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神へ捧げるカントゥス★  作者: 茄子
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 なんだってのよ!

 何もかもうまくいかなくなってるわ。

 史様のイベントをあんなにこなしたのに、全然手ごたえがないし、最近ほとんど会えないじゃない。

 京一郎君以外の攻略対象もなんだか最近よそよそしいし…。

 もうマジ意味わかんない。

 バレンタインからは好感度イベント目白押しなのよ、こんなに束縛されたんじゃイベントをこなせないじゃない。

 そもそも京一郎君はこのままいけばノーマルエンドの庶民堕ちじゃない。そんなのこの私にふさわしくないわ。

 和臣君なんてバッドエンドの家からの追放と留学だし!

 まあいいわ。あんなバッドエンドになった男なんてどうでもいいのよ。

 問題は史様よ史様!

 キスイベントも、クリスマスイベントも、初詣イベントも、バレンタインイベントはちょっと失敗しちゃったけど、他のイベントはちょっと強引だけどこなしたわ。

 なのになんで私に声がかからないの?


 目についたバラの花束の花をむしってぐちゃぐちゃにする。


 和臣君にせっかく買っておいたのに、吉賀麗奈と京一郎君に邪魔されたわ。

 なによ!留学先までついていくなんて迷惑な女よね。和臣君ってばバッドエンド状況だし可哀そう。

 まあ、一番かわいそうなのは私だけど!


 佐藤妃花は自宅の自分の部屋のベッドにだらしなく横になる。

 部屋は全体的にはピンクとベージュで整えられた落ち着いた空間なのだが、棚や鏡台、勉強机の上などが乱雑になっており、部屋の中央のテーブルの上には飲みかけのコップと大き目のペットボトルが置いてある。

 床には脱いだ私服が丸められて隅のほうに置かれベッドはぐちゃぐちゃになっているし、その横には先ほどむしり取られた薔薇が落ちている。

 壁には佐藤妃花が攻略対象という男子生徒や悪役令嬢という女生徒の写真が張られ、品のない落書きがされている。写真はどれも隠し撮りのようだ。

 せっかくの落ち着いた空間を台無しにしている事に気が付かず、もしくは無視して佐藤妃花はスマートフォンを操作する。


「なーんで繋がんないのかな」


 ゲームの中で出ていた史の携帯番号。佐藤妃花はそれを覚えており間違い電話を装ってかけたのだが、次からは携帯電話を変えてしまったのか繋がらなくなってしまっている。


「妃花は史様のモノなのにー。妃花のファーストキス奪った責任取ってくれないと。それに史様にならそれ以上だってキャーー恥ずかしいー」


 ベッドの上でごろごろと佐藤妃花が動くたびに掛け布団がずれていく。


「でも史様ならきっと優しくリードしてくれてー、あまーーい時間になるんだわー」


 お子様の皆森彩愛には出来ないことよね。と佐藤妃花は醜い笑みを浮かべる。

 くふふ、と枕を引き寄せて顔を埋めてさらにベッドの上で暴れる。

 その動きに先ほどからずれていた掛け布団がついに床にずり落ちる。


「ぎゃっ」


 どすんと大きな音を立てて掛け布団につられるように佐藤妃花は床にたたきつけられる。


「ごほっいたっ…げほっいった…」


 変に息を吸ってしまったのか、咳き込んでしまいそのたびに胸に痛みを覚え佐藤妃花は顔を青ざめる。


「おかあさーん」


 情けない声で母親を呼べば、疲れた顔の母親が部屋のドアを開けて倒れたままの佐藤妃花を見て目を見開く。


「妃花!どうしたの!?」

「ベッドから落ちて、ケホッ…胸、痛い」

「大変!ろっ骨が折れてるのかも!」


 看護師として働いている妃花の母親はすぐに救急車を呼んだ。

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