想定外(レン視点)
「これは一体どういうことですか!?」
礼拝堂に入ってきたのは最初に会った神官さんだった。
「神官さん、ちょうど良かった。こんなところに怪我人が…」
「私が言ってるのはそういうことではありません勇者様。あなた達は地下室に入っていきましたね、鍵はどうしたんです?」
どうも怒ってるような焦っているような感じだ。
「掛かってませんでしたよ。若い神官さんが地下室がちょっと変と言っていたので、入れてもらいましたけど?」
「ここには若い神官など所属していません!ボロが出ましたね、何故こんな嘘を!?しかもそこにいるのはここのシスター見習いですね、どうして暴力を振るったのです!?」
駄目だ、全然会話にならない。
何だかおかしいな…もしかして、この神官が犯人?
「いや、この人はですね…」
「貴方達は一体何者なんですか!?シスターエルザも貴方達が攫ったんでしょう!!こうなれば貴方達を拘束して尋問し…ウッ!?」
神官さんの誤解の雲行きが怪しくなって来た所で、それ以上言葉を紡げなくなってしまった。
神官さんが自身の胸を見下ろすと、そこから棒状の物が飛び出している。
どうやら槍の尖端に見えるそれは、次の瞬間に引き抜かれた。
神官さんの体が前のめりに倒れ込む…あの様子じゃあ、もう助からない。
「耳障りだったものでつい、な。」
後ろから槍を突き出したであろう人物は、悪びれる様子もなく言葉を紡いだ。
あれれ…どうしてコイツがここに?
そこに立っていたのはこの領の騎士団長だった。
本来なら、この街でイベントを進めていった先で対峙する事になる相手のはずだ。
しかもその時にはクーデターを起こしている。
それを止めるイベントが遥か先にあるはずなんだけど、こんな序盤に会う相手じゃ無かった筈なんだけどな…。
騎士団長の後ろには20人ほどの騎士も控えている。
「我々の目的は教会関係者だけの筈だったのだが、見られた以上は生かしておけん。」
「ちょっと待って下さい。僕はこの世界に召喚された勇者です。身分を表す証もありますよ。」
「関係ないな。むしろ私にとっては好都合だ。勇者の力なぞ必要ない。我々の力のみで世界を平和にしてやろう。」
まぁそうだよね。
コイツの中身魔族だもん、それもバリバリの戦闘狂タイプ。
僕もレベルが一気に上がったとはいえ、楽勝とは言えない相手だ。
団長の後ろに控えていた騎士達が礼拝堂になだれ込み、僕たちを半包囲するように広がっていく。
「アラン、予想外の展開になっちゃったよ。ゴメンね。」
「何だか分からないが、あの殺人鬼はなんだ?」
「この領の騎士団長さ…中身は魔族だけどね。」
「それはまた…胸糞悪い野郎だな。」
イオリ君の事があるからな。
アランは今にも飛びかかりそうな勢いだ。
「気をつけてね。一人だけで戦うと危ないかも。」
「分かった。」
「最初は舐めてかかってくるはずだから、最初にどれだけダメージを与えられるかが鍵になると思う。」
「よし、俺が雑魚の相手をしてやる。」
話がまとまりかけた所で、
「ちょっと待った、私も混ぜて貰う。」
さっきまで大怪我をしていたフードの女性が話しかけてきた。
「え、ちょっと、まだ安静にしていた方が…」
「こうなったのも私の責任なんだ。元々、奴らの狙いは私だ。」
そう言ってフードを脱ぐ。
そこから顔を覗かせたのは、緑色のセミロングの髪に整った顔立ちの女の子…あれ?
「私の名前はレイフィールズ。貴方達は?」
「僕はレン、彼はアラン。もう動いて大丈夫?」
仲間にする予定の人物だった。
勇者にとって想定外が起こっているのは、ある人物のせいです。




