勇者というか、予言者みたいな立ち位置に(勇者視点)
僕が《宵闇の樹海》から出てきたときには、もう夜明けだった。
僕はさっきの戦いで一気にレベルアップ出来たので、鑑定と気配察知、アイテムボックスなどなど、これから間違いなく必要になるスキルを習得した。
戦闘は上級魔法を取ってるので、工夫次第でなんとでもなるだろう。
最後の速度上昇ポーションを飲むと、ロコー領の領主の館へ向かって走った。
領主の館は、館というより城というか砦というような雰囲気の方が合っている作りをしている。
館の四方は深い堀と川に挟まれ、要塞のような造りになっている。
館が近づいてくると、僕はあえて北側、つまり魔族領側から館へ向かって行った。
北側は跳ね橋が上げられていて、簡単には入れないようになっている。
館への入る許可が出るまで、橋を守る兵士たちに怪訝な目を向けられる事となった。
まぁ当然だよね。領主から聞いたはずの身なりの男が、王都側からでなく、魔族領側から姿を現すんだから。
数分ほど待つと、跳ね橋が下ろされた。
館の中に通されると、案の定領主様が待ち構えていた。
「おお、これはこれは勇者様、よくぞ参られた。ささ、こちらへ。」
貴族ともなると、本来ならば使用人に応接室なりに通させて、それから領主様の登場となるのだろうけど、ここの領主様はまどろっこしい事を嫌うみたいだ。
………ゲーム進行の都合かもしれないけどね。
そんなこんなで領主様に導かれるままに応接室へ通されて、促されてソファーに座るとズッシリ重たいものが入った袋を渡された。
「勇者様はこの世界の通貨についてはご存知ですかな?」
「ええ、召喚された時に説明を受けました。それにしても、あの程度のお手伝いでこれだけ貰ってしまっては、申し訳ないです。」
「いえいえ、勇者様は我らの命の恩人です。あのまま戦っていれば、少なくとも誰かは負傷していたことでしょう。」
まぁね、僕が来なきゃ、目の前の人もゲームの強制力でお亡くなりになってた事だろうし、遠慮なく貰っておく。
「それでは遠慮なく。“アイテムボックス”」
アイテムボックスにお金を収納する。
「アイテムボックスまで使えるとは………流石は勇者様ですな。」
「勇者だけの能力ってわけでも無いですから、大したもんじゃ無いですよ。」
僕は出してもらったお茶を一口飲み、ひと呼吸おいて、領主様に話しかけた。
「ところで、つかぬ事を伺いますが、領主様のお子さんで、10才くらいの方はいらっしゃいませんか?」
「よくご存知ですな、三男のイオリの事でしょうかな?」
「きっとその方だと思うのですが、今この館の中にいらっしゃらないのでは?」
「………実は今朝から姿が見えないようでしてな。勇者様は何故それをご存知なので?」
さて、上手いこと話を持って行かなければ
信じてくれると良いけど。
「私には先見の力がありまして、とはいえ万能ではない力ではあるのですが、実はそれが理由でここを訪ねたのです。」
そこからは、領主様と別れた後、不審な動きの魔族を追って魔族領に入り、《宵闇の樹海》に入った所でロコー家三男のイオリ君の死体を見つけた、と伝えた。
基本的にほぼ嘘っぱちだけど、大筋は嘘はついてない。
「領主様にいち早く伝えるべく南下してきたので、わざわざ裏の跳ね橋を下ろしてもらったんです。」
「そうゆう事だったのですか、それにしてもうちの三男が………俄には信じられません。」
「ええ、ですが問題は、このあと魔族がイオリ君に成り代わってこの館へ侵入をしようとしてくる所です。ですから」
「親父っ!!」
ドンッと音がしたほうを見ると、応接室のドアが開き、高校生くらいの男が入って来た。
その後ろにも何人か立っている。
「アラン、そんな無礼を許した覚えはないぞ?」
「そんな場合じゃないだろ!イオリが死んだだと?どうゆう冗談だ!?」
「父上。」
「マリク、お前まで。」
「家族の一人が殺されたともなれば、無視している場合でもないでしょう。」
「その通りだ!そもそもこの勇者とやらが自体が怪しい!こいつが本物の勇者だという証拠はあるのか!?」
「それは私が昨日の戦闘で確認済みだ。複数の魔法を組み合わせる事が出来るのは、勇者とごく一部のものだけだ。そして勇者殿以外はすべて国で把握している。」
「では父上、その方の言う事は真実なのですか?」
「勇者殿の話しによれば、今日中には明らかになることだろう。」
ここが皆に信じて貰う勝負時かな?
「そうです。これからしばらくすると、魔族が彼のフリをしてここに向かってくることでしょう。本物であるか確認をとるならば、先程の跳ね橋を下ろして迎え入れてはいかがですか?」
「!?」
何故知っている?とでも言いたげだな。
実は俺も本当の意味は分かんない!
いつも選択肢でこんな感じの言葉を選んでた。ただそれだけ。
「それもそうですな。その様にして迎えてみましょう。」
「親父、本気か!?」
「確かに、それならばイオリが本物かどうかは分かりそうですね。」
一応の了承は得られた。
後は以降の立ち回り次第かな?




