後日談から始まって ―1
その日の昼食は、中庭にある東屋で食べることにした。
別に昼食は絶対に食堂で食べなければならないという規則があるわけでなし。
天気も良く、気温も穏やかな日は外で開放的な気分を味わいながら食べたいと思う生徒も多い。
それを見越してか、学院の食堂には外で食べられるお弁当風にしたメニューも存在している。
しかし、かといって外で食べたい生徒がそこまで多いというわけでもない。
広大な学院の敷地内、場所によってはほとんど人がいない。多いところでも、人が密になるほど賑わっているということもない。
食堂での喧噪から離れてのんびりと食べられるという部分も、外で食べることの利点の一つだった。
今回選んだ中庭だってそう。
手入れされた花々に囲まれて華やかな景観を見せてはいるが、ここで昼食を食べようとする人間は意外なほど多くはない。
だから、たとえ学院の有名人がここでひっそりと食事をしていても、物珍しい目で見られこそすれ大した騒ぎになることはない。
そう、それがたとえ凛々しくも麗しい、紫色の長髪を靡かせる学院の女王――カトレア・ヴィオレッタ・フォンテーヌ・ド・ラ・オルキデ嬢であっても。
そして、だからこそ密談にもうってつけというわけだ。
密談。大げさにすぎる表現かもしれないが、関係ない人間に聞かれたい話でも決してないので、まあそういう扱いでいいだろう。
誰かの恋が上手くいかなかったという報告だなんて。