025
ありえない。なんだってこんなことになったの?
暁と黄昏の女神の勧めで『王花神嘗祭』で私は史様の代わりに祝詞を読む。そこで豊穣の神に気に入られて、私は豊穣の神の加護を持つ少女として攻略対象の家の両親に認められるはずだった。
なのにどうしてこんなことに…。
あの日、『王花神嘗祭』に参加したいと京一郎君におねだりしてたら、あの女…吉賀麗奈が反対してきたのよ。
本当なら史様が帰国するのは2年。ゲームではイベントの都合でそれ以上縮められなかったけど、現実では1年で帰国フラグを立てることが出来た。
でも確かにあせっちゃってたかもしれない。ここで全員の好感度を上げておかないと、好感度の低い攻略対象に反対されるんだってこと忘れてたわ。
でも多数決で多ければ私は参加できるはずだった。
なのに…吉賀麗奈以外の女も、風紀の男どもも反対して。何よりも史様とミカル様が反対したせいで参加できなかった。
そもそもミカル様はゲームに出てこなかったじゃない。
私は本編もファンディスクもファンブックも全部網羅してるのよ!
あんなキャラいなかった!しかも本国に婚約者がいるから、それ以外の女を近寄らせたくないとかいって!
なんなのなんだっていうの!
いえ、そんなのどうでもいいわ。
確かに理想の王子様で史様と仲がいいのかもしれないけど、ゲームに登場しないんだから所詮モブよ。
それよりも!あの日から食事ができない。
食べてもすぐ吐いてしまう。
私だけじゃない。生徒会のみんなも同じ状態。
悟志君の家が病院で、栄養剤の点滴を受けて何とかなってる。
こんなの絶対におかしいわ。
あの子のせいよ。あの子、皆森彩愛。
『王花神嘗祭』の途中で倒れて翌日から休んでて。
参加した女子が言ってたわ。神降ろしをした、神の怒りが参加しなかった生徒に向けられたって。
あの子のせいよ。
史様の攻略がうまくいかないのだってあの子のせい!
婚約者でもないくせに一緒に食事して、私の場所を奪って!
あの子が悪いのよ。あの子が私を呪ってるんだわ。
神様にお願いして私を呪ってるんだわ。
史様がきっと好きで私にとられたくないんだわ。
あの子がいなくなれば、史様は私の物なのに。
「妃花、体調はどうだ?」
「悟志君。大丈夫、だよ」
考えてる間に点滴が終わったらしい。
出来るだけ儚げな笑みを浮かべて、力なく頷。
悟志君だけでなく、生徒会のみんなも痛ましいものを見るかのように私を見てくる。
そうよ。これが正しい在り方なのよ。
「私が、馬鹿なこと言わなかったら、神様にも、皆森ちゃんにも、こんな…」
こらえきれないという風に口を手で覆って下を向く。
「違う!神事に興味があるのはいいことだ!」
「そうだよ。そもそも制限するのがおかしかったんだ」
「妃花は悪くない。大丈夫だ」
「神に誤解だとわかってもらえるように、祈りを捧げよう」
「皆森彩愛が倒れてるのはきっと神罰だ」
皆の慰めの言葉を聞いて少しすっきりする。
そうよね、あのガキが倒れてるのはこのヒロインである私を呪った神罰なんだわ。
「うん。でも、皆森ちゃんも早くよくなるといいね」
私は怒ってない優しい子ってアピールで好感度上げておかないとね。
こんなイベントないから好感度の管理がしにくいじゃないの!
どこまでいっても本当に邪魔なガキね!




