第二話 楽しそうな夢ちゃん
クリスマスに雪だるまと出会った夢ちゃんは毎日が楽しくなりました。だって、秘密の話し相手ができたから。話し相手というだけでも嬉しいのに、秘密の、というのがさらにわくわくさせます。
雪だるまのショーンは夢ちゃんを笑顔にするのが上手でした。くすっと笑える話、ほんわかする話、わくわくする話。毎日面白いことを話すのです。
ただ、夢ちゃんは誰かが来た時に慌てて冷凍庫のドアを閉めないといけないことだけが残念でした。なんで誰かに知られると魔法が解けちゃうのかなぁ。
でも。ショーンと話していると病状も安定してきました。病室に来る先生が診察をして、うんうんと頷きます。
「夢ちゃんいい子にしてたから病気も安定してきたよ。もしかしたら次のクリスマスは家で迎えられるかもしれないねぇ」
「ほんと!?」
先生は再びうんうんと頷きます。
「これからも穏やかに過ごせたらきっと良くなるよ。笑顔は最大のお薬だからね!」
夢ちゃんはこの言葉を聞いてとても嬉しくなりました。笑顔は最大の薬。笑顔をくれた雪だるまのショーンに感謝しました。
先生が部屋を出ていくのを確認すると、冷凍庫のドアを開けました。
「ショーン! 私の病気、よくなってるらしいよ!」
ショーンも喜んでます。
「夢ちゃんが退院できる日が来るといいね。……あ、でもそうなると僕ともお別れになっちゃうのかな?」
夢ちゃんは、ハッとしました。確かにそうです。ショーンを連れて家に帰れません。病気が治ることはショーンと別れること。考えてなかったことです。夢ちゃんはまだ病気が治ったわけではないのに悲しくなりました。
「ショーンとは別れたくないな……」
ぼそりというと夢ちゃんは下を向いてしまいました。ショーンは言わなければよかった、と、申し訳なく思いました。
「夢ちゃん、お別れは始まりなんだよ」
「始まり?」
「僕とお別れしても、また会えるかもしれないからね。僕は雪だるま。また冬に雪だるまを作れば会えるよ!」
夢ちゃんはうーん、というとちょっと違う、とつぶやきました。
「私はショーンと話したいんだよ。ほかの雪だるまじゃ違うんだよ……」
今度はショーンがうーん、と言いました。
「夢ちゃん、病気を治さないと体がつらいでしょ? 体がつらい夢ちゃんを見てるの悲しいな。まずは病気、治そうね」
夢ちゃんは力なく頷きます。
「ほら、笑顔」
ショーンに促されますが、夢ちゃんはなかなか笑顔になれません。
「夢ちゃん、笑顔はわざと作ってたら気持ちもちょっと上がるんだよ。で、ちょっと上がった気持ちを続けてたらもっと上がるんだよ。さぁ、笑顔」
夢ちゃんは無理やりにこっとしました。その時のショーンの顔がおかしかったのでくすくすと笑いだしました。だって、ショーンったらひどい変顔するんですもの!
ショーンはここぞとばかりに変顔を連続でしました。もともと笑い上戸の夢ちゃんです。我慢できなくなって本格的に笑い出してしまいました。
廊下から足音がパタパタします。きっと、看護師さんです。夢ちゃんはショーンに小さく、ごめん、とつぶやくと冷凍庫のドアを閉めました。部屋のドアをノックする音がしたのはすぐ後でした。
「夢ちゃん、楽しそうね。何かあったの?」
看護師の斉藤さんが入ってきました。
「この漫画が面白かったの」
夢ちゃんはとっさに置いた漫画を指さしました。
「ふーん。今度、読んでみようかな」
そう言いながら斉藤さんは夢ちゃんに薬を渡します。
「斉藤さん、私、この薬を飲まなくてもいいようになるように頑張るね」
夢ちゃんの前向きな言葉に斉藤さんも笑顔になります。斉藤さんは頷き、夢ちゃんが薬を飲んだのを確認すると部屋を出ていきました。
夢ちゃんは再び冷凍庫のドアを開けました。ショーンはまた変顔です。それも、強烈なの!
がはははは! と笑う夢ちゃん。
「いつからその顔にしてたのショーン!」
「ん? 夢ちゃんがドアを閉めた時から」
それを聞いて余計に楽しくなってしまう夢ちゃんなのでした。




