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神へ捧げるカントゥス★  作者: 茄子
32/109

031 12月

「皆森様、お気になさってた件調査させていただきましたわ」

「まあ永楽様、わざわざありがとうございますわ」

「いんですのよ。皆森様の御心が晴れるお手伝いでしたらいつでも喜んでさせていただきますわ」


 初等部5年生の永楽園子様が、笑みを浮かべて封筒をテーブルの上に置く。

 封筒を受け取って開封してみれば、見た目からわかっていたが100枚を超える資料が入っている。


「かいつまんで説明させていただいてよろしいでしょうか」

「ええ、お願いいたしますわ」

「まず、旧生徒会の方々と佐藤妃花様につきましては聞き込みでしかありませんが、入学式から一か月の間に急速に親密になったということですわ。各所で二人きりで親しくしている姿の目撃証言もあります」

「どのような手法を取ったのかはおわかりですの?」


 乃衣様が首をかしげる。高等部にいるお姉様から話しは聞いているようだが、流石にその手法まではわかっていないらしい。


「資料にあるのですが、なんでも心の闇を解消してあげたとか」

「心の闇ですの?」

「ええ、おそらく個人的な悩みだとは思うのですが…」

「まあ、悩みを解決するのに一役かったのであれば、心を惹かれてもしかたないもの…なのかな」


 勇人様が首を傾げる。


「それで、旧風紀委員の方々ですが賀口様は旧生徒会の方と同様の方法で、他の方は搦め手を使ったようですわ」

「搦め手と申しますと?」

「その、言いにくいのですが…」


 永楽様が言いにくそうに彩愛を見る。

 彩愛はきょとんとした後に続けるように視線を向ける。


「9月と10月の、その…皆森様の御手を煩わせてしまった件で、各家の業績が落ちておりまして」

「あら」

「佐藤様のお父様は篠上様の会社にヘッドハンティングされているようですわ」

「そうですのよね」

「随分な好待遇らしいですわ」

「そうなのですか」

「それで、生徒会のメンバーのお家からの支援を仄めかしたり、実際に篠上家が風紀委員会の方々のお家の株を購入したりしているようです」


 業績が落ち込んでいるところに株の買い付けがあったのでは、確かに家のことを考えれば佐藤妃花に従順にならざる得ないのかもしれない。


「磯部様に関しては、皆森様との婚約破棄後から業績不振ですが、吉賀様のお家との事業提携などでなんとか体裁を保っていたのですが、やはりここのところ業績の落ち込みが止められないようですわ」

「まあ…」


 この業績の落ち込みには、彩愛の父親が動いたせいではあるのだが、あの時父に任せるとうなずいてしまったのは彩愛なので苦笑するしかない。


「それでも、他の風紀委員の方々と違って吉賀様との婚約がありますので、佐藤様の誘惑や囲い込みをギリギリのところで耐えているようです」

「彩愛様をないがしろにしてまで結んだ婚約ですものね」

「そのぐらい耐えてもらわないとな」

「でも佐藤様、随分と姑息な手を使ってますのね」

「流石に吉賀様がお気の毒ですわね」

「篠上様が随分と甘やかしているせいではありませんの?」

「すでに篠上家にあいさつに行っているとの話も聞きますけども」

「ええ、佐藤様は篠上様のご両親と会食をされたこともあるようですわ」

「流石にお付き合いは認められていないのでしょう?」

「そのようです」


 だが、跡取り息子の想い人であるというのは知っているようで、就職した佐藤様の父親にも何かと便宜を図っているらしい。

 それに篠上様自体が、佐藤様のお願いを率先して叶えようとしているらしい。


「篠上様のご両親はご子息を溺愛していると有名ですものね」

「でもいくらご子息の想い人でも庶民を婚約者とはお認めにならないのではなくて?」

「おまけにその女性に複数の男の影がいるとしたらなおさらだと思うけど」

「ええ、特に母親が婚約には反対しているようですわ」

「高等部のお姉様方は最近吉賀様に同情しているそうですわ」

「吉賀家の業績不振が随分と悪化しているのでしたっけ」

「そうですね。佐藤様の取り巻きになった方々のお家が取引を止めたりと、ご苦労されているようです」

「なるほど」


 ここのところ、史お兄様に随分と声をかけたり、史お兄様を挟んで佐藤様と言い合いをしているとの報告が多かったのだが、そういう事情だったのかと納得する。

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