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危険分子(天使視点)

「魔法ができた、だと?貴様ら、正真正銘の邪教徒だったか!」


魔法を作るという事は我らが教義の禁忌。

今までこの二人が使っていた魔法も我らの魔法の模倣だったという事か。


「やれやれ、自分の所の教徒じゃなければ抹殺安定の宗教が、よくぞここまで社会に浸透できたものだ。あんた達の教祖はマーケティングが上手らしい。」

「邪教徒相手ならばもう遠慮する事もない!“ヘルファイア”」


上級魔法より高度な権限を必要とする魔法を発動。

私の手元から赤黒い炎が飛んで行き、二人を包み込んだ。

神と、神にお仕えする天使にしか使用する事ができない超魔法だ。

ミスリルをも一瞬で溶かしてしまう地獄の炎…我々はこれだけの威力の魔法を、自分の魔素を消費せずに使う事ができる。

それは普段信者が魔法を行使する際に、少しずつ魔素を天引きしてプールし、こういった非常時にすぐさま大魔法を使用できるようにしているからだ。

邪教徒と知らなければここまでする必要は無かったが、邪教徒は見つけ次第すぐに処理する必要がある。

彼らにとっては、生け捕りにされて拷問されるより幸せな死になってしまったかもしれない。


「残念ながら、死んでないよ。」

「…馬鹿な。」


地獄の炎は相手を完全な灰にするまで燃え尽きる事は無い。

一体どうやって?


「メビウスエンゲージの解説をしてなかっただろ?これはね、鋼の紲、シンクロ率500%、魂の共振とか呼ばれてるものさ。人間はね、1人の力はちっぽけでも、2人が力を合わせればその何倍もの力を発揮する事ができるんだ。」

「二人だけでそんな力になるものか!」

「そうさ、特別なパートナーとしかそれは発揮できない。俺達はお互いに魔力を相手に与えている、魔力でメビウスの輪を作るように。その結果、ソフィの目は俺の目になり、俺の足はソフィの足になった。俺はソフィであり、ソフィは俺になった。」

「そんな意味の分からない力など、私が断ち切ってやる!この神から賜りし力で!」


私は全身に力を漲らせた。

…次の一撃で確実に1人は葬る。


「そう、あんたの力は与えられたもので、与えられた以上の事はできない。そして、もうその力の分析も終わってしまった。」

「分かったような口をっ!」


再度飛びかかって拳を振りかぶる、相手も自信満々で受けて立つ姿勢だ。

その慢心が身を滅ぼすと教えてやる。

肉薄して拳を打ち込むが、余裕の表情で受け止められた。

しかし、真の狙いは相手の魔法障壁内まで入り込むことだ。

足を踏み込み、


「そこだ!“ヘルファイア”」


私の足元から二人に向かって黒炎が柱の如く立ち上

る。

通常、人間の魔法は手元に魔法陣が発生するが、我々は自由に魔法陣の発生場所を変更できる。

普段、私が手元から魔法を発生させるのは、いざという時不意をつくためだ。

今度は防御する暇も無かったに違いない。


「次回は強者を前に油断などせぬことだ。最も、死んでしまっては次回も何もないだろうが。」


踵を返し、報告に戻る事にする。


「その言葉、そっくりそのままお返しするよっ!」

「なっ!?」


慌てて振り返る。

さっきまで少年が少女を背負っていたが、今は二人並んで手を繋いでいる。

そして繋いでいない外側の手が2つともこちらを向いている。


「これが答えだ、受け取って欲しい。」


空気がピリピリと振動するような錯覚を覚える。


「“アイスコフィン”」

「“ダークニードル”」


よくある魔法に詠唱だ、臆するものでは無い。

ようはそれをどう使ってくるか、だ。


「「“フローズン・アイアンメイデン!!”」」

「なっ!?」


詠唱が終わった直後、私の周りに巨大な氷の壁が出現、あっという間に囚われてしまった。

…今のは、デュアルスペル?

2つ以上の魔法を組み合わせて発動するデュアルスペルは、ごく一部の者にしか使えない。

非常に扱いが難しく危険な為、神と魔王の盟約の元で使用が制限されたのだ。

邪教徒共め…野放しにするにはあまりに危険すぎる。


氷の壁に渾身の蹴りを放つもビクともしない。

先程のように神剣が使用できれば脱出も容易だろうが、生憎今は…いや、使える。

私は収納魔法を使用し、神剣を取り出した。

見事に氷で覆われてしまっている、おまけに先端には無力化の腕輪を通されてしまっており、自由に振るう事はできない。

だが、突きだけならば問題はないはずだ。


私は寸分違わず真っ直ぐに壁を突いた。

大きな爆発音が辺りに響く…しかし、音の割に壁に穴は開いていない。

そして何故か剣を持つ手が少々軽い。

嫌な予感と共に手元を見ると、剣を包んでいた氷が砕け散っていた。

そして、見るも無残な姿になった無力化の腕輪。


「これは…いや、そんなまさか…私は腕輪に触れないように突いた筈だ。」


今一度壁を突く。

剣は氷にぶつからずにスルスルと進み、逆にデタラメな角度から切っ先が突き出てきた。

攻撃を受け止めるのではなく、受け流して別の場所から出しているのか?

そんな考察を他所に中空に黒い魔法陣が発生、闇属性と思われる黒い杭を四方八方に吐き出し始めた。

杭は壁に当たっても消える事なく、壁と接触した瞬間に角度を変えて飛んでいく。

なるほど、この氷の柩に囚われている限り、この黒い杭に穴だらけにされてしまうという寸法か。

しかし、私の手には今や神剣がある。

不幸な事に腕輪は壊れてしまったが、飛んでくる杭如き、この剣で全て叩き落としてくれる。


私の方に向かって来た杭を剣で払い落とした…ハズだった。

耳障りな金切り音が響く、杭は恐ろしい程のスピードで回転していたようだ、何とか打ち落とす事に成功したものの、刀身が少し欠けてしまった。

魔法陣からはいまだに止め処なく杭が吐き出されている。

剣で全てを受けていては剣が折れてしまう。

かといって既に避けるのも厳しい状況になってきている。

ならば、中空の魔法陣を破壊するのみ。

杭の何本かは体に突き刺さるのも厭わず魔法陣に接近し、神剣で切り裂いた。

これで、既に吐き出された杭も消えていく事だろう。

そう安堵しかけた時、またもや魔法陣が現れた…今度は2つ、3つ…4つ。

増え続ける魔法陣1つ1つから先程と変わらぬ量の杭が飛び出してくる。

目の前が、黒く染まっていく。


「う、うぉぉぉぉぉ!?」

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