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このゲームを百合ゲーとするっ!  作者: 一山幾羅
第一対決
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菫色アプローチ大作戦 ―1

 その翌日から、サレナ命名の『射止めよ王子、結べよカップル! 菫色アプローチ大作戦!』は開始されることとなった。

 かなりどうかと思うネーミングセンスであるが、本人達は至って真剣、大真面目であるし、その計画の中身も同じくそうである。


 ということで、まずサレナはカトレアさまと今回の計画の協力者を引き合わせることにした。


「あ、アネモネちゃん……!? あなたも協力してくれるの……!?」


 その協力者の姿を見て、カトレアさまは驚きに目を丸くしながらそう言った。


 そして、サレナはその呼び方に少しぴくりと反応してしまう。

 アネモネちゃん。以前食堂で二人が出会った時は「アネモネさん」だった気がするのだが、今は「ちゃん」付け。

 どうも、あまりにも意外な人物が登場してきたことで、カトレアさまは思わず昔から慣れ親しんだ呼び方をしてしまったらしい。

 くそう、実は「ちゃん」付けで呼ばれていただなんて、中々羨ましいじゃないか、アネモネめ。どこまでもサレナ(わたし)の心を意外なとこで揺さぶってくれる。


「もちろんですわ! 不肖の身ではございますが、このアネモネ、お姉様の恋の成就に全身全霊でお力添えをさせていただく所存です!」


 アネモネは薄桃のツインテールを揺らしながら、綺麗な一礼と共にそう宣言する。

 それを少しばかり動揺されている様子で受け取った後、カトレアさまはサレナに向かって咎めるような視線と声を向けてきた。


「ちょっと、サレナさん。あなた、アネモネちゃんにまで私の恋心をベラベラと言い触らしたの?」


 その非難を受けて、サレナは一瞬気まずそうに言葉を詰まらせつつ、それからやや弁解じみた説明を試みる。


「きょ、協力者は多い方がいいかと思いまして……作戦として取れる行動にも幅が出ますし……それに、私も信頼出来る友人にしか明かしていませんから……」


 じとっとした目で睨んでくるカトレアさまに、サレナはしどろもどろでそう答える。

 すると、そこへ突然、助け船を出すかのようにアネモネが割り込んできた。


「あまりサレナさんを責めないであげてくださいませ、お姉様! それに、元々何も言われずとも、アネモネはアドニスお兄様とカトレアお姉様には将来的に結ばれていただくつもりだったのですから!」


 二人が「いきなり何を言い出すんだこいつ」という驚愕の視線を向ける中、アネモネはえっへんとばかりに胸を張って言い放つ。


「何故ならば、そうすれば名実共にカトレアお姉様は我がラナンキュラス一族の仲間入り! 私と正式な親戚関係で結ばれた本当のお姉様になるのですから! それを長年夢見てきた私には、今回のことはまさに渡りに船という出来事なのですわ~!」


 あまりの衝撃発言にカトレアさまは何も言えずに呆気に取られた様子でアネモネを見やるばかりで、一方サレナは「そういえばこいつはこういうヤツだったわ」ということを思い出し、額を押さえて溜息を吐く。


「……そ、そう。アネモネちゃんの重すぎる期待はともかくとして、そういうことなら心強い味方…………心強いのかしら……? ……まあ、そういうことにしておきましょうか……」


 カトレアさまは頭痛でもしてきたのか、やや苦悶の色が浮かんだ表情で眉間を指で押さえながら、自分自身を納得させるようにそう言った。

 自分の知らないところで他の人まで巻き込んでいたサレナに対する非難は、どうにかそれでうやむやになったらしい。サレナは少しばかりホッとしつつ、心の中でアネモネに感謝する。


「それにしても、二人がそんなに仲が良かったなんて知らなかったわ。何だか意外な組み合わせね」


 それから小さく頭を振って気を取り直すと、カトレアさまは今さらその違和感に気づいたようにそう言った。

 確かに、言われてみればカトレアさまにとっての二人の関係の印象は食堂で口喧嘩をして騒動になっていたところで止まっているのだから、その反応も当然かもしれない。


「まあ、あれから色々ありまして……」


 どう説明したものか。一瞬考えてみるも、なんだか面倒臭くなって曖昧な返事をするサレナ。


「そうなのです! 今の私とサレナさんは"心の友"と書いて"心友"なのですわ!」


 そんなサレナとの友情をアピールするように、満面の笑顔で突然ガシッと肩を組んでくるアネモネ。

 暑苦しいなオイ。サレナはそう思いながらも、結局それで強引に押し通していくことにして自分も肩を組み、とりあえず笑ってみせる。


「そ、そうなの……まあ、仲が良くて悪いことはないものね。少なくとも、また喧嘩騒ぎになったりしないのであれば、私としても嬉しい限りだわ」


 悪戯っぽく微笑んで、蒸し返すようにそう言ってきたカトレアさまに、二人は仲良く揃って気まずい表情になると、頬を染めて縮こまってしまうばかりであった。


「あら、ちょっと意地悪しすぎちゃったかしら? ごめんなさいね」


 そんな二人の様子に苦笑しつつ、カトレアさまは場を仕切り直すように咳払いを一つすると、サレナへ向かって問いかける。


「――それで、アネモネちゃんも巻き込んで、これから具体的にはどうするつもりなのかしら?」


 その問いかけに、サレナはニヤリと微笑みながら、"よくぞ聞いてくれました"とばかりにその説明を開始する。


「そうですね、まずは――」

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