男と義娘 No.4
目が覚めても何も変わらなかった目の前の状況に少し期待していた分、反動が大きかった。それに、座ったまま寝ていたせいか腰が痛い。不思議とお腹は減らなかった。だが様子を見に来た看護師さんに顔色が悪いから何か食べた方がいいと言われた。
トイレで鏡を見ると我ながら酷い顔だった。髭が伸びきっていて、目の下にはくっきりと隈が出来ている。頬もなんだかやつれていた。もういっそのことこのまま死ぬのも悪くないかなぁと思ってしまう。ミサトだけじゃなく妻との約束すら守れなかった俺に生きている資格なんかないんだし。ああそうだ、ミサトが死んだら俺も死のう。残りの人生、生きているだけ無駄だ。
そんなことを考えていると急に昨日の事を思い出した。あれは夢だったのだろうか。夜に現れたあの少女は幻だったのか。少女の言った言葉が頭を駆け巡る。
「娘さんを救いたくありませんか?」
何度も何度も脳内で呪いのようにリピートされる。その結果、俺はおかしくなってしまったのか、もしかしたらと思ってしまった。あんなの子供の戯言に決まっている。そう思っても少女の笑った顔が言葉が頭から離れない。何もしなければ死んでしまうなら僅かに光るその希望にかけてみようと思った。そう決心してから俺の行動は早かった。少女を探し始める。どこにいるかなんて分からない。だけどなんとなく見つかる気がした。本能が告げる。あそこにいると。そして見つけた。白いワンピースに赤いリボンの付いた麦わら帽子を被り首元には空色のスカーフが巻かれた少女を、病室の屋上で。
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