船上戦
誤字報告どうもありがとうございます。
それは昼過ぎ、丁度お昼ごはんを食べている最中に起こった。
今日のお昼はサバサンド。
いや、正確にはサバっぽい魚のサンドイッチ、魚の名前は不明。
パンは船員さんのと焼き魚をトレードした。
「ウマウマ。」
「サバ缶でも生み出したらヒットしそうだな。」
「さばかん?」
「サバイバルカウンター、ジョルトブローでカウンターを打ち込む捨て身の必殺技だ。使うと死ぬ。」
「どっちが?」
急に船内が慌ただしくなった。
目の前の船員さんたちが目を血走らせながら口々に怒鳴っている。
「むむ!?この秘奥義を盗もうとする輩が騒いでおるな!?」
「た、たいへんだー!?」
「おのれ、この禁忌の技はワシが墓場まで持っていくぞ!」
「……そろそろ虚しくならない?」
……
船員さんたちの目は血走っているけど、こっちには目もくれない。
怒鳴ってはいるけど、内容は「魔物だー!」とかそう言ったもの。
どうやら船の左舷から魔物が上がり込んで来たみたいだ。
「ローガン、どうする?」
「まずは邪魔にならないようにBBQセットを片付けよう。」
手早く網の上の魚を食べ進めていく。
全く、味わっている暇もない。
「お前ら!ここに居たら危ないぞ!」
「はーい、今片付けまーす。」
「バリバリグシャグシャバキバキゴクン。」
とりあえずは釣竿と焼き網を倉庫に運ぶ。
その後は、護衛の冒険者の戦いを見学することにした。
甲板に上がって来ているのは三叉の槍を持った魚人、サハギンだ。
大体10匹程度が上がってきたみたい。
ファンタジー海上戦闘あるある
普段海中で生活しているくせに甲板に上がってくる魔物。
海中から船の底を攻撃したほうが絶対楽なはずなのに、なんで出てくるんだろ?
対する人間側は、
甲板で魔物と戦っているグループとマスト周りや操舵室、客室への扉を守るグループがあるみたいだな。
彼らもこの手の戦闘は慣れっこなのか、特に危なげもなく魔物達さばいている。
「へ、サハギンが10匹程度なら楽勝だな。」
「俺達をビビらせたきゃクラーケンでも連れてくるんだなぁ!」
直後、船がゴゴゴと揺れ始めた。
「な、なんだ!?」
「この揺れは、まさか!?」
船の側面に這う巨大な触手が見えた。恐らくこれが船の動きを無理矢理とめてしまったんだろう。
船を絡め取ってしまう程の触手の持ち主といえば……考えるまでもなく、それが海面から顔を出した。
その巨体はズンズンと天に向かって伸び、船のマストの頂点程の高さで止まった。
その聳え立った山の中腹辺り、これまた巨大な目玉がギョロリと甲板を睥睨した。
「クラーケンだ!でかいぞ!」
「このサイズ……キングクラーケンか!?」
ファンタジー海上戦闘あるある
船の真正面か側面に立ちふさがる巨大なイカ又はタコ。
いや、シーサーペントの場合もあるかな?
何にせよ、何故か海面から顔を出してくる。
海中から船を攻撃した方が絶対良いはずなんだけどな……
「ローガン!クラーケン出た!」
ソフィの口から涎が……
しかし、残念なお知らせをしなければなるまい。
「……ソフィ、冒険者がやってはいけない事の1つに横殴りというものがある。」
「横殴りとは?」
「他のパーティが戦っている時は、その魔物に手を出しちゃいけないってルールさ。」
「えー!?」
「逆の立場になって考えてみると良い。もし、ソフィがレッドボアを狩ろうとした時に、別の人が横から急にトドメをさして『このレッドボア狩ったの俺なんで貰っていきますね』って言ったらどうする?」
「アンデッドにならないように火葬して骨を粉々にして地面に埋める。」
……〈怒る〉と〈殺す〉すっ飛ばして埋葬しちゃったよ。
「何にせよ、そんなの認められないでしょ?だから、彼らが譲ってくれるまでは手を出しちゃだめだよ?」
「なるほど、分かった……」
という訳で、彼らの奮闘を観戦することに
戦士のこうげき、しかし触手に阻まれてしまった。
魔法使いの地属性魔法、しかし、ほとんどダメージを与えられていないようだ。
狩人の弓矢こうげき、目に当たったが刺さらなかったようだ。
キングクラーケンのこうげき、甲板に大ダメージ。
あと3発も貰えば船は航行不能というか沈没するだろうな。
「クソッ!魔法も矢も効果が薄い!!」
「攻撃の手を緩めるな!諦めずに攻撃すれば怯ませられる!!」
「もう駄目だ!俺は船から降りるぞ!」
一人が戦線離脱して海に飛び込んだ。
恐慌状態だったんだろうな。
ここで船から降りても良い事なんて一つもない。
ちょうど5日目なんだからちょうど大陸と島の中間地点の海のど真ん中。
どんなに泳ぎが得意でも、何日も泳ぎ続けないと陸に着くことはできない。
「……戦線が崩壊したし、少しだけ手伝おうか。」
「やった!」
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