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EP 8

それより何より気になっていることがある。

「香山チーフ、この商品についてちょっとご相談があるんですけど」

繭香だ。

口を開けば、香山チーフ香山チーフ。

繭香が上げた加湿器が、売り上げもなかなかだし、上司の間で評判が良い。

「アロマオイルをリラックス系のラインナップからパフューム系に展開していきたいと思い始めているのですが、」

二人で頭を突き合わせて、企画書を覗き込む姿。

(近い近い近いっ! さすがに近いわ!)

頭を抱え込んだ。くそくそくそ。繭香もそんな可愛い顔で笑いかけんなよ!

これがヤキモチってヤツか。今まで妬かれる側だったから、逆に嫉妬したことがない。

最初は香山チーフがハイスペすぎて、野生の勘で敬遠してるだけだと思っていたが、それだけではないらしい。

嫉妬の渦が、俺の心を取り巻いている。こんなにどーんでいやーな気持ちになるのか……。

しかも、『チマチマ』のコーヒー缶。デスクの棚に供え物みたいに置いておくなよ。飲めよ。飲んではよ捨てよ。俺がやったアニメコラボ缶との、この扱いの差!

居ても立っても居られなくなる。俺は立ち上がって、二人に近づいていき、バンッとデスクに手をついて、「香山チーフって、既婚ですよね?」と主張した。

繭香、左薬指を見てみろっての! と。

すると香山チーフは冷静な目で俺を見上げながら、「八千穂くん、指輪気にしてたんだあ。俺、こんなんしてるけど半年くらい前に離婚しちゃってるからね。今はバツイチ独身」

そうかそうか、指輪してるから勘違いされるんだな、気がつかなかったわーと左薬指から指輪を引っこ抜いて、引き出しへと放り込む。

「教えてくれてありがとね、八千穂くん」

ぐぬうっと思ったが、後には引けない。

「そうでしたか。ど、どーいたしまして」

(バツイチだと? くそがっ)

知らず知らずのうちに、鼻息が荒くなり、香山チーフを睨んでいたようだ。

「八千穂くん、怖い怖い怖い。目も怖いし歯ぎしりするとハゲるよ」と言って、ニヤリと笑う。

ぎりぃ!! そんなんでハゲるかあぁ!!

このままでは負け戦、敗戦者としてデスクに戻らねばならなくなる。

「お、俺も企画書見ていただけませんか?」

しゅたっとデスクに戻り、書類を取り、香山チーフの前に突きつける。

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