由紀との接触
今回のターゲットは岐阜県池田町に住む、赤石由紀という名前の女性だった。
由紀はとてもおとなしい人で、自信がないのか、いつも縮こまっていた。
由紀に道すがらすれ違った。すれ違うときに由紀のポケットからハンカチをくすねる。
「あのー。落としましたよ。」
U氏はくすねたハンカチを渡す。
「あ、確かに知らず知らずのうちに落としていました。ありがとうございます。」
由紀は笑った。その笑顔はとても明るく、太陽のような温かい気持ちにさせるものだった。
そう、U氏は由紀に恋をしたのだ。
「あ、いえ。かわいいハンカチですね。」
「はい。このハンカチお気に入りのものなんです。友達からもらったものなんですけど、刺繡とかかわいくって、落としたなんて気づきませんでした。」
「落とさないように気を付けてくださいね。」
「はい。ありがとうございます。あれ、もしかして」
「ん?なんでしょうか。」
「もしかして、レモンの香水をつけていますか。私、鼻には敏感で」
「よくわかりますね。そうなんですよ。私体臭が臭くて、香水をつけて、紛らわせているんです。」
「そうなんですね。すごく、いい香りです。」
「ありがとうございます。あ、僕ちょっと行くところがあるのでここで。」
「ハンカチありがとうございました。」
由紀とはここで別れた。少しだけの会話だったが、とても幸せな時間であった。
もちろん、保留だった。由紀は生きるべき人間だ。あんな、笑顔が素敵な人間はいないと思った。
数日後、悲劇が起こる。