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このゲームを百合ゲーとするっ!  作者: 一山幾羅
第一対決
47/149

恋するあなたに恋してる ―2

 まずは、この世界のカトレアさまが本当にアドニスへの恋心を抱いているのかどうかを確認する。


 そう決めたのはいいが、そのためにはまずカトレアさまとお近づきになる必要があった。

 少なくとも気軽に日常会話を交わせるような、それなりに親しい間柄にならねば、ただでさえ秘めたるその恋心の存在を探るようなことは出来ないだろう。

 そもそも、カトレアさまと親しくなるのは"最終的に結ばれる"という目的のための最低限の前段階でもある。


 しかし、カトレアさまは三年生で、サレナは一年生。学ぶ教室も違えば寮の部屋も違う、普通であれば接点など発生しないはずの距離感だった。


 にも関わらず、サレナはそこら辺の心配をまるでしていなかった。

 何故ならば、ゲームでもその条件は変わらないはずなのに、実際サレナとカトレアさまはライバル同士として深く関わり合いになっていく。

 そして、ゲームでそうなっていることが、この世界でもそうならないはずがない。


 果たして、サレナの推測は正しかった。

 まったくゲームの方と同じ展開で、サレナとカトレアさまの接点は形成されることになったのだった。


 その接点とは『学院生徒会』。

 三年生の成績トップであるアドニスが会長を務め、同じく成績二位と三位のカトレアさまとロッサが副会長を務めている魔術学院内の生徒会である。

 そこに一年生のサレナが書記として新たに加わることで、この三人とサレナの接点が生まれるというのがナイウィチ本編における展開であった。

 そして、この世界においてもサレナはそれと全く同じ流れで三人との接点を持つことにしたのであった。

 ただし、今回のサレナの生徒会への加入の流れは、少しばかりゲームとは違うものになってしまったが。


 まず、この魔術学院の生徒会のシステムはちょっと特殊なものになっていて、役員は立候補と選挙によって選ばれるわけではない。

 生徒会長と副会長には三年生から成績トップの三人が自動的に選ばれて、成績一位が生徒会長、二位と三位がそれぞれ副会長として、その役職を任じられるものとなっている。

 もちろんそれを拒否することも出来るが、ほぼ全ての人間がそうすることはない。

 この学院において生徒会役員に任じられるということは即ちその人間の魔術士としての優秀さを表すものであり、まさしく名誉であると考えられているからだった。

 そして、優秀であるからこそ大変な仕事を任せられるし、学院の全生徒を代表する権力を預けられるというわけである。

 ある意味で理に適っているといえば適っているシステムであった。

 また、生徒会の役職は会長とそれをサポートする二人の副会長、そこに会計と書記を加えた五人体制となっている。

 そして、その会計と書記は、それぞれ二年生と一年生の成績トップの人間が選ばれるというわけだった。


 だが、ゲーム本編においてサレナが一年生から書記として選ばれて生徒会に加わるのは、本来のそれより少々特殊な経緯となっている。

 サレナの"無属性の魔力"は入学当初は未だ詳細不明の未知のものとして学院上層部から警戒されていた。そして、万一制御不能な状態に陥った場合に備えて、学院の実力者が揃った生徒会に入れておくことで普段から監視と対処にあたらせようという思惑からの、特別待遇による選出だったのだ。

 それ故に最初はカトレアさまからの印象もあまり良くないし、本来入試成績トップの自分が入るはずだった席を横取りされる形となったアネモネからの深い恨みを買うことにも繋がっていたりする。


 だが、今のサレナはそんなゲームでの場合と違って、正式に入学試験で首位を獲得した上で生徒会書記として選出され、任じられた立場となっている。

 ゲームでのサレナは相次ぐ特別扱いに気まずさを感じておどおどと小さくなるばかりであったが、今のサレナは誰に文句をつけられることもない、全く正しい手順による生徒会加入である。

 故に堂々としていられたし、自信満々で生徒会室の門を叩いたのであった。

 これならばアネモネとの関係が拗れることもないし、カトレアさまからの印象も良いものとなるはずだった。


 後はそうして生徒会書記としての仕事をこなしながら、同じ生徒会の優秀な後輩としてカトレアさまとの仲を深めていく。そして、タイミングを見計らってその恋心について探りを入れていけばいい。

 アドニスとロッサという攻略対象の二人との接点も生まれてしまうというデメリットもあるにはあったが、そこは自分が気をつけて攻略ルートを進行させないように行動していけばいいだけである。

 まさに完璧。

 差し当たっての目的であるカトレアさまの恋心の存在を確認することと、同時にカトレアさまとの仲を深めるという恒久的な目的の進行を両立させられる、一石二鳥、完璧な展開であった。

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