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このゲームを百合ゲーとするっ!  作者: 一山幾羅
第二対決
100/149

第二対決……? ―4

 といっても、グラディオ攻略ルートにそこまで特殊な流れが存在しているわけではない。


 まず設定としてグラディオは三年生。

 その強さと性格が災いして――というよりも本人としては意識的なのだろうが、同学年どころか学院中の生徒から恐れられて孤立している。

 またその粗暴さ故に素行も勿論よろしくない。

 自分に突っかかってくる相手がいれば、その圧倒的な暴力でやりすぎなくらいにねじ伏せる。

 なので、魔術士としても類稀なる才能と実力を兼ね備え成績も悪くないというのに、学院側からは手のつけられない問題児として扱われていた。

 そのせいで、アドニスやカトレアさまにも引けを取らない成績でありながら生徒会役員には選ばれなかったらしい(もっとも、本人はそんな扱いの全てを微塵も気にすることなく悠々自適に暮らしているのだが)。


 しかし、人格を考慮せずにその実力のみを見るならば彼は比類なく優秀な魔術士であり、畏怖の方が大多数とはいえ少なからぬ尊敬の念も集めていた。

 特に、同じ三年生かつ学院の最優秀生徒――至高の白(エーデルワイス)であるアドニスとは、そのあまりにも対照的な人間性も加味してなにかと並べて扱われることが多いようだった。

 その典型的な例が、アドニスの学院内での異名である『白き王子』に対してつけられたらしい、グラディオの『黒の皇帝』という異名だった。

 グラディオの髪色が墨のように真っ黒であることも含めて、中々言い得て妙な呼び名と言えるだろう。

 実際ゲームの開発陣もこの二人はそんな風に正反対になるように――っと、まあそこまで行くと話が逸れすぎるか。


 さて、そんな『黒の皇帝』ことグラディオが、一体どういった理由で主人公(ヒロイン)との接点を持つことになるのか。

 その鍵は、主人公(サレナ)の特殊な魔力にあった。


 まずサレナがその特殊な魔力の保護と観察のために学院に入学してきたという経緯をどこからか聞きつけたグラディオは興味を抱き、向こうの方からサレナへと絡んでくるようになるというのがグラディオ攻略ルートにおけるストーリーの起点となっている。

 純粋にその魔力への興味が湧いたというのも確かだが、実際はそれがもしも自分の力を凌駕するものであれば是非手合わせをしてみたいという物騒な理由でもあったりする。

 そうであるから、当然サレナも最初はグラディオに恐怖して普通に逃げ回るのだが、この皇帝はそんな風に避けられると余計に面白がって追いかけたくなる性質でもあるらしい。

 そうやって逃げたり追われたり、捕まったりまた逃げたりを繰り返す間に起こる様々なイベントを通して二人はお互いのことを知り、心を通わせ、徐々に惹かれ合っていく――というのが、ざっくりではあるがグラディオ攻略ルートの大筋である。

 まあ、設定だけだと最悪な面しかないように見えるグラディオでも、深く付き合ってみれば最低限は主人公(ヒロイン)が好意を抱けるような部分も存在していたりもするのだ。


 とにかく、そんな感じで主人公(サレナ)とグラディオは最終的に恋人同士になるというエンディングへと進んでいくことになる。

 だが、その道は決して平坦なものではなく、その途中には一つの大きな壁が立ちはだかることとなる。

 それは一体何か?

 もちろんライバルキャラクターの妨害である。

 そして、そのライバルが誰かなどとは今更言うまでもないだろう。

 そう、これも当然、ナイウィチにおいて全攻略対象のルートでのライバルキャラクターであるカトレアさまをおいて他にはいない。

 ここでもまた、主人公(サレナ)ライバル(カトレア)は一人の男を取り合って火花を散らすことになるのだった。


 だが、ゲーム内でカトレアさまが唯一恋する男はアドニスただ一人である。

 だというのに、どういった理由で主人公(サレナ)とグラディオの恋路をカトレアさまがライバルとして阻んでくるのだろうか。

 その答えは、ゲーム内でカトレアさまとグラディオとの間に設定されている()()()()()()に存在している。


 そして、その関係性とはまさしく今日グラディオ自身の口からも出てきて、サレナ達が大きく衝撃を受けたあの言葉――『婚約者』であった。

 そう、グラディオとカトレアさまはいわゆる許嫁、将来的に結婚を約束している仲なのだ。


 とはいえ、ゲームにおいてはそれは親同士、ひいては大貴族としての実家同士で勝手に約束された話であり、本人達の自由意志がそこに介在しているものではないようだった。

 カトレアさまにしたって彼女が本当に恋をしている相手はアドニスであるし、グラディオの方でもカトレアさまに対して何か特別な感情を抱いているわけではない。

 ただ、お互い貴族として親や家、一族が決めたことには素直に従うことこそが勤めであるとして、二人とも特に反発することもなくその関係を受け入れていた。


 だが、主人公(サレナ)と出会い、惹かれ合うようになってしまったことで、グラディオの方にその関係への迷いが生じてくる。

 また、主人公(サレナ)もグラディオに好意を抱き始めたことで、その背後にいる婚約者であるカトレアさまをどうしても意識してしまうようになる。

 そして、カトレアさまも相変わらずグラディオに対しては特に恋愛的な感情は抱いていないものの、貴族としてのそのプライドの高さから、家の取り決めは絶対に守るという決意が彼女の中には存在している。

 それ故に、自分の婚約者といつの間にか仲睦まじくなっており、まるで横取りせんとしているように映るサレナが目障りで、気に食わない存在となってくる。


 こうして妙な具合に捻れた三角関係が発生し、波瀾万丈な恋物語の様相を呈していくようになるというのがグラディオ攻略ルートの醍醐味であった。

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