男と義娘 No.5
主人公がやっと本格的に関わってきます。急いで書いたので読みにくかったらすみません。表現がおかしかったら言ってください。よろしくお願いします。
屋上にいた少女は俺の方を見るなり昨日と同じ見惚れるようなふわっとした笑顔で口を開く。
「ふふっ、昨日のおにーさんじゃないですか。どうしたんですか?こんなところに。」
やっぱり夢じゃなかった。昨日の夜やはり自分の前にはこの子がいたのだと証明された。
「君と話をしに来た。」
そう俺が言うと目の前の彼女はニヤッとする。
「おおー!これは告白されるやつですね。ああーでもごめんなさい。私、オジサマは恋愛対象外なんです。」
何故か振られた。そして微妙に傷つく。
「って、そうじゃなくて昨日の娘を救う方法があるって言ってただろ?それを聞きに来たんだ。」
「ああ!そっちでしたか。ごめんなさい。早とちりしちゃって。」
「早とちりも何もその事しかないだろ。いや、俺の言い方も悪かったか?っても第一出会ったばかりの女子校生?に告白したりしない。」
「私が女子校生?ふふっ、あはは、はっはっは、はぁー。そうですか私が、女子校生ですか。ふふっ、ふふふ、ははは、あー面白かった。」
「何かおかしいことあったか?」
急に笑い出した彼女を見て思わず聞いてしまった。学生じゃないのか?まあ、平日に私服で病院にいるから訳有りではあるんだろうが見た目は高校生ぐらいだろう。
「いやーすみません。なんでもないですよー?で、昨日の事でしたね。娘さんを救う方法ですね。結論から言うとありますよ。ただ…、」
「ただ?」
先程までの軽い感じから一転、急に彼女の雰囲気が変わった。
「あなたに命を捧げる覚悟があるならですけど。」
まるで首元にナイフを突きつけられたかのようにゾクっとした。それに気圧されてしまったがなんとかふんばる。そして声を絞りだすように答えた。
「か、覚悟ならある。どうせミサトが死んだら俺も死ぬんだ。俺が死んでミサトが助かるならこの命使いきってやる。」
そう答えた俺を見るなり、彼女の雰囲気が戻った。
「ふふっ、じゃあ決まりですね。では具体的にどうするかですけど、これは私の能力が関わってきます。」
「能力?」
「ええ、私には他の人には無い能力があるんですよ。自殺した人のその時点で残っている寿命を他の人に譲渡できるっていう死神も真っ青な能力が。」
俺はそれを聞いて、はぁ?となった。いや、声にも出してしまった。もっと現実めいたものだと思っていた。例えば俺の内臓を無理やりドナーに適合できるようにするとかいうそう言う感じのことを想像していた。しかし、実際に告げられたのは子供の絵空事のようなものだった。想像していたことから離れ過ぎていて理解するのに時間がかかる。だが、俺は彼女を信じると決めた以上、理解の範疇を超えていたとしても受け入れる事にした。
「つまり、俺に自殺しろということか。」
「簡単に言うとそういうことです。いやー理解が早くて助かります。たまにいるんですよね。信じないで立ち去ってしまう人。」
「あえて、たまにというところには触れないでおくとして、まあ、俺はお前を信じると決めたからな。」
「もうー、嬉しいこと言ってくれますね。惚れませんけど。」
「だから口説いてないし、なんで俺がふられたことになってんだよ、ったく。」
相変わらず軽口が減らないやつだ。人に死ねと言っておきながら表情一つ変えやしない。さっきの言葉、たまにと言っていたってことは彼女にとっては日常ごとなんだろう。ただ、少し胸につっかえていた重いものが取れた気がする。わざと俺に気を使って明るくしてくれているのだろうか。いや、それはないか。我ながら自意識過剰だ。そんなことを考えていると、彼女が口を開いた。
「言い忘れてましたが、この能力は注意点があるんですけどそれを説明しますね。まず1つ目なんですけど、寿命の譲渡する際の交換レートが存在しまして、自殺した人の残った寿命5年につき1年分しか譲渡出来ないんです。5年に満たない分は切り捨てされます。」
「じゃあ俺の場合は何年なんだ?」
「それ聞いちゃいます?いや分かるんですけど後悔しますよ?」
確かにそうだ。人の残り寿命が分かるなんて彼女は一体…。まあ、今はそんなことはどうだっていい。
「ああ、教えてくれ。」
「ではでは教えちゃいますね。あなたの寿命は〜、デレレレレレレー、じゃん!42年です。今あなたは38歳ですから丁度80歳まで生きられるんですね。いやー長生きですねー。っと、それはさておき、あなたがミサトさんに渡せる寿命は8年ということになります。」
命を掛けても8年しか渡せないという余り短さに驚いた。
「8年か…。思ったより短いな。ミサトが今17歳だから25歳ということか。」
「いやいや長いほうですよ。1年しか渡せないなんてザラですから。どうします?やめます?」
まあ、寿命を渡せる事自体が反則みたいなものだ。
「いや、やるよ。寿命も知っちゃったし。」
「ふふっ、そうですよね。ミサトさんが死んだら奥さんにも先立たれたあなたには何もないですからね。」
ピリッとした空気が流れた。今回は俺から放たれたものだったが。俺はここで雰囲気に流されそうだったが疑問を覚えたのだ。なぜ彼女は死んだ妻を知ってるのか。もしかして妻の死に関係してるとか?そんなことを考えるといてもたってもいられずに強めにでてしまった。
「おい、どこまで知ってんだ?何故それを知ってる。」
病室の時のように聞き迫った俺だったが彼女もまた同じように笑いながら答えた。
「いやはや、気分を害してしまったなら謝ります。ごめんなさい。何故知っているかというと、これも私の能力の一つなんですが、相手の過去を見ることができるんですよ。そして本来の確定している未来も。寿命が分かるのは未来視のせいですね。」
過去や未来が見えるのは驚いた。確かにその答えなら先程までの謎も解ける。結局彼女が何者かまでは分からないがひとまずはそれでいいだろう。
「すまない。少し強く言い過ぎた。謝るよ。ごめん。」
「これはもしやツンデレってやつですか?いやーごめんなさい。オジサマのツンデレはちょっときついです。ごめんなさい。」
「だからお前なぁ〜!」
俺も謝っただけだっていうのに。こんな扱い。本当に彼女は読めない人だ。屋上にいる二人の間にさわやかな風が駆け巡っていった。
謎の少女の能力はちゃんとしたものではありません。詳しくは男と義娘が終わった後のお話で明らかにするつもりです。
読んで頂きありがとうございます。