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Report21. 王の野望

「……我が王。この青年は一体何者なんです?」


ハリルは虚ろな表情を浮かべたプロトを見ながら、不可解だと言わんばかりに顔をしかめた。


「フッ…こいつは私が開発したAIロボットだよ。」


「えー…あいロボッ…ト?見たことも聞いたこともありませんね。具体的に我々と何が違うのです?」


「なにもかも違うさ。プロトは人の心を持たない人形なのだからな。」


「感情がない…ということですか?」


「そうさ。なまじ人間は感情を持つが故に、判断が鈍ることがある。良心、情け、愛情、怒り……どれも実にくだらないものだよ。

戦場では、その一瞬の気の迷いが生死を分ける場合もある。ハリル…私は感情に左右されることなく、淡々と任務をこなす忠実なソルジャーを求めているのだよ……」


(ワン)はプロトを優しく撫でながら、ハリルの方をチラリと見た。

そのハリルは納得できないといった顔で(ワン)に問いかける。


「我が王…我々の忠誠心を信じておられないと、そう仰るのですか?」


ハリルの言葉に(ワン)は不敵な笑みを浮かべた。


「人間など……ハナから誰一人として信用しておらんよ。ましてや、口先だけの忠誠など反吐が出る。」


「……私が、口先だけで物を言っていると、そう仰るわけですね?」


「そう思われるのが嫌であれば、結果で示すのだな。」


(ワン)の言葉にハリルは悔しそうに唇を噛む。

しかしその一方で、隣にいるガーレンは小さく笑みをこぼしていた。


「ガーレン、貴様何をニヤニヤと笑っている。」


ハリルはぶっきらぼうにガーレンに理由を尋ねた。


「いやなに。そこの男から凄まじい殺気が溢れ出しているのでな。戦いたくてウズウズしているのだ。なあ王よ、こいつと一戦交えても構わんか?」


ガーレンはプロトの方を指差しながら、提案を持ちかける。

しかし、これに対して(ワン)は首を横に振るのであった。


「ダメだ。こいつはまだ不完全なのでな。今お前とやったところで簡単に壊されてしまうだろう。

プロトは私の野望を成就させる、その第一歩目の試作機。今回の戦争で経験を積ませたいのだ。」


「王よ。あなたの言う野望とは、一体なんなのですか?」


ハリルは訝しげに(ワン)に問う。

それに対して(ワン)は、ほくそ笑みながら答えた。


機械人形(ロボット)の軍団を作ることだ。」


機械人形(ロボット)の…軍団?」


「そうとも。感情を持たず、ただ与えられた任務だけを忠実に遂行する軍団だ。人間は死んでしまったらそれで終わりだが、ロボットは破壊されたとしても大した損害はない。資源さえあればいくらでも作り出すことができるのだからな。

これからの時代、人間がやってきた戦争をロボットが行うようになるのだよ。」


「つまり…我々はもうお払い箱というわけですか?」


ハリルは、饒舌に語る(ワン)を睨みつけた。


「そうは言っていない。ロボットには統率する管理者が必要だからな。お前たち五龍星にはそのポストを約束してやろう。」


(ワン)のこの発言が引き金となり、ついにハリルの怒りが爆発する。


「僕を馬鹿にするのもいい加減にしろ!機械人形の管理者だと!?

なんなら今ここで証明してやりますよ!こんな木偶人形(でくにんぎょう)なんかより、僕の方がはるかに優れていることをね!」


そう言うなりハリルは懐から魔導書を取り出し、呪文を唱え始める。


「鉄屑にしてやるよ!禁呪!無限炎獄!!」


プロトの足元に魔法陣が現れる。

その直後、火山が噴火したような爆音とともに、プロトは黒い火柱に包まれた。


「ハハハハ!どうだい!こんなもんに頼らなくても勝てるんだよ!」


ハリルは先ほどまでの礼儀正しい態度とはうって変わって、歪んだ笑みを浮かべ高らかに笑う。


しかしーー


バツンッ!


糸が切れたように、黒い火柱は突然消滅した。


「なにっ…なぜだ!!なぜ、魔法が途切れた!?」


ハリルはなにが起きたか理解できず、動揺する。


そして火柱に包まれながらも無傷のプロトは、腕の中から仕込みナイフを取り出し、無表情のままハリルの喉元目掛けて襲いかかる。


防御態勢が遅れたハリルは、死を覚悟した。


『まずいっ!死……』


「そこまでだ!プロト!」


(ワン)の一喝でプロトの動きがピタッと停止する。


ナイフの切っ先はハリルの喉元数ミリ手前で止まっていた。

ハリルは恐怖のあまり、その場で尻餅をついてしまった。


「な…なんで…?なんで、僕の魔法が突然消えてしまったんだ!?」


ハリルは恐怖と悔しさが入り混じったような表情で、プロトの製作者である(ワン)に問う。


魔法無力機(マジックキャンセラー)。プロトにはそれが搭載されている。」


魔法無力機(マジックキャンセラー)…?」


ハリルは苦々しくその名前を繰り返し呟く。


「その名の通り、あらゆる魔法を無力化する装置だ。どうやらうまく作動したようだな。」


「ちょっと待て!そんなもの…見たことも聞いたこともないぞ…!」


「当然だ。私が考案したのだからな。そしてこの装置こそが、魔法大国エルトを堕とす切り札でもある。貴様たちにも渡しておこう。」


(ワン)は指をパチンと鳴らすと、玉座の裏から黒いローブを被った従者が現れ、ハリルとガーレンの二人に黒い石がはめ込まれたブレスレットを手渡した。


「それを腕につけることで、全ての魔法は無力化される。大事に扱うが良…」


「フン!」


バキッ!


(ワン)が言い終わる前に、ガーレンはそのブレスレットを握りつぶし破壊した。


「なんのつもりだ?ガーレン。」


当然(ワン)はガーレンの行いを問い詰める。


「ワシの信条は真っ向からぶつかって、全てをぶち壊す!故にこんなチャチな小細工はいらぬのだよ!

用が済んだのなら、ワシはこれにて失礼するぞ。戦いのために身体をさらに鍛えなければならぬからな!」


ガーレンは破壊したブレスレットをポイっと投げ捨て、ガハハと豪快に笑いながら玉座の間を後にするのであった。


(ワン)は粉々になったブレスレットを見つめながら、ため息をつき不満そうに呟いた。


「……つくづく人間は御し難い。だから、嫌いなのだ。」

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