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神へ捧げるカントゥス★  作者: 茄子
102/109

前日談 005 篠上京一郎

 俺の最初の記憶は産まれる前。簡単に言えば前世の記憶。

 『神に捧げるカントゥス』のR18男版をプレイしていた記憶。

 選べるキャラクターの多さとヒロインたちの美しさ、かわいらしさ、気高さに人気が出た。

 人生勝ち組からのスタート、既定路線を進めるノーマルエンド。

 勝ち組人生から始まって、真実の愛を見つけ貫く修羅道エンドとメリーバッドエンド。

 一般生徒から始まって自分を磨きつつ、女を落とすハッピーエンドとバッドエンド。

 多くの男性はプレイし、中には女性もプレイしていたという。


 一番人気は月影梨花。大和撫子を体現したかのような彼女はゲーム開始時に婚約者がいる。だから最初はその婚約者をどうにかしなければいけない。

 でも俺の興味は彼女じゃない。

 二番人気は吉賀麗奈。ツンデレで頑張り屋だけどから回って自室で一人後悔するというキャラ。

 彼女は俺が婚約者で、不貞の相手として磯部和臣がいる。

 三番人気は紫呉美衣。梨花の補佐をしていることが多く有能な秘書と言った感じのヒロイン。

 シスコン気味でロリプレイヤーは妹とのダブル攻略に燃えてたりした。


 ほかにも大学部に1人、高等部に3人、中等部に2人、初等部に3人ヒロインがいる。


 裏一番人気なのは水上彩愛。開始当初7歳になったばかりなのに、純真無垢の色気があり身に纏う神気に自然と敬服してしまう。

 学園の女王とも聖女ともいわれる彩愛は開始当初は飯近と婚約しており、二年目になると水上と婚約をする。

 親戚のミカルも守りに入るため攻略が難しいヒロイン。

 しかも攻略してもお楽しみのR18展開はない。だが、だからこそエロティックでいいという人は多かった。


 だけど、俺が一番気に入っていたのは庶民の女の子、佐藤妃花。女版のヒロインというだけあって彼女はもてる。


「でも、その運命の人が現れるのは高等部なんだろう?京一郎には吉賀麗奈がいるじゃないか。長く婚約していた女を捨てるとなれば、大ダメージを負うぞ」

「ああ大丈夫。麗奈は庶民のヒロインが高位の男子を侍らせて堕落させることを許せないときつく当たる」

「だから?」

「誇張させて脚色して噂を広めればどうなるんだろうな」

「…おい」

「ああ早く高等部に進学できないかな。会いたいな妃花」

「まあ、9年は待つよな」

「長いな」


 まだ見ぬ俺の運命の女に、うっとりと空を見上げた。



***********************************************



 高等部の入学式。本当は参加しなくてもいいが生徒会ということで参加権をもぎ取った。

 中央校舎の入り口から外を見れば、ずっと夢に見ていた少女が走ってくる。


「きゃぁ」


 足を取られたのか転びかける寸前に腕を回し、腕の中に抱き込む。

 本当なら転んだところを起こすイベント。でも君にけががあったら困るからね。


「大丈夫?」

「え、あうそぉ。大丈夫です、ありがとうございます」

「新入生だよね、もう会場に向かわないと間に合わないよ」

「え、えっとちょっとおトイレに行きたくて」

「案内しようか?」

「大丈夫です場所はわかってますから」

「そう?ああ俺は篠上恭一、生徒会の副会長をしてるよ」

「え、生徒会長じゃなくて?」

「そうだけど、どうして?」

「あは、なんでもないです。じゃあ失礼しまーす」


 そう言って歩いていく妃花をスマフォでこっそりとる。

 こっそり後ろをついていけば、初めてのはずの校舎の中を迷いなく進み、人気のない女子トイレに入る。


「なんで生徒会長じゃないわけ?イベント起こしにくいじゃない。まあいいわ、そこのところは何とかなるだろうし。ふふふやっとこの日が来たわ。あと少しで史様に会えるわ」


 聞こえてくる言葉に彼女も前世の記憶があるのだとわかる。ただ、そのあとに出たものは知らないらしい。

 この世界はベーシックと言われるものの世界じゃない。R18に対応した男版の世界。

 さあ、急いで彼女を手に入れる計画を考えなければ。水上様狙いのようだし、俺としては皆森様の逆鱗に触れてバッドエンドだけは避けてほしい。

 醜くなっても愛せる自信はあるけど、流石に生きていないものを愛する自信はない。


 まずは彼女の好きな高級フルーツジュースにチョコでも持っていこう。



***********************************************



 順調だ。水上様が2年ではなく1年次に帰国したのには焦ったが、皆森様を構っているから大丈夫だろう。

 それに妃花には新しい下僕を作っておいた。

 取り巻き以外には軽蔑した目で見られて孤独になっていけばいい。

 いざとなって頼るものが俺以外の誰もいなくなるように、計画を練って実行していかなければいけない。






 ねえ妃花。前世の記憶もちが自分だけなんて思ってないだろう?

 君が前世の記憶を利用するように、俺も前世の記憶を利用したって、なにもおかしくはないだろう?

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