試合4
あるカジノの支配人の私室
「平和だなぁ。」
「平和すぎますね。」
2人の人物が寛いでいた。
「そろそろ師匠達は実家に着いたかな?」
「観光目的ですし、関わる可能性は無いのでは?」
「いや、師匠は妙に引きが強いからね。自分では望んでないのにトラブルに巻き込まれるから、間違いなく行ってると思うよ。町中で冒険者に絡んでいく貴族なんてあの人位しか居ないし、アレも持たせたし。」
「何を書いたんですか?」
「二人を私の指南役に任命するという事と、何事もなく家を継ぎたかったらこの二人に喧嘩売っちゃ駄目だよって書いといた。」
「あちゃー、そんな事書いたら煽ってるのと同じじゃないですか。」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと丸く収まるように手は打ったから。」
「本当ですか?」
「うん、今日も紅茶が美味いなぁ。」
「名前が偽名なのも伝えて無かったですよね?師匠が帰って来たとき、一人で怒られて下さいよ。」
「えー!?」
カジノは今日も平和であった。
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城乃内家訓練場
「ふむ、待ったという事はどういった意味ですかな?キョウ様。」
「確かに指南役同士の対決はこちらの負けだ。だからこそ勝負有りの宣告がされる直前の今、お前達に決闘を申し込む!」
おおっと、これは無理を通して道理を蹴っ飛ばす「おい決闘しろよ。」ってやつですね。
「もしこれで負けるような事があれば継承争いで大いに不利になりますよ?」
「構わん!」
こっちの意思は無視ですか、そうですか。
「残念ながらあなた方に拒否権はありません。これは当主候補の持つ特権です、指南役の汚名は当主が責任を持って雪ぐ。それが当主に課せられた役目でありますので。」
「さいで。」
まあつまり、指南役同士で戦わせて負けたら大将が出てくる。
で、それで相手の大将を消耗させておけばこちらの大将はいざという時有利になる、と。
こっち大将不在だけどね。
「勝負方法は……死合だ。」
「死合とは、相手を戦闘不能にすれば勝ちです。殺してしまっても大丈夫です。」
執事長が丁寧にルールを説明してくれた。
「じゃあ僕が行こうかね。ソフィにはもう3回出てもらってるし。」
「えー、別に疲れてないよ?それに、さ。」
なんだかソフィがモジモジし始めた。
ある方をチラッチラッと見ている事からして狙いは分かってる。
「分かった。じゃあ決闘はソフィにお任せするよ。」
「ローガンも、頼んだよ!」
という訳で、俺はソフィのお願いを遂行するべく移動を開始した。
さっき料理対決でソフィが全く使わなかった調理器具の方へ。
材料がこれだけ沢山余っているんだし、何かしら作らないともったいないオバケが出ちゃうよ。
「始めっ!」
まずは米を軽く洗って土鍋で炊いていく。
土鍋はあまり使った事が無いから緊張するな。
「喰らえ!紫電一閃!!」
「黄金の回転!」
次に野菜だ。
玉ねぎを大量に刻んで炒めつつ、じゃがいもやにんじん等の野菜を切っていく。
肉は鳥にしようかな、さっき豚肉(ボア肉)使ったし。
「まだだ、俺はこんな所で負ける訳には行かないんだ!」
「キョウ様!?」「あの禍々しい魔石はなんだ!?」
まずは玉ねぎだな。大量の玉ねぎをじっくり焦がさないように炒める。
玉ねぎが飴色になるまで炒められたら一旦取り出して肉と他の野菜を炒めていく。
「コレガ、オレノチカラ……スバラシイ!」
「キョウ様が化物になっちまったぞ!?」
「モハヤ刀ナド要ラヌ、コノ爪デ全テ引キ裂イテクレル!」
「まさか変身するなんて……きっとあと2回は変身するに違いないわ。」
軽く炒めて油を纏わせたら玉ねぎと合わせ、そこに昨日城乃内家の厨房で出た野菜クズから作ったベジブロスを注ぎ込み、じっくりコトコト煮込んでいく。
「バ、バカナ……コノ速度ニ対応デキルダト?」
「さぁさぁまだ一本腕がちぎれちゃっただけでしょう?もう2回変身しろ!使い魔を出せ!腕を4本に増やして四刀流で反撃しろ!早く、速く、疾く!!」
「バ、化物メ……!!」
煮込んでいる間に、今回の料理の超重要な作業をするぞ。
スパイスを何種類も持ってきて調合する。
全ては愛のターメリック、ハラハラハラペーニョ……
出来上がったスパイスを鍋に入れて、おお、良い香り。
後は焦がさないようにじっくり煮込んで、
「モ、モウ嫌ダ…助ケ」
「隙あり。ペガサス鉄球流星群!!」
「アガガアガグガガガゲガ……」
美味しいカレーの……
「からのぉ、天馬式ローリングクラッシュ!!」
「ギャァァァ!!」
出来上がり!
うむうむ、これは良い出来だな。
まさかカレーが作れるとは……
王都なんてスパイスで家が建つぐらい高いからな。
よくぞこんなに取り揃えたものだ。
早速盛り付けてみようかな。
「ロ、ローガン、ちょっと。」
「んー?ソフィも食べるでしょ?今ごはんよそってあげるね。」
「いや、その前にアレを見てほしいのだけど。」
「何だ?ソフィいつの間にハンバーグのタネなんて作ったの?まぁハンバーグカレーも悪くないか、」
「あ、あのね……キョウさんなんだ、アレ。」
わーぉ。
ハリキリ過ぎちゃったね、この子。