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EP 1


ネットショップ経営の会社『indigo blue』に、その敵はいた。

私、花崎繭香(はなさきまゆか)、25歳は、八千穂類(やちほるい)という変な名前の同い年の男を、敵視している。

同期で入ったのに、私の2倍、いや正確に言えば1.967倍の利益を上げ、そしてほとんどの売り上げ表彰を掻っ攫っていく、ツワモノだ。

勝てない。いつまで経っても。

商品管理課の壁に利益率の棒グラフが貼ってあるのだとしたら、八千穂がダントツで1位、私は2番手。パワハラにびくびくな時代の流れで、営業成績の貼り出しは廃止になっているが、数字は常に私の頭の中にある。

(なによあれなんなのあれ)

じとっと睨んだ先には、給湯室の入り口近く、八千穂と事務の女の子たちがたむろしている。

(どうせどーでもいい話しかしていないだろうけど、あーうるさいうるさい)

耳を塞ごうとも、取り巻きどもの黄色い奇声はこじ開けるがごとく、耳に入ってくる。

「八千穂くんが選んだあのレインボーお弁当箱、爆売れしたね。すっごい人気!」

「さすが八千穂くんのセンスだよね〜可愛い間違いーない」

「ねー。私、7色全部買っちゃったもん! でもさ、八千穂くんが作ってきたお弁当のあれ。宣材写真も良かったんだと思うよ」

「あの八千穂くん手作りのお弁当ね! アスパラベーコンとか玉子焼きにカニカマ入ってて、ホント美味しそうだったもんね。八千穂くんと結婚したいぃ」

「そっすか。あざっす」

(なにがあざーっすよ。腹たつわあ)

けれど仕方なし。同期の八千穂は、オオカミ顔の野性味溢れるイケメンに間違いないからだ。

短髪黒髪をハネさせているのは、事務の女の子たちに、「八千穂くん寝ぐせぇ」と、ナデナデされたいがゆえ。

私は目の前のPCに視線を戻した。今取り掛かっている案件をブラインドタッチでガチャガチャさせながら、企画書を書いていく。

次にバズりそうな商品をリサーチ中。紙にし上に通して決定すれば、入荷の手続きに入る。目処が立ったら、魅力的に映えを意識しホームページにアップ。時には販促のためにSNSを使ったりインフルエンサーに紹介してもらう。これが私の仕事の一連の流れ。

(なーにがお弁当男子よ! 私だってヒット商品番付に堂々、名を連ねてるっつーの!)

心の中なら叫んでいい。

「次はぜっっっったい売り上げ1位を取ってやる!」

あ、口に出ちゃった。

「えーーーなにあれ感じわるう花崎さん」

「自分がトップ取れないからってねー。気にしないで、八千穂くん」

「ま、気にしてないっす」

そう言って、しらっと横を向く。

(あっそう私なんて眼中にないってか!! 激おこなんですけど!!)

ぎりぃ!!

もう少しでPCのキーボードを、手刀で真っ二つにしそうになったため、私は引き出しからお昼のお弁当を引っ掴むと、その場を離れた。

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