表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神へ捧げるカントゥス★  作者: 茄子
5/109

004

 突然だけど私の話を聞いてくれるかな。

 私の名前は佐藤妃花。

 佐藤なんてどこにでもいる苗字は気に入らないけど、名前は気に入ってるの。私にぴったりのかわいい名前でしょ。

 自分で言うのもなんだけど、私はかわいい。

 ふんわりした茶髪に大きなたれ目、小柄なのに出るところは出てるいわゆる小動物系。

 それで、聞いてほしいっていうのはこの世界のこと。

 びっくりしないでね?この世界は『神へのカントゥス』っていう乙女ゲームの世界なの。

 あ、引かないでよ?私だってこの記憶を思い出したときはびっくりして倒れて熱出したんだから。

 でも私がヒロインだっていうのは素敵なことなのよ。だって私以上にあのゲームを愛してる人なんていないんだから。

 もちろん全ルートクリアしたし、一言一句セリフも覚えてる、イベントの発生条件も全部覚えてる。

 このゲームは生徒会ルートと風紀ルートがあって黒ルート白ルートって呼ばれてたわ。

 黒ルートのメインヒーローは篠上京一郎様。黒の貴公子なんて呼ばれてるのよ。

 白ルートのメインヒーローは磯部和臣君。白の騎士って呼ばれてたの。

 まあ、どっちのルートにはいっても全員攻略はできるんだけどね。

 でもこのゲームの一番のヒーローは水上史様。中等部のときに海外の姉妹校に留学して私の行動次第で戻ってくるの。

 でも出すのは大変だけど出たら攻略は簡単。だって彼のルートで出てくるライバルはただのガキだもん。

 確かに学園で史様に次ぐ権力を持ってるけどたかが小学生。ほかの男子のルートのライバル、例えば吉賀麗奈と違って実害はないわ。

 ああ、吉賀麗奈っていうのは京一郎様と和臣君ルートでのいわゆる悪役令嬢。京一郎様か和臣君の婚約者だけど私をいじめてどっちのルートでも婚約破棄するの。

 ほかにも攻略者にはそれぞれ婚約者がいるんだけど、結局婚約破棄するのよね。

 一番厄介なライバルが月影梨花。

 ほかの子と違っていじめをしてくるわけじゃないから面倒なのよ。成績とかで蹴落としてやらないといけないのよね。

 あれ?そういえば和臣君のそばによくいるのは麗奈だけど、婚約者はあのガキじゃなかったかしら?

 シナリオが狂っちゃうからやめてほしいわ。

 でもまあ、京一郎様の話だと婚約破棄が近いって話だから、これもシナリオ補正っていうやつかしらね。


 長々と話しちゃってごめんね。

 それで私の今の状況なんだけど、一年の最初のイベント、文芸会の発表が終わったところなの。

 このイベントはまあルートの確定イベントね。でも驚いたわ、京一郎様がもう婚約破棄してくれるなんて。

 本当なら1年の後半から2年の前半に起こるはずのイベントなの。

 でもいいわ。早くいじめがなくなったほうがいいもの。私の体に傷がついたら史様が悲しんじゃうわ。

 えっと、ああそうそう文芸会の話なんだけどね。私初めて皆森彩愛の顔を見たのよ。

 私の前の出番だったんだけど、なるほどライバルにふさわしいガキだわ。

 カラスの濡れ羽色っていうの?真っ黒な黒髪に陶磁器のような白い滑らかな肌、桜色の唇に睫毛に縁どられた黒い瞳。

 ええ、確かに彼女はライバルにふさわしい姿だわ。

 でもだからなに?所詮子供だもの。史様だって家のためにいたにいやいや婚約させられるんだわ。

 『神へのカントゥス』にはハーレムエンドだってあった。

 私ならできる。できるわ。

 多少のシナリオ違いがあるのは仕方がないわ。だってここは現実世界だもの。

 もうすぐだわ。史様が登場するもあと少しだもの。


 ねえ早く来て。私をお嫁さんにして、史様。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ