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フラグは無視するもの

スルーしようとしたら絡まれたでござる。


「えーと、それはどういう……」

「ガキは口を開くな!俺はそこの人間族の女共に言っているんだ!」


一名魔族なんだけどね、もはや魔石ないからなんちゃって魔族だけど。


「私には身も心も捧げた人がいるのでご遠慮します。」

「同じく。」


アンナが秒で断ってソフィはそれに便乗した。

アンナにも好きな人がいたんだな、実家ではあまり浮いた話もなかったけど、俺の知らない所でキャッキャウフフしてたんだろうか。


「遠慮せずとも良い。一晩だけとはいえ高貴なエルフと共にいられるのだぞ?しかも私は里長だ。光栄な事だろう?」


だが小太りエルフのメンタルは強かった。

というかマジで遠慮だと思ってる?


「はっきり言わないと分からないのですか?お断りします。」

「同じく。」


多分ソフィは何も考えてないな。

かける言葉を考えるのすら面倒なんだろう。


「なにィ!?貴様らこの俺の誘いを断ってただで済むと思っているのか!?俺はここの里長だぞ!?」

「キモいので顔をこっちに向けないでください。」

「キモい。」

「な!?き、貴様ら!少々躾が必要なようだな!!」


小太りエルフさんが顔を真っ赤にして剣の柄に手をかけた。

これはマズい。


「はい!ちょっとタイム!」

「小僧!!貴様から死にたいようだなぁ!!」


そのまま斬り掛かってきたので躱しざまにアゴに拳を掠らせて無力化。

軽い脳震盪をおこしたみたいで、そのまま崩れ落ちた。


「ふぅ……危なかった。」

「ローガン様、わざわざ出てこなくても私が対処致しましたのに。」

「どんな対処?」

「気性の荒い雄の動物は、去勢するとおとなしい良い子になるそうですよ?」


笑顔で言うなよ、おまたがヒュンとなったわ。

比較的平和に解決して良かった、しょうがないけどこの人が起きて騒ぎ出す前に逃げよう。

その前に、


「何か持ってないかなー?」


倒した相手からは戦利品を頂くのがマナーだ。

……残念な事に小銭くらいしか持ってない。

じゃあ装備は、と探っていたら魔道具っぽいネックレスを発見。


「あ。」


ダークエルフの女の子がそれを見て声をあげた。

思わず声が出ちゃったのかな、手で口元を押さえてる。

気になったので解析してみると、どうやらダークエルフを強制的に指揮下に置ける魔道具みたいだな。

そりゃ思わず声も出るよ。

恐らくダークエルフ達が虐待に近い扱いをされてたのもこれが原因だろうしな。

どうしたものかなーと眺めていると、


「あの……そのネックレスを譲っては頂けませんか?対価は貴方の言い値をお支払いします。」


やはり声をかけられた。

グフフ、ここでこの提案を断わればダークエルフはこの子も含めて俺のものだぜ……なんて言うほど落ちぶれちゃいない。


「はい、あげる。」

「ああ、やはりだめですよね。実はそのネックレスは父の形見で……ええ!?」

「うん、持ってるとめちゃめちゃ面倒みたいだからあげるよ。僕は気ままな旅がしたいのであって指揮官になりたいわけじゃないからね。」

「え?ちょ、あの……い、良いんですか!?」


勿体ぶらずにネックレスを押し付けてしまう。


「うん、小銭だけで良いや。それじゃ、僕らは大事になる前に逃げるとするよ。君らもさっさと出ていった方が良い。」

「え?でも……そんな事をしたらここの守りは……」

「いや、ガリガリのダークエルフと小太りのエルフの現状で外敵から襲われたら共倒れでしょ。とりあえずは自分の身だけでも守らないと。」

「それは、そうなのですが……古来よりの盟約が……」

「いや、盟約なんざ無効でしょ。しかも反故にしたのはエルフ達、でしょ?」

「……そうです。」 

「はい、そういうわけで君らは自由さ。じゃあね。」

「ええ!?せめて名前だけでも!」


これ以上面倒な事になるまえに脱出だ。



――――――――――――――――――――――




数日後、エルフの里


二人のエルフが里周辺の森の見回りをしていた。


「あー暇だ。ほんとに警邏なんて必要なのか?」

「警邏任務は当たりだよ。他の奴らなんて朝から晩まで畑仕事だぞ?」

「まーな……家畜のくせに奴らはどこにいっちまったんだろうな?」

「知るかよ。俺らが養ってやらなきゃどうにもならなかった連中だ。今頃はどこかでのたれ死んでるだろうよ。」

「違いない。」

「にしても、奴らは今までずっとこうして働いているフリをしてたわけだな。」

「ああ、それを考えただけでもいらつくぜ。逃げる前にもっと甚振っておくんだった。」


エルフが里の主導権を握ってから今に至るまで、警邏が襲われたという報告はない。

エルフ達にとって警邏は畑仕事回避のための楽な仕事でしかなかった。


「まったく、あの豚どもときたら」「おい!何かいるぞ!!」


仲間の焦った声、それを聞いてもう一人も慌てて剣の柄に手をかけた。

二人の目の前に、体長3メートルはあろうかという大猿が現れた。


「な、なんだこいつ!?」

「まずいぞ、完全に俺たちを意識してやがる!」

「グルルルル……」

「お、俺が里に応援を呼びに行くからお前はここでコイツを足止めしてくれ!」

「何言ってんだ!?剣の腕はお前が上だろ、お前が残れよ!!」

「ガアアアア!!」

「「ヒィッ!?」」



 ――――――――――――――――――――



 某所


「私達が里を抜け出して一月……そろそろ隠遁の結界の効果が完全に切れてしまうわね。」

「人喰い猿か……しかし、族長を助けてくれた少年の言うとおりだ。こんな弱った状態の我々では防衛などできない。それまでは体力の回復を待つ他ない。」

「やめてよ、私みたいな若輩者が族長だなんて収まりが悪いわ。」

「その族長の証を持つものが族長だ、誰も異論などない。お前が族長でいることが、我々を助けてくれた少年へのせめてもの報いだ。」

「分かったわ。でも、相互補助の盟約はどうしたものかしら?」

「エルフの中には覚えているものも多いだろう。エルフが生産、我々ダークエルフが防衛……お互いの長所を活かした取り決めではあったが、それも変革の時期かもしれないな。」

「いずれまた話し合いが必要ね。とはいえ、今は私達もしっかり回復に努めましょう。」

「そうだな。」 

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