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神へ捧げるカントゥス★  作者: 茄子
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 おかしい…。

 今日はクリスマスパーティーなのに史様からのお誘いがない。


 妃花は篠上京一郎にプレゼントされたドレスや装飾品を着て、エスコートされてパーティー会場に入る。

 中央校舎の大講堂で行われるこのクリスマスパーティーはゲーム内では大切なイベント。

 このイベントの結果で冬休みの私のイベントが決まる。

 そして史様攻略にはこのイベントが欠かせない。

 準備イベントの打ち合わせでのキスイベントは起こした。なのにどうして史様は何も言ってこないの?

 和臣君の攻略もうまくいかない。吉賀麗奈が邪魔するせいだわ。


「妃花、大丈夫か?」

「えっと、こんな大きなパーティーだから、気をくれしちゃって。こんなんだから庶民はなんて言われちゃうのね」

「大丈夫だ。この会場にいるだよりも綺麗だ」

「ありがとう、京一郎君」


 会場に入ってしばらくすると私の虜になったみんなが集まってくる。

 婚約者がまだいる人もいるけど、それを放ってこっちに来てくれてる。

 みんなが私をほめる。誰よりもかわいいと、誰よりもきれいだと。

 そうでしょう?だって私はヒロインだもの!

 でも足りない。視線を会場内に巡らせれば、和臣君と吉賀麗奈が腕を組んでいる姿がある。

 その周囲には少なくない人がいる。まだ吉賀麗奈が学園全体から嫌われていない。

 いじめも口で言ってくるだけで、物理的ないじめをしてくるわけじゃない。

 なんでちゃんと役割を果たしてくれないわけ?

 役に立たないなら月影梨花みたいに序盤でいなくなるぐらいしなさいよ。


 妃花が篠上京一郎の腕にもたれかかりながらそう考えていると、会場の入り口から先ほどまでとは違うざわめきが広がってくる。

 視線とむけると、水上史と皆森彩愛が入ってくるところだった。

 一歩遅れてミカル・ユングリングとノーマンディーも入場してくる。

 艶やかな黒髪を今日は巻き髪にしており、ハーフアップしているところには薄水色のドロップをいくつも繋げた髪飾りがつけられており、動くたびに揺れて目を引く。

 だが、デザインこそ子供用になっているが、あのドレスはゲームの中で妃花に史がプレゼントするものだった。


 かっと顔が赤くなる。

 見るからに上質なものとわかるドレスと装飾品。

 子供だからか低めのヒールのだが靴はシャンパンゴールドのかわいらしいものだ。

 史様とお揃いのコサージュ、スーツの下のシャツの色はお揃い。

 70センチほどある身長差のせいで恋人には見えないけれども、とても親しい間柄だというのがわかる。


 妃花は彩愛と史しか目に入っていないが、ミカルも同じコサージュを付け、シャツは史と同じものだ。

 周囲は彩愛達3人に見惚れる。

 三人が進めば誰もが道を開ける。そして三人は壇上に上がり、よく通る声でパーティーの開会を宣言する。


 各所に椅子が用意され、そこをカーテンで目隠ししているとはいえ、基本的には立食形式のパーティーだ。

 自由参加とはいえ初等部から大学部までの多くの人が参加している。

 ここで普段は接触のない人との人脈を作る生徒もいるぐらいだ。


「ね、ねえ。水上様にご挨拶しなくていいの?」

「妃花は気が利くな。そうだな、ご挨拶に行こうか」


 京一郎君は私の腕を解いて今度は腰に手をまわしてくる。

 ゲームじゃわからなかったけど、結構独占欲が強いみたい。

 私の虜になった男の子たちの視線がいたい。

 でも仕方ないわよね。史様の次に権力があるのが京一郎君なんだもの。


 史様への挨拶は順番待ちのようで、私たちは近くで話しをしながら順番を待つ。

 20分ほど待たされてやっと史様に挨拶できるようになって、京一郎君に腰を抱かれながら史様の前に行く。


「水上様、こんばんわ」

「こんばんわ」

「今日は素敵なクリスマスパーティーですね」

「ああ、是非楽しんでくれ」

「もちろんです!それでこの後良ければ一緒にダンスを」

「妃花、俺たちにも挨拶をさせてくれないか?」

「あっごめんね。そうよね」


 もうちょっとのところで京一郎君が声を挟んでくる。タイミングの悪い。

 京一郎君達と史様達の定型文みたいな挨拶を退屈な思いで聞いていると、ふと水森彩愛と目が合った。


「そのドレス、G・Aのものでしょうか?」

「し、知らないわ。京一郎君から貰ったから」

「そうですの」

「貴女のドレスはどこのブランドなの?」

「G・Aですわ」

「そう」


 皆森彩愛がそのあともいくつか話しかけてきたが、私にはまったくわからなかった。

 ただ、これだけはわかる。このガキは私を貶めようとしてる。

 そっちがその気なら、こっちだってやってやるわよ。

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