終わりの始まり 前編
アラクネの過去から今までのお話です
私がこの≪宵闇の樹海≫を任されるようになったのは今から100年程前。
当時は魔王様の治める都市で、ある貴族の娘として比較的平和に暮らしていました。
しかし、魔法や戦闘に関してはなかなか成長が見られなく、親からは穀潰しと言われ、兄や同年代の子供達からも馬鹿にされていました。
魔族社会は強さがものを言う社会です。
貴族の家に生まれようと、力が無ければ淘汰されてしまいます。
逆に力さえあれば平民の出でものし上がる事ができます。
ただ、貴族は力を強める為にひたすら強い者を一族に取り入れ、その力を維持しています。
そんな訳で、基本的に貴族の子は総じて能力が高く、平民に後れを取るということはありません。
………はずなのに、侯爵の娘の私は潜在魔力の高さはあれど、それを有効に活用できる力を持っていませんでした。
このままでは家を追い出されてしまいます。
いや、追い出される位ならまだまし。
醜聞を避けるため、人知れずいなかったことにされるかもしれない。
魔王様のペットの餌にされるかもしれない。
魔法研究の素体にされてしまうかもしれない。
どこかの貴族の慰み者で一生を終えることになるかもしれない。
そんな不安から、必死に魔法と戦闘の訓練に明け暮れていたのだけれど、努力に対して結果が表れてこないのが現状でした。
そんなある日、お父様に呼び出しを受けました。
私にとっては絶対に良い話しでは無い、といっても無視する事は許されません。
お父様の執務室の扉をノックすると、思いの外明るい声が聞こえてきました。
「おお来たか、入れ。」
「失礼いたします。」
緊張した面持ちで執務室に入ると、お父様の他にもう一人いらっしゃるようでした。
「で、レスナー卿………いかがでしょうか。」
「ふむ………これだけの潜在魔力があれば十分な働きができることでしょう。」
「おお、素晴らしい!喜べ!お前のような出来損ないが役に立つ日が来たぞ!!」
魔力が引き合いに出されたということは………餌か、研究対象か………
それでも聞かずにはいられません。
「あ、あの………お父様?」
「今から王城へ向かう。支度をしてこい。」
王城?
「わ、私はこれから何をさせて頂けば良いのでしょう?」
「行けば分かる。魔王様の御目を汚さぬよう、さっさと支度してこい。」
言われるままに自分の部屋へ直行し、すぐに身支度を調えました。
考える間もないまま、あっという間に王城の謁見の間へと通されてしまったのでした。




