第一話 え? 雪だるまさん?
夢ちゃんは病院の個室でほう、と息をつきました。
「今年もクリスマスにおうちに帰れないの?」
涙目の夢ちゃんの顔を見てお父さんもつらいです。
「やだぁ! 今年は帰るの! おうちに帰る!」
夢ちゃんを連れて帰りたいのはお父さんもです。でも、夢ちゃんの病気は治っていません。ちゃんと病院でお医者さんに診てもらっていないと心配なのです。
お父さんはコートを羽織らずに部屋を出て行ってしまいました。少しして戻ってくると、その手にはちょこん、と小さな雪だるまが乗ってました。
「夢ちゃん、今年のクリスマスはこの雪だるまがお友達だよ。お父さんやお母さんの代わりだよ」
夢ちゃんは冷たい雪だるまを受け取りました。目が石、鼻と口は小さな枝でできています。
夢ちゃんだってお父さんを困らせたいわけではありません。ため息をつくと夢ちゃんは小さく頷きました。
「いい子だ、夢ちゃん」
そう言ってお父さんは夢ちゃんの頭をなでるとコートを着ます。
「また明日の夜、来るからね」
そう言って部屋を出ていきました。
夢ちゃんはもう一度ため息をつくと、部屋の冷凍庫に雪だるまを入れてドアを閉めました。あーあ、もう寝るしかないじゃん。
ふてくされた夢ちゃんはベッドに横になりました。消灯前ですが、することもなかったので布団を頭からかぶって寝ました。
クリスマスの朝。冷蔵庫から大好きなリンゴジュースを出した後、冷凍庫に雪だるまを入れたことを思い出しました。冷凍庫のドアを開けると…………。
雪だるまがにっこりと笑いました。
夢ちゃんはびっくりです。思わず冷凍庫のドアを閉めました。
「えーと、雪だるまって、笑わないよね?」
そうつぶやいた後、今度はゆっくりと冷凍庫のドアを開けてみます。
今度は雪だるまがウインクしました。
夢ちゃんは再びドアを閉めます。頭の中がはてなマークでいっぱいです。もう一度開けます。
「夢ちゃん、おはよう!」
「わぁ!」
ゆ、雪だるまがしゃべった!
「な、ななな、なんでしゃべれるの?」
雪だるまはなんてことないという顔でこう言います。
「僕はクリスマスイヴの夜に手作りで作られた雪だるまだからさ。イヴの夜には不思議な力があるからね」
にっこり笑う雪だるまは自己紹介を始めた。
「初めまして。ぼく、雪だるまのショーン。これからよろしくね! あ、ほかのみんなには僕がしゃべることは言っちゃだめだよ。魔法が解けてしゃべれなくなるからね」
夢ちゃんはよくわからないけど頷きました。よくわからないなりに、嬉しかったのです。だって、これからは病室で一人じゃない。話し相手がいるのですから。
「よろしく、ショーン!」
夢ちゃんの笑顔を見て、ショーンも嬉しそうでした。




