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EP 28

駅を降り、八千穂の家へと向かって歩く。

さっきから八千穂は全然喋らない。また無言地獄かーい、勘弁してくれ〜と心でツッコむが、これは私の照れ隠しです。_:(´ཀ`) ぐはっ。

ちらと横顔を見る。ほうけているようにも見えるし、ちょい緊張してるようにも見える。

鼻、高っか! 野生の狼顔だからその横顔は、(むれ)は俺が守る! みたいに、きりっとしてる、鼻、高っか!

地味に見つめていると、途端にどきどきと心臓の鼓動が早くなってきて。

(やばい。よく見ると八千穂かっこよ……知ってたけど)

ってか、会社でも成績の棒グラフを順調にどんどん上に伸ばしているわけで、こんなハイスペ他にいます?

事務の四人衆がなりふり構わずくらいついてくるの、わかるー。

顔を真正面に戻す。

「も、もうすぐだから。そこみぎにまがったらすぐだから。えきからけっこうちかいだろ? でもやちんはすっげやすいんだぜ」

「……うん」

なんか話し方が平たい〜。

緊張してるんだろうかね、確かに八千穂はハイスペだけどほんまもんのハイスペってこんなんだったっけ。

なんか可愛くなってきた……可愛く見えてきた。

私、こんな可愛らしいころころワンコ相手に、なんであんなにムキになって嫉妬なんてしてたんだろ?

自分で自分を殴ってやりたい。

「ここ。ついた。めしつくるし。おかん、きょうやきんでおそいし」

なぜカタコト?

「はいー」

外観は普通のアパートだけど、白壁の洋風な造り。階段を二人、なぜか爪先立ちで二階へ。

カギを回してドアから玄関へ入ると、お香の良い香りがふわっと鼻腔を揺らす。

「お邪魔しますです……あ、これ。私が企画したアロマディフューザー?」

「うん。母の日にオカンにプレゼントした」

「ギフトにって人、確かに多かったのよ。買ってくれたんだね、ありがとう」

「ん。どうぞ上がって」

廊下を真っ直ぐに進む。

部屋はシンプルイズベスト路線のインテリア。そんな中、うちの商品もちらほら見受けられて、八千穂が企画したものも置いてある。

イケメンハイスペのお宅ってどんなん? って思ってたけど、まあだいたいは、お母さまのご趣味でいらっしゃるのね。同居ですからね。

「すごいオシャレな家だね」

「ありがとう。ほぼほぼオカンの趣味だけどな」

「八千穂のセンスの良さはお母さん譲りなんだね。なんかわかった気がする」

「お前ってまじで、ちょいちょい嬉しいこと言ってくれるよな。そう言ってたって伝えておくわ」

そして八千穂は晩ごはんに、エビチリと焼売を作ってくれた。

私も手伝って、サラダ 完!

「できたよ」

「ドレッシング冷蔵庫」

「お母さんの分もちゃんとある?」

「3人前ね」

フライパンからジャジャジャと言わせながら、エビチリを皿へと移した。

「エビチリとかって普通に家でできるんだ。中華料理屋でしか作れないと思い込んでたわ」

「ん? 逆にこの世界の料理すべてが、いち家庭のキッチンから産み出されているんじゃね?」

「そう思える八千穂のスペックよ。でも今日は、クックドゥさまさまってわけね」

「ぜってー間違いないやつ! そしてこの焼売も、チルドだけどな」

「いやいや侮るなかれ。チン焼売も、美味しいよね。洋カラシある? ありがと。じゃあ遠慮なくいただきます!」

「おう! どうぞ召し上がれ」

エビチリをひとつ口に入れる。甘辛な味付けにぷりぷりエビ。

「うっっっま」

「まあまあかな」

「それ過小評価。これなら消費税込みで1150円までなら払える!」

「……クックドゥで中華料理店やろかな」

さっきまですごい勢いで皿と口と往復していた八千穂の箸が、そこでふと止まった。


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