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[下僕視点]眠れる美少女の謎

再び俺が目を覚ますと、まず、地面が見えた。

凄まじい速さで視界の上へと流れて行く景色に、俺自身が動いているのだと気付くまで、少し時間が掛かった。


(なんだ? 腹のあたりがむずかゆい……)


妙な違和感から下を見ると、俺の腹には、つるつるとした表面の白く太い縄が巻かれている。

と思ったら、突然、俺の顔の前に白い蛇の顔が現れた。


「ぎゃあああ~~~!!!」


蛇の頭は、一つではなく、二つ、三つの頭が現れ、俺に向かって口を開けている。

なんと俺の身体を縛っていたのは、縄なんかじゃなく、蛇の身体だったのだ。

俺は、死に物狂いで逃げようともがいたが、蛇の胴体がぴったりと俺の腹に巻き付いていて、びくともしない。


(く、食われる……)


頭からぱくっと丸呑みにされるのだろうか。

前に何かのテレビで、蛇が自分の身体よりも大きな鼠を丸呑みにして、腹を膨らませた映像を見たことがある。

あれに俺がなるのかと想像しただけで、ぞっとした。


しかも、この蛇は、どうやってか物凄いスピードで空中を飛んでいるようで、俺は、上下左右に身体を揺さぶられ、正直吐きそうだ。

激しいジェットコースターに乗っている感覚に近い。


(まさか巣穴に連れて帰って、俺を食べるつもりか)


この蛇が一体どこへ向かっているのかは分からなかったが、今すぐ俺を食べる気はないらしい。

とにかく俺は、力の限り声を張り上げ、助けを求めた。

言葉が通じなかったことなどは、まるで忘れていた。

ただ、叫んでいなければ、気がどうにかなってしまっていただろう。

視界に入ってくる景色は、土と砂と草ばかりの地面と、文明など感じさせないような深い森だけだ。

そもそも人がいない環境なのか、俺の助けに答える声はなかった。


しばらくして、俺が叫び疲れて、もう声も出ないとなった頃、蛇は、急に動きを止めた。

空中で拘束を解かれた俺は、地面に顔面から落ちた。


「いってぇ~……何がどうなってるんだよ、一体……」


俺が痛む鼻を抑えながら蛇の方を振り返ると、

四つの蛇の頭が俺に向かって威嚇するように声をあげながら、口を開けた。

俺は、逃げようとしたが、腰が抜けて立つことが出来ない。


その時、蛇たちの後ろから巨大な白い獣が姿を現した。

よく見ると、四つの蛇の身体は、その巨大な白い獣のお尻に繋がっている。


(ひぇ~……蛇のしっぽを持つ獣って……キマイラかよ)


ゲームで得た知識から、すぐにキマイラを頭に思い浮かべたが、あれは確か胴体がライオンだった気がする。

今、俺の目の前にいる白い獣は、どう見てもライオンというよりも、白虎に近い。

胴体は、白に黒の縦縞模様が入り、顔も大きな虎のようだ。

ただ、首の周りから青い炎が燃えていて、それがライオンの鬣のように見えなくもない。

ゲームですら見たことのない生き物だ。


俺が茫然と獣を観察していると、白い獣が低く唸った。

今度は、この獣に食われるのかと思ったが、すぐに違うと解った。

白い獣の背中には、先程俺に助けを求めてきた、金髪の可愛い女の子が乗っていたからだ。

女の子の顔は赤く、ぐったりとした様子で目を瞑っている。


俺は、この獣が俺たちを助けてくれたのだと悟った。


「お、おい、君。大丈夫か?」


俺が声を掛けても、金髪の可愛い女の子は、ぴくりとも反応しない。

どうやら意識がないらしい。


「まいったな、一体どうしたら……」


周囲を見回すと、既に森は途切れ、すぐ近くに町らしきものが見える。

少し歩くことになるが、あそこまで行けば、きっと人がいて、誰かが助けてくれるだろう。


「よ、よし……あそこまで行って、病院を探そう」


立ち上がろうとした俺は、自分の腰が抜けていたことに気が付いた。

どうしたものかと思った俺の顔の前に、再び四つの蛇の頭が顔を出す。


蛇たちが〝またお前を掴んで運んでやろうか?〟と言っているように感じた俺は、慌てて首を横に振る。

あんな体験するのは、人生で一度きりでいい。むしろ一度だってしたくない。

俺は、なんとか自力で立ち上がろうと試みたが、生まれたての小鹿にすら負ける勢いだったので、結局、痺れを切らした蛇たちによって、再び身体を縛られ、町まで空中を散歩する羽目になった。


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