表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/32

EP 26

見ると、繭香が立ち上がって、捨て台詞的な何かを言い放つ。

「××ほにゃらら××『嫉妬』ほにゃほにゃ××」

そして俺の横を通り、カフェを出ていった。

何て言ったのかはよく聞こえなかった。もう一度ちらと見る。香山チーフは後ろ向きなのでその表情はわからないが、全体的に気まず〜そうな雰囲気が漂っている。

(……繭香がなんかやらかしたんかな?)

にしても香山チーフが追っかけていかないところを見ると、もしかして、これはチャンスかもしれないと思った。しかも最後のチャンス。

そう思うと、カバンと伝票を引っ掴んで立ちあがり、お金を払ってカフェを出る。駅方面へと向かう繭香を追っかけていって。そして。

「八千穂、こんなところでどうしたの!」

「後をつけた」

いやいやいやそれじゃ俺ヤベーやつ!

「後はつけたけど、断じてストーカーじゃないからな!」

なんで俺、こんなんなの?


電車に乗って、座席に座った繭香の隣に、俺も大人しく座った。

自宅まではそう遠くない道のり。二駅乗るだけの距離。けれど、肩っていうか左側側面は今までになくくっついていて、繭香の体温をほわり感じている。

少し混んだ車内。

さっきまでの香山チーフとのくだりがなければ、それだけで至福のひと時だ。俺の胸はドキドキ高鳴っていった。

「なあ、晩メシどうすんの?」

勇気を振り絞って訊いた。

「んーー? どうしよっかなぁ」

心ここにあらず。香山チーフのこと考えてるんかな。そんなの嫌すぎる。

飯だ。メシで釣ろう。

「お、お、オレオレんち、くくるくる来るか? メシ作っってやるやるし」

真っ赤にもほどがある。自覚があった。身体のどこもかしこもロボットのように動かない。

もちろんこの口もだ。カミカミで誘い文句は完全な不良品だが、これでオッケーをもらえたらどんなに……。

繭香といえば、俺の方をじっと見てきている。気がする。だが、見れねー。緊張しすぎると顔筋ってピクリともしないんだな。首も錆びついたかのように動かない。

しばし沈黙。そして、繭香も顔を戻し、大きなため息を吐いた。

え? え?

「はあ〜あ。どいつもこいつも……八千穂さあ、誘う人間、間違ってるよね」

一気に肝が冷えた。

「な、なんでそんなこと、」

「八千穂もさ、嫉妬させようとしてんの? それ、やり方間違ってるから」

「え、どういう意味……」

「ってか私と一緒に弁当食べて、彼女にヤキモチ妬いてもらおうって魂胆でしょ?」

「彼女? なんのことだよ、彼女なんていないっ! いないよ!!」

電車の車内だということを忘れて、叫んでしまった。これは否定しないとまずいという気持ちが、嵐のように渦巻いてきたからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ