのスキル解析は、スキルボードと同じ効果があるらしい。後で使ってみよう。

 俺がスキル偽装で自分のステータスを見ながら、増えたスキルを見てニヤニヤしていると、公爵が俺に声を掛けてきた。


「一ノ瀬君」


「あ、はい!」


「それではこのダンジョンは今後クローズドダンジョンとするように手配するよ。今日は本当にありがとう」


 クローズドダンジョンというのは、要するに非公開ダンジョン、特定の許可の出た者しか入れないダンジョンの事だ。反対に誰でも入ることのできる一般に公開されているダンジョンを、オープンダンジョンと呼ぶ。新宿ダンジョンなどがそうだ。

 学園のダンジョンは学園の関係者しか入れないからクローズドダンジョンになる。

 奥多摩ダンジョンはこれまでオープンダンジョンで、本来だれでも入れたのだが、もともと探索する者はほとんどいなかったし、毒消し草を第三者が根から抜いてなくなってしまうと山下さんの毒消し薬作りができなくなってしまうため、クローズドにするとのことだ。

 これは一般市民が勝手にできることではないため、公爵の権限を使って手配してもらう。

 貴族はいけすかないやつらも多いが、ヒカルのように協力的な貴族だったら頼るほかはない。


 そういうわけで、山下さんの毒消し薬作りと、斉藤さんが守ってきた奥多摩ダンジョンの毒消し草を守ることができたのだった。この完璧な着地に俺は大満足だ。


「ところで一ノ瀬君、山下さんの毒消し薬作りは一大事業になる。今回毒消し草を発見した君の利益分について相談したいのだが」


「え?どういうことですか?」


「おそらく山下さんの工場を立て直し、莫大な利益を生む工場ができる。その収益を山下さんと私の会社と君の三人で分け合うわけだが、これから生駒に収益計画を立てさせるので、利益配分について書面に残したいのだ」


「え?そんなのいいですよ!」


 俺は慌てて遠慮する。

 俺の仕事はここまでだ。

 斉藤さんと山下さんの手柄を公爵に引き継げただけで終わりだと思っている。


「なぜだ?遠慮は美徳ではないぞ?毒消し草を発見したのも君だし、毒消し薬を継続的に作るために私に連絡してくれたのも君だ。おそらく一生遊んで暮らしても困らないほどのお金が手に入るのだよ?」


「え?」


 一生遊んでも困らないほどのお金?ちょっと想像もつかない大きな話になってしまったのかもしれない。


「いやー、発見したのは斉藤さんで、俺は斉藤さんの残したヒントで見つけただけです。それに一生遊んで暮らすつもりもないですし……」


 それでも俺は辞退した。

 公爵は少し考えた後に答えた。


「分かった。それでは君の取り分はこちらで決めさせてもらって、君が困った時にするに準備できるように預かっておこう。それにしても娘に君のような友人ができていたとはな。これからも娘と仲良くしてやってくれ」


「い、いえ、こちらこそ……」


 そうして山下さんの工場に戻って、公爵たちが山下さんといろいろと話をしていると、探索者服から私服に着替えたヒカルが車から戻ってきた。


「一ノ瀬さん、これお土産」


 そう言ってヒカルから小さな包みを渡される。きれいに包装された、お菓子のようだ。


「おお、ありがとう。どこのお土産?」


「昨日話したでしょう?昇仙峡に行ってきたって」


「ああ、そういやそう言ってたな。山梨県だっけ?悪かったな、家族で旅行中に呼び寄せちゃって」


 ヒカルたち家族は昇仙峡というところに行って、観光と昇仙峡にあるというダンジョンでのレベリングをしていたそうだ。

 俺はGW中の家族旅行に水を差してしまったことを謝罪した。


「大丈夫よ。私は無事にレベル3になれたし、お父様は私たちが探索している間は暇を持て余していたらしいから」


 ヒカルは気にしていない様子で微笑んだ。

 ヒカルが許してくれたとしても、一人で残ってレベリングを続けているカズマさんから恨まれていないだろうかと不安になる。

 そんなことを考えながらヒカルからもらったお土産を見ていると、俺はふと思い出した。


「あ、ちょっと待って。そういや俺もお嬢にお土産があるのを忘れてたわ!」


「あら、ありがとう。何かしら?」


 俺はポケットからヒールジェムを取り出し、ヒカルの手のひらに乗せた。


「はい、お土産」


 ヒカルは手のひらの上に置かれたそれに書かれている数字を見て、絶句した。


「ランク4?!」


 彼女の声が裏返る。周囲の黒服たちが一瞬こちらを見た。


「おう!約束のランク4ポーションだ。ようやく手に入れたぜ!大変だったんだぜ!」


 俺は得意げに言った。

 先日ヒカルに連絡を取った後、俺はヒュージスライムの周回を行った。

 レベル5になって以前よりも楽に倒せるようになり、そしてついに昨日ランク4ポーションを手に入れたのだ。


「本当に手に入れたの?!」


「いや、3じゃ満足できないみたいなこと言われたからさ」


 俺が軽く言うと、ヒカルは慌てた様子で言った。


「ご、ごめんなさい、そういう意味じゃ……あなたに迷惑をかけっぱなしだったから遠慮したつもりだったのだけれど……」


「まあそれくらい遠慮すんなって」


 俺は笑って言った。確かに苦労したが、それも良い経験だった。


「本当にあなたって人は……」


 ヒカルは呆れているのか、尊敬しているのか分からない複雑な表情で言った。そして、ランク4ポーションをじっと見つめる。


「ありがとう。大切に使わせてもらうわ」


 彼女は真剣な顔で、俺に深く頭を下げた。

 こうして俺のゴールデンウィークは終わった。

 レベルは一つしか上げることができなかったが、ヒカルと約束したランク4ポーションを手に入れることができたし、水魔法の応用も発見できた。充実したゴールデンウィークだったなと、俺は奥多摩の自然を眺めながら思った。

以上で第六章完結です。

ここまでお読みくださりありがとうございました。


よろしければ、いいね、ブックマーク、コメントなどを残していただけると嬉しく思います。

第七章はでき次第アップしています。

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