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ブクマありがとうございます!
今回から本編スタートです!
「シャディさん、言われた本はここに置いておきますからね」
「うん。ありがと」
脚立の上で本を読み漁るシャディは顔を上げること無く礼を言うとまた本のページをめくった。
この国の事を学ぶためにシャディは王立図書館に来ていた。
王立図書館は国民の誰もが使える図書館で国内外で発行された全ての書物が保管されている。
20階建ての螺旋構造になっている建物で書物を探すのにも一苦労だ。
探してきた本をシャディの足下に置いたロイドは「次は何を取って来ましょうか!!」と満面の笑みでシャディに尋ねた。
そんな彼にシャディはげんなりした顔を向けだが、紙に取ってきて欲しい文献を書いて渡した。
あの後ロイドはシャディに謝罪しに来てくれたのだが、そこで何故かロゼリアが「謝罪だけで赦すわけ無いだろ!!」と激怒し、一ヶ月間シャディの護衛兼下僕として使われる事となった。
シャディ的には正直、近くに誰かいると面倒だからいてほしく無いのだが、ロイドがロゼリアの護衛に戻りたい一心で頑張ってくれているのを見て、無下にするのは可哀想だと思い、しぶしぶだが受け入れたのだ。
肩が凝ったなと思い、ゴキゴキと肩を鳴らしながら窓の外を見ると中央広場にある時計塔が見えた。
もう、1時か……。
朝から読み耽っていて、時間の感覚が無かったが、もうそんな時間だったのか……。
朝ごはんも食べないで出てきたからお腹も空いたし、昼食を取りに行こうかと思ってロイドに声をかけたが返事が無かったので、脚立から降りてウロウロと彼を探しに行った。
ロイドはカウンターで茶髪のメガネをかけた女性と話をしていた。
「ロイド」
「ん?おわっ!?シャディさん、いたんですか!気配消さないで下さいよ」
別に消したつもり無いんだけど……。
「あら、こんにちは。ロイドさんの彼女さんですか?」
「「違います」」
凄い、ロイドと私、息ぴったりじゃないか。
「俺の妹です」
は?
「何言ってんだお前」という目を向けると、ロイドも「合わせろ」と言いたげな目を向けてきた。
「妹さん……ですか…」
不思議そうに顎に手を当てる彼女の言いたいことはよく分かる。
私の髪はピンクゴールドなのに対してロイドの髪は赤茶だし、瞳の色も赤紫の私とは違い、黒い。
何処からどう見ても兄妹では無い。
私が「そんな簡単にバレる嘘ついてどうすんだ」とまた目で訴えると、冷汗をかきながらロイドは「この子は養女で」と苦し紛れに言った。
「養女……だからあまり似ていないのですね」
「はい…」
興味深そうに私を見つめる彼女に私は目線を合わせづらくて、ロイドの方を向くと、彼も彼でバレないか冷や冷やしているのか明後日の方を見ていた。
「シャディです。よろしくお願いします」
私が頭を下げると、彼女もにこりと笑って自己紹介をしてくれた。
「私はこの王立図書館で司書をしています、アンネ・コーメルです。本の事で分からない時は私のところに来てくださいね!全ての本の場所とタイトル、内容は頭の中に入っていますから」
「え、全て!?」
「はい♪」
記憶力の化物じゃないですか…。
「王立図書館の司書はそれが出来ないと成れない決まりになっていますからね」
ロイドも極当たり前かのように言った。
と言うか、さっきからやたらと要望した本を手早く集めて来てくれると思ったら、ずっと彼女の力を借りていたということか。
まあ、持ってきてもらってる訳だから文句は言わないけど。
「アンネー、ちょっといいー?」と同僚の方らしき人物から呼ばれたアンネさんは「では♪」と言って、私たちから離れていった。
「それより、読書はもうおしまいなんですか?」
「一旦ね。お腹空いたから、ご飯食べに帰ろうか」
私がそう言うと、「はいはーい」と言って、私の荷物を持ってくれた。
「別に持たなくていいよ。私の荷物なんだから」
「俺は今あなたの下僕ですからね。主人の為に忠義は惜しみませんよ」
「下僕さんに私の荷物を委せるのが嫌なんだけど」
「何でですか!!」
「気づいたら紛失してそう」
「そんな馬鹿なことしませんよ。俺は殿下の護衛騎士なんですから」
「今は一般庶民の下僕ですけどね」
「ぐっ…あんたなぁ…」
私のあー言えばこう言う態度が頭にきたのか言動が少し崩れた。
「私に敬語なんて使わないで下さい。あなたは爵位を持つ高貴な方なのだから庶民である私にそのような言葉遣いは適切ではないでしょ」
私の言葉に目を向けてきた丸くするロイドにクスリと笑ってやった。
「お腹も空きましたし、行きましょう。あ、外に屋台があったから其で済ませましょうか」
私が言うと、「はぁ」と溜め息を吐いたロイドは頭をガシガシと掻くと眉を下げて仕方ないと言いたげに笑った。
「はいはい。一ヶ月間は何処までもついて行ってあげますよ。シャディ」
いまいち敬語が抜けているような抜けてないような感じがするが、この一ヶ月は私と彼は主従なのだから、まあいっかと思った。
それに彼にとってはこの少し敬語の混ざった喋り方が普通なのかもしれない。
図書館の扉を開けて外に出ると、食べ物のいい匂いがいたるところから香ってきた。
続きます!