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このゲームを百合ゲーとするっ!  作者: 一山幾羅
第一対決
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第一対決  VS 恋心 ―6

 魔術学院は、別名で『庭園(ガーデン)』とも呼ばれている。

 それは、古来より魔術士のことを(フロース)と呼び表わしていたことの名残であるらしい。

 魔術士が何故フロースと呼ばれていたのか、それについては諸説入り乱れており、真実の理由を今において知ることは難しい。

 しかし、理由はなんであれ自らを花と例えられること自体はサレナも悪い気がしない。

 それに、そんな魔術士(フロース)を育てる学院が庭園と呼ばれていることで、嬉しいことがもう一つある。

 その名にちなんでなのかは知らないが、学院内にはやたらと花壇や温室、樹木や草花の生い茂る庭園が多く存在している。

 それらは毎日庭師によって丁寧に整備されており、季節に応じた美しい花達が学院中で常に咲き乱れることで、その景観を華やかに彩っている。

 花に囲まれる生活というのはいい、とても良い。心がウキウキして明るくなる。


 そして、サレナの今いる裏庭も、そんな学院内に彩りを与えている場所の一つだった。

 季節は春。多くの花にとって一年でもっともその美しさを輝かせる時期だったが、その中でも極めつけはやはり薄桃色の花に彩られるこの木だろう。

 『桜』――。"日本とは違う"どころか完全なる異世界となるこの場所にどうして桜が咲いているのかは不思議だったが、裏庭にただ一本だけ立ってその見慣れた花を咲かせる姿を見ていると、妙に心が落ち着くものがあった。


 そんな風に、サレナがしばらくその木の真下に立って花を見上げていると、ようやく待ち人が現れてくれた。

 この木を彩る花に近い色の、くせっ毛ツインテール。


「遅かったわね」


 サレナはそう声をかけるが、別にそれは本気で相手を非難しているわけではなかった。

 むしろ呼び出しに応じてくれるか若干不安だったのだが、こうして律儀に一人で訪れてくれたことにちょっと感謝してすらいる。

 向こうも昼間の一件について、少しばかりこちらに借りを作ったとでも思っていたりするのだろうか。


「…………」


 無言のまま、その気の強そうなツリ目を細めてこちらを睨んでくるその人物。


 『アネモネ・ラナンキュラス・バートリー』こそが、サレナの待ち人であった。

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