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このゲームを百合ゲーとするっ!  作者: 一山幾羅
第一対決
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菫色アプローチ大作戦 ―7

「というわけで、今回作戦に協力してくれるヒース・ライラック君です!」


 人気(ひとけ)のない裏庭にて、「じゃじゃーん」という感じでサレナがカトレアさまへそう紹介する。

 しかし、今回半ば無理矢理巻き込まれる形で連れてこられたそのヒースはあからさまに不満たらたらという様子であった。

 だが、一応先輩にあたる上級生との初対面ということで、真面目な顔つきになって軽く頭を下げる。


「ヒース・ライラック……っス。一応、そこの馬鹿と馬鹿に強引に友達をやらされてます……」


 ヒースはサレナとアネモネを順番に指さしながら、そうひねくれた自己紹介をした。

 突然凶悪な目つきをしたド不良といった外見の男子生徒と引き合わされたカトレアさまは、一瞬呆気に取られたような顔つきをした後で、


「あなた達、また他の人を――」


 自分の知らないところでまた協力者が増えていたことに対して流石に怒ろうとしたところを、サレナとアネモネが慌てて駆け寄ってなだめる。


「やっぱり女の子だけじゃなくて男の子の目線も必要、必要ですから!」

「異性としての立場からの意見も取り入れてこそより成功に近づけるのですわ!」


 二人が必死でそう説得すると、渋々ながらカトレアさまも納得してくれたらしい。

 軽く嘆息した後で改めてヒースへ向き直ると、苦笑しながら自己紹介をする。


「カトレア・ヴィオレッタ・フォンテーヌ・ド・ラ・オルキデよ。カトレアでいいわ。よろしくね、ヒースくん。そして、ごめんなさい、こんなことに付き合わせてしまって――」

「あ、いえ……」


 カトレアさまの多少の自虐も籠めてのその発言に対して、ヒースは頭をかきながら言葉を濁した。よっぽどそれに同意したい気持ちがありつつも、流石に失礼すぎると判断したかのような様子だった。

 まあ、失礼なことを口走ったらどうされるかわからない、刺すような視線を二つほど感じていたせいであったのかもしれないが――。


「それじゃあ、打ち合わせを始めましょう!」


 とにもかくにも、これで今回の役者は揃った。

 サレナはそう声を張り上げると、作戦の詳細を説明していく。



 といっても、作戦の内容自体は非常にシンプルなものであった。

 まずアネモネが使い魔を放ってアドニスを裏庭へと呼び出す。

 ここら辺は流石に従兄妹同士の気安さ、突然呼び出したところでさして相手が不自然さを感じることはないだろう。

 そして、アドニスが呼び出しに応じて裏庭に来たところで、そこでヒースに絡まれているカトレアさまという光景に出くわすようにする。

 ヒースの外見はド不良もいいところだし、相手を柄悪く脅しつけるのも堂に入ったものである。まず間違いなくアドニスもカトレアさまがよろしくない輩に絡まれているらしいと判断するだろう。カトレアさまの方も頑張って脅される演技をしてみせると気合いも十分であることだし。

 あとは正義感の強いあの王子様のことだ、それだけで颯爽とその場に割って入り、ヒースを追い払い、カトレアさまを救い出してくれることだろう。

 そうして二人はゲームのイベントのようにいいムードになるし、アドニスは助けたカトレアさまを自分の好みである"守りたいタイプ"と思うようになるであろう。

 これにて作戦成功。めでたしめでたし、と……。


 そう説明すると、カトレアさまはなるほどと感心したように頷いた後で、ふと何か引っかかることがあることに気づいたらしく、その疑問を口にした。


「ヒースくんに私を脅かすふりをさせて、アドニスにそこを助けてもらう……それはわかったけども、その後でヒースくんはどうなるの?」


 そう言いながら、カトレアさまはどんどん不安そうというか、心配するような声色になっていく。


「私は、これでも一応生徒会の副会長よ? それに喧嘩を売るような真似をして、さらにそこを生徒会長であるアドニスに目撃されてしまうなんて、もしもその噂が広まったら、ヒースくんの学院内での評判が非常に悪いものになってしまう気がするのだけど……。そうでなくとも、そんなことをするようなヒースくんへの、生徒会長であるアドニスからの印象が良くないものになることは間違いないわ。それは流石に、これからこの学院で過ごしづらいことになってしまうのじゃないかしら……?」


 それはカトレアさまの心優しさを表しつつも、言われてみればもっともな疑問であった。

 ゲームにおいてはアドニスに追い払われた不良達のその後など描かれてはいなかったが、恐らくろくなことにはなっていないだろう。

 その辺のこともあるからこそ、学院内での立場が弱かった主人公(サレナ)にならともかく、権力者とも言えるカトレアさまに絡みにいけるような不良(じんざい)が見つけられそうにないという問題にもなっていたのだ。

 だが――。


「その辺のことは心配ありません! 何故なら、このヒースは見ての通りのバッドボーイとして学年の中でもツッパって孤立してますから! 今更下がる評判なんてないんです! だから安心して泥をかぶってもらいましょう!」

「そうなのですわ! ヒースさんはもはや学年どころかこの学院屈指のアウトロー! 今更悪評の一つや二つでどうにかなるようなヤワな人ではござらないのです! お姉様も遠慮なく協力してもらいましょう!」

「お前らマジでどつくぞ」


 サレナとアネモネはヒースの背中をバンバンと叩きながら、カトレアさまを安心させるように、そして何故か自慢げにそう言った。そうされるヒースは額にピクピクと青筋を立てて怒りのあまり震えていたが。

 そんな三人の様子を見ながら「仲がいいのね……」と感心したように、あるいは呆れたようにそう言った後で、カトレアさまも一応それに納得してくれたらしい。


「……それじゃあ、申し訳ないけれど、お願い出来るかしら? ヒースくん」

「あっ……了解っス。……まあ、別に、コイツらの言ってることも全部間違いってわけじゃないですし……そこら辺は、マジで気にしないでもらってもいいっスから……」


 まだ心苦しさの抜けきらない微笑みを向けながらそう言ってくるカトレアさまに毒気と怒りを抜かれてしまったのか、なんだか戸惑った様子でそう返答するヒース。

 そんな、まったく自分達に対するものとは正反対に妙にかしこまった態度のヒースをサレナとアネモネは半目でジトッと睨みつつも――。


「それじゃあ、そろそろ作戦決行といきましょうか」


 サレナがそう号令をかけて、各々の準備を始めていくことにした。

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