このゲームを百合ゲーとするっ! ―7
しかし、とにもかくにも、これでサレナの準備は完璧に整ったと言えた。
体力と運動能力も一応人並み以上には鍛えることが出来たし、魔力と魔術に関しては言わずもがな。
「どうにかこうにか、間に合ったわね……」
サレナはそうひとりごちながら、孤児院の床を掃除する手を止めて、壁に掛かっているカレンダーを睨みつけるように見つめる。
その視線が向かうのは、赤い丸印の書かれたとある日付。
それは、サレナ・サランカ十五歳の誕生日にして、運命の日。
前世の記憶を思い出してから四年目、遂にサレナはゲーム本編の始まる歴史へと突入していく。
そのための準備はやれる限りにやってきた。
覚悟なんて当然、記憶が目覚めたあの日から変わらずに決まっている。
「もう少しで、会えるんだなぁ……」
カレンダーの日付に触れながら、サレナは感慨深くそう呟く。
それを考えると、勝手に鼓動が高鳴り始めてしまう。
それは喜びのせいなのか、それとも不安のせいなのか。
「…………ふっ」
少しだけそう考えてから、サレナはすぐにそれを吹き飛ばすように軽く笑ってみせた。
そんなのどっちでもいいし――きっと、どちらもそうなのだろう。
喜びと不安。
その二つを抱えて、サレナはカトレアさまと出会いに行くのだ。