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このゲームを百合ゲーとするっ!  作者: 一山幾羅
第二対決
114/149

愛のために剣を持て ―1

 とはいえ、それから一週間程度は特に何が起こるわけでもなく、代わり映えのない日々が穏やかに過ぎていった。


 あんな衝撃的なことがあっただけに一年生は三人とも(特に胸騒ぎの消えないサレナは更に輪をかけて)何かを警戒し、身構えて過ごしていたのだが、若干肩透かしをくらったような気分になった。

 けれどまあ、何も起こらないのであればそれに越したことはない。


 それに、この一週間で三人が中庭でカトレアさまと昼食を取るのもすっかりお馴染みの景色となっていた。

 カトレアさま自身も傍目には何もお変わりないご様子であった。

 婚約者とあんな再会を果たしたというのに、特に何を気にしておられるようでもない。

 いつも通りに気高く、凛々しく、美しいカトレアさまのままで生徒会の仕事をこなしておられた。昼食を食べる時も朗らかで楽しそうにしていた。


 ということは、サレナの読み通りに、カトレアさまにとってグラディオとの婚約は特に何とも思っていないような感心の薄い事柄なのか、あるいは前向きに受け止めているものなのかもしれない。

 少なくともこの平静ぶりは、それに関して否定的な何かを抱いているわけではなさそうだが……。

 サレナはそう思いつつも、何となく心をざわつかせながらそんなカトレアさまの様子を見守る日々だった。


 そして、グラディオの方にも特に大きな動きは見られなかった。

 あの日の宣言通り、大人しく慎ましやかに学院生活を送っているらしい。

 『黒の皇帝』が帰ってきたという情報は、あの日から瞬く間に学院中に広がり、しばらく学院生を騒然とさせていた。

 しかし、そうして皇帝が大人しく生活している様子が知れ渡ると共に、騒ぎも自然と静まっていった。

 触らぬ神に祟りなし。向こうが大人しくしてくれている分には、皆下手に騒ぎ立てずにそっと距離を置くことにしたらしい。

 サレナ達がそうしようと決めたのと同じく、まさしく正解の対応だろう。


 というわけで、今のところはそうして何事もなく穏やかな日常が続いていた。


 サレナも思わず一時はあの日感じた胸騒ぎも忘れて、もしかしたらこのままずっとゆるやかに平和な毎日が続くのではないかと思ってしまうくらいだった。

 だが、そんな風にいくはずがないのが、どうも妙な具合に歪んできたとはいえ乙女ゲームの主人公(ヒロイン)としての運命である。

 いや、むしろ運命が歪んでしまっているからこそ、こうして彼女の身には想定外の波乱が降りかかってくるのかもしれない。


 グラディオとの邂逅から一週間とちょっとが過ぎたある日、唐突に、何の前触れもなく、皇帝は再びサレナ達の元へと来襲してきた。

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