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エルフの里(勇者視点)

神教国での一悶着の後、僕達は北上して魔族領へと入り込んだ。

目指すは魔族に占拠されたエルフの里だ。

目的はエルフの里に伝わる伝説の装備を回収する事。

せっかくだから伝説の装備は取っておかないとね。


今のエルフの里はダークエルフに統治されていて、多くのエルフ達が虐げられている。

だから里の外れのレジスタンスと協力してダークエルフを打倒し、その過程で伝説の装備を手に入れる事になる。




エルフの里に到着。

とりあえずさっさとレジスタンスの所に移動する事にした。

村の外れの方に向かい、そこに立っている掘っ立て小屋の扉を2回叩いて一拍置き、3回叩く。

すると扉のむこからくぐもった声が聞こえてきた。


「“よう、今日の飯はなんだ?”」

「“ブラックチェリーパイだよ”」


ガチャリと扉が開かれた。

中にいた男は見慣れない僕らを訝しがりながらも中に入れてくれた。

と言っても、信用はしていないのだろう。

武器をこっちに向けて警戒しているみたいだ。


「……お前ら何者だ?どうやって合言葉を知った?」


一番奥にいた一番大柄なエルフが話しかけてきた。

どこで知ったも何も、ゲーマーの端くれとして合言葉とか謎解きとかは全部頭に入ってる。


「そんな事は重要じゃないだろ。最も重要な事は、僕らは君らの目的を果たすのに役に立つって事さ。」

「……まぁ良い。お前ら、武器を下ろせ。」

「リーダー!?」

「ここに入って来れたと言う事は、少なくとも事情を知っているという事だろうからな。もし敵のスパイだったら、即始末する。」

「ありがとう、それで良いよ。」


とりあえずは戦闘にならずに済んだ。


「ところで、お前らの目的は何だ?」

「ダークエルフの首領が持っているお宝さ。それ以外は何も要求しない。君らはダークエルフからこの里を開放したい、そうだろ?」

「ふむ、そこまで知っているなら話は早い。我らの望みはあの薄汚いダークエルフどもから主権を取り返す事だ。」 

「僕らは戦力として申し分ないと思ってる、報酬はさっき言った通りで良いから協力させてほしい。」

「後から報酬の上乗せを迫られても聞けないぞ?」

「構わない。」

「よし、俺はリーダーのグドだ。」 

「僕はレン、後で仲間も紹介するよ。宜しく。」


交渉成立。

と、アランが小声で話しかけてきた。


「おいおい、レン、大丈夫なのか?」

「うん、まあ欲しいのはボスの持ってる装備だけだからね。」

「いやいやいや、あのリーダーとかいう奴。あまりできた人間には見えないぞ?パッと見虐げられているようには見えないし。」

「まあ問題があれば後で修整するとして、魔王直属のダークエルフからエルフを開放しなきゃならないのは間違いないでしょ?」

「うん、まあ、それはそう……なのか?」


そんな訳で、ここにいるレジスタンスの皆とダークエルフの首長の住む屋敷を急襲する事になった。

よしよし、ストーリー通りだな。

といっても、この流れは2周目じゃないとできない短縮シナリオなんだけどね。

事前に合言葉を知らないとできない荒業だ。

とはいえ、一周目の通りに立ち回るとグドが死んでしまったりするから、この方が良い。




首長は里の中心に聳え立つ大木を使ったツリーハウスに住んでいる。

そこに僕達とグド、数人の有志で攻め込む。

短縮シナリオの良いところはいきなりボス戦が始まる所だ。

もし通常通りだと、樹海のダンジョンに飛ばされて何日もかけて脱出し、直後ボス戦となる。

当然いきなりボス戦の方がボスの能力が高い。

とはいえ、現実で樹海なんて所に飛ばされて野営しながら脱出とか精神が保たない。

あれはゲームだからこそどうにかなる展開なんだ。


と、言うわけでレジスタンスの手引きで大樹のツリーハウスに侵入。

あっと言う間に首領と対峙する事になった。


「フム、貴様らが最近噂になっている不良共か。多少ならば目を瞑ってやろうと思っていたが、武器を持って家に侵入というのは冗談ではすまされない。きつーいお仕置きが必要なようだな。」


首領が尊大な態度で話かけてきた。


「誰が不良か!俺達はダークエルフから里を取り戻す為に立ち上がった義勇団だ!!お前達は俺達の生活を縛り、搾取し、虐げた!到底許せるものではない!!」

「全ては必要な事だ。若いお前には分からない事もあるだろう。だからここは……む、この不自然に内側から湧き上がるような殺意……貴様、勇者か。」

「よく分かったね、僕は召喚された勇者、レンだ。」

「勇者がいたのならば是非も無い。この衝動はお前を殺さなければどうにもならない。風のヒューリック参る!!」


言うやいなや腰に吊っていた長剣を抜き放ち、斬りかかってきた。

首長は素早さ重視のアタッカータイプだ。

ボスなので防御力や体力も高い、苦戦は必至の強敵だ。


ザシュ


……と思っていた時期が僕にもありました。

アランが天使戦の時に貰った新武器強すぎでしょ、斬り結んだ武器を叩き斬ってそのまま首長の体を両断する勢いで斬り裂いた、どう見ても致命傷だ。


「グ……この力……召還の報から日も浅いというのに、さすがは勇者と言った所か。」

「勇者というか、その仲間だけどね。」


今回はアラン以外出番無しだったな。


「勇者がいてこその強さなのだよ、それは。今回は貴様らの勝ちだが、次はこう簡単にはいかん……」

「貴様に次は無い!」


言葉を続けようとする首長の首をグドが斬り飛ばした。

こんな会話イベントあったっけ?って気持ちもあったのだけど、まぁ良いか。

さてさて、首長の死体があった場所には宝箱が一つ残されていた。

開けてみると目当ての装備、疾風のブーツがはいっていた。


「グドさん、目的の物はこれです。貰っていきますよ?」

「ああ、良いだろう。今回はお前達の御陰で助かった、礼を言う。またいつでも里に来ると良い、歓迎するぞ。」

「ありがとうございます!じゃ、僕らはもう出立します。」


会話もそこそこにエルフの里を辞した。


「……なぁ、レン。こんなに急ぐ必要あるのか?」

「あのグドってのは疑り深いんだ。留まったりしたらろくな事にならない。」


留まった場合、祝勝会があるのだけれどそこで毒を盛られた上に戦闘に突入する。

そして勝った所で特にメリットがあるわけでも無い。

そんなわけで、さっさと出立一択だ。

休むのもそこそこに里を辞した。


「それにしても、あっという間だったわね。私なんて空気と変わらなかったわ。」

「……それだけ頼りになると言うことだろう。」


ジェーンさんとレイさんが久しぶりに口を開いた。

二人には申し訳なかったけど、今回はスピード勝負だったからな。


「ごめんね、次の場所ではみんなにも頑張ってもらうことになるよ。」

「次にはどこに?」

「次はドワーフの集落かな。」


次は鎧を探しに行かないと。


「……という事は北上するのね。」

「どうかした?」


ジェーンさんの表情が少し曇ったので気になった。


「大丈夫、次に暇な時でもあれば近くに寄って欲しい島があるの。いつでも良いから。」

「そうなの?今からでも……」

「いえ、まずは勇者の旅を優先させましょう。」


そんな訳で、僕達は一路北へと進路をとるのだった。

ちょっと駆け足で広げた風呂敷を畳んでいきます。

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