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横槍(勇者視点)

誤字報告どうもありがとうございます!

「“ライトニング”」

「“アイギス”」


ザフキエルの雷を複合障壁で受け止める。

あまりの衝撃に一瞬意識が飛びかけるけど、ここで気を抜くわけには行かない。

そこへ、


「“ニーズヘッグ”」


レイさんの手元から小型の毒竜が3体飛び出した。2体を囮にしながら翼でガードし辛い足にチクチクダメージを与える。

それに業を煮やしたか、ザフキエルが小さく屈むのが見えた。


「“グルーハウンド”」


ザフキエルと僕らの中間に向かって粘着物質でできた猟犬が走り出した。

突進してくるザフキエルにぶつかり、ザフキエルの自由を奪おうとするが、奴は気にせず突っ込んできた。

しかし、グルーハウンドの効果で本来のスピードが出ない。

余裕で攻撃を躱した所でレイさんの魔法が発動した。


「“ミルキーフォグ”」


辺り一面を真っ白に塗りつぶす程の濃密な霧が立ち込めた。


「小癪なっ!」


ザフキエルは僕らがいた辺りを狙ってハルバードをめちゃくちゃに振り回すものの、何も捉えられない。

逆に僕らも相手の姿が見えないのだけれど、彼が大暴れしてくれているので、音で場所が分かる。


「“ロックフォール”」


レイさんの魔法でザフキエルの頭上に巨大な岩が出現した、それをザフキエルは持ち前のハルバードを斬り上げ迎え撃つ。


「“全力斬り”」


ハルバードを真上に振り切り、がら空きになった胴へ魔剣パラポネラを横薙ぎにした。

確かな手応え……

僕が飛び退った所で魔法の霧が晴れてきた。

ザフキエルの鎧には、横一文字に切り込みが入っている。

まだ明確なダメージにはなっていないけど、繰り返せば大ダメージになるはずだ。


「卑怯者共め……正々堂々と戦ったらどうだ!?」

「殺し合いに卑怯も何も無いでしょ。そんな強力な鎧を装備しておいて言って良いセリフとは思えないね。」


先程から何合かやりあっているけど、大分安定してきたな。

二人で協力する事によって相手を冷静に観察する余裕が出てきた。

ザフキエルはとても強い、でも色々付け入る隙があるみたいだな。


「ようやく気付いたようだな。」


端から見守っていたルミナスブラックが口を開いた。

傍らでは参戦を止められたアランがうずうずした表情でこっちを見ている。


「戦闘スタイルがシンプルって事ですか?」

「そうだ、天使共の戦いを一言で表現するなら、攻撃魔法の使えるレッドボアだ。離れていたら魔法、近づいて物理攻撃、相手からの攻撃は翼か鎧でガード、それだけだ。」

「攻撃魔法の使えるレッドボア……それはあんまりでは?」

「その程度でしかない、という事だ。生まれた時から強かったから、戦術を学ぶという事もしてこなかったのだろう。哀れなものだ。」

「なぁ、そろそろ俺も混ざって良いだろ?」

「却下だ。」


どさくさ紛れにアランが参戦しようとして却下された。

というか、見てなかったから分からないんだけど、アランはもう自分の相手を倒しちゃったの?

何にせよ、僕とレイさんだけでも問題なさそうだ。

……これ以上変化したりしなければ。


ザフキエルの怒気をひしひしと感じながら、次に取るべき一手を考える。

でも、こんな相手ならこちらから攻め込んだ方が不利になりそうだ。

あっちも攻めあぐねているのか、こちらを睨めつけるだけで何もしてこない。

しかし、焦れてきたのかハルバードを振りかぶった。


「何にせよ、当たれば良いのだ。ここからは、体力の尽きるまで相手をしてもらう、覚悟しろ!」


ザフキエルが身をかがめ、足に力をためているのが見て取れる。

僕らも迎撃すべく、剣を持つ手に力が入った。


「うおぉぉぉぉっ!!」


奴が咆哮をあげながら一歩目を踏みしめたその瞬間、ドォン!という音と共に、ザフキエルを中心に大量の土ぼこりが舞い上がった。

目眩ましから突進してくるつもりか?

警戒するものの、ザフキエルが飛びかかってくる気配はない。

次第に土ぼこりが晴れてくると、そこには金髪碧眼の綺麗な女性が立っていた。


このタイミングで変身?

いや、違う。

ザフキエルの頭部らしきものが女性の足の下にちらりと見えた。

という事は、この女性の落ちてきた衝撃でザフキエルは地面の下に埋まっている?

こちらの怪訝な表情が伝わったのか、女性が口を開いた。


「突然で済まないが、この戦いを始める前に私に少しだけ時間をくれ。」


そう言いながら、無造作に足元にあった髪の毛らしきものを掴んで引き上げる……やっぱりザフキエルが埋まってたのか。


「おい、起きろ。」

「う、うぅ……は!?これは我が主セ」


次の瞬間、髪の毛を掴んでいたはずの手がアイアンクローになっていた。


「アガガガガ!」

「お前達は本当に記憶力が悪いな。私が申し付けた事を忘れたのか?」

「いいえ、ちゃんと覚えています!1つ、外ではみだりに女神様のお名前をお呼びしない事。2つ、勇者や魔族などの不確定要素があるものとは極力交戦を避ける事。3つ、女神様の言葉や作戦を関係者以外の者がいる所では発言しない事です。あ!?」


言い切った後にこっちの方を見て青ざめるザフキエ

ル。


「フフフ、お前は3つ目の事を破った事には気付いたようだな。喜べ、全部アウトだ!!」

「アババババ!!」


アイアンクローが食い込み過ぎて、ザフキエルの顔が一部変形しちゃってる。

しばらくしたところでザフキエルは解放された。

頭を抑えながら肩で息をしている。

そんな彼を尻目に、女性(多分女神さま)が再び話しかけて来た。


「さて……待たせてしまってすまない。私はコレの上司なのだが、躾がされていなくて困った事だろう。私もどうにかしたいとは常々思っているのだが、生憎バカにつける薬はどこにも売っていないんだ。君達は勇者御一行さんだね?」

「は、はい。ちょっと前に王国で召喚された勇者のレンです。貴女は?」

「私はこの神教国の偉い人だ、名前は……セレアだ。」


……偽名だろうな。

でもセから始まるのは間違い無いはず。

偉い人=女神さまというのは一応スルーしておこう。


「今回はすまなかった。私はこのバカ共に教会の管理を任せたのだが、あまりにもバカなのでなかなかうまく事が進まないんだ。かと言って私の元に来る人材はバカばっかりだからな。たまーにそれなりに頭の良い奴が来たと思えばペドだったりショタだったりネクロだったりを拗らせた人格破綻者だったりな……」

「な、なかなか大変なんですね。」

「勇者さんは分かってくれるか!組織を運営する以上私一人では限界があるのだ、どうしても部下に仕事を任せなければならない!今回の事はその最中に起きた不幸な事故だと思って、許してはくれないだろうか!?」

「ま、まぁなんだかんだ言って僕らもレベルアップしましたし、被害も無いですから何も言う事は無いですが……むしろ、そちらに被害が出てしまっているので、それは良いのですか?」

「ああ、あの程度なら資材積んでちょっと置いときゃ出来る程度の戦力だから気にしないでくれ。いやー勇者さんたちが優しい人で良かった、お詫びの印にこのバカを雑用として連れてく?荷物運びからいざと言う時の肉盾としてどう?」


さっきまでセレアさんの後ろでシュンとしていたザフキエルが、ギョッとした顔をしている。


「い、いえ。止めときます。」

「そうだよねぇ、使い勝手が悪いよね、バカだから。」


こっちが断ってホッとした表情になったが、その後のセレアさんの言葉で再びシュンとなった。



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