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第六小節

響き渡る轟音、それが機械の発するものだとアーサーが気づいたとき、それは彼女たちの前に姿をあらわした。



『発進!ロールストロンガー!!!!』


それは巨大なロール5世をかたどったロボットであった。因みに頭部には彼の髪型のロールを模したミサイルらしきものがついており、カボチャパンツをはいている。かっこいい要素は何一つ見当たらない。

アーサーはそれを見てものすごくしょっぱい顔になった。

「…うわー…」

ドン引きである。

しかし、そのロボの姿に目を輝かせている者が約一名いた。

「か、かっこいい!!」

もちろん勇者であった。その声にぎょっとする魔王。

「マジかよ!?趣味悪っ!!」


地上でのそんなやり取りを知ってか知らずかロボの中にいたロール5世はスピーカーを使って話し出した。

『魔女よ、貴様の悪運もここまで!このロールストロンガーで鉄槌を下してくれるわ!』

「…国王陛下、こんなガラクタ…じゃなかった鉄くずにどんだけ税金使ってんですか…」

アーサーが冷ややかな声でたずねる。国王と魔女の温度差はおそらく100℃近い。

『ガラクタも鉄くずも似たようなものじゃろ!言い直した意味ないよね!?…ぜ、税金?何のことだかわからぬぞよ…ゴニョゴニョ…』

かなり使い込んでいるらしく、最後の方は口ごもってしまった。

それを聞いていたジークが前に進み出た。

「陛下!税金ってどういうことですか!?つーかオレにこいつらを倒してくれって頼んできたのに何で兵士やロボで奇襲してきたんですか!?」

すると、ロボの中の国王は面倒くさそうに答えた。

『あぁ、主は奇襲の為の囮だったのじゃ。最初から魔女を倒せるとは思ってなかったぞよ〜』

「なんじゃそりゃぁぁ!!!!」

つまり、勇者をけしかけ時間を稼いでいる隙に兵士による奇襲とロボの発進の準備をしていたのだ。


「こんなアホ勇者、どこのお馬鹿さんが雇ったのかと思えば…やっぱりそういうことか…」

アーサーは薄々感づいてはいたものの、このダサいロボは予想外であった。

『ふん、なんにせよこれで終わりじゃ!覚悟せい!!』

そういうと国王はミサイル発射ボタンをポチッと押した。

ロボ頭部のミサイル6発が一気にアーサーたち目掛けて発射される。

「!!…ちっ味方ごとか!」

アーサーは舌打ちをすると逃げずに魔法でガードしようと呪文の詠唱に入った。しかし、間に合いそうも無い。

「ちょ、陛下ぁぁー!!??私たちもいるんですけどぉぉぉー!!??」

可哀想な兵士たちが驚愕と絶望の声を上げる。頑丈な勇者や魔王はともかく普通の人間である彼らはミサイルを食らったらお陀仏なのだ。


呪文を詠唱しつつも「あ、ダメだなこりゃ…」と思っていたアーサーの前にランスロットが立った。

「さがってろ」

そう言うとランスロットはミサイルに向けて軽く手をかざした。


チュドォォォォォン!!!!!!


ミサイルは彼らに当たることなく、空中で爆発する。

『…え?あ?あれ?』

もう勝った気でいた国王はその状況を理解できていないようだ。

だが、理解する前にアーサーの攻撃魔法がロボを直撃する。

「食らえや!!ウサきちサンダー!!!!」

『ひぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!』




「この!アホ王め!」

「ひぃぃぃすみませんでしたぁぁぁ!!」

街の広場では税金を無駄遣いした国王を市民が取り囲んでいた。

国王は顔にらくがきされたり、大根で殴られたりしながら必死に謝っている。

アーサー、ランスロット、ジークはその様子を遠巻きで見つめていた。

「…あのロール野郎あれでいいのかよ?」

少し不満げに聞くランスロットにアーサーがにっこり笑って答えた。

「まぁ私の出る幕じゃないからね。国民に任せるよ」

そのやり取りを聞いていたジークがおもむろに口を開いた。

「…さっき聞きそびれたけどお前はなんで城を襲ったりしてるんだ?」

最初は悪人と決め付けていたアーサーが兵士をかばおうとしているのを見て、本当に彼女が悪人なのかジークはわからなくなっていた。ならば本人の口から色々聞いて確かめたいと思ったのだ。

その問いに彼女は一瞬意外そうな顔をしたが、彼女がウサきちと呼んでいたぬいぐるみを取り出すと話し始めた。

「…このぬいぐるみはね、祖父の形見なんだ…」


彼女の祖父は偉大な魔術師で、ある大国に仕えていた。

しかし、戦争により祖父はかえらぬ人となってしまった。

その祖父の書斎を片付けていた時に彼女は一つの手紙を発見した。

その手紙には、以下のことが記されていた。


・仕官中に超強力な魔術兵器の開発に成功したが、それを破棄したこと

・その兵器の情報を盗み、秘密裏に作っている国があったこと

・その兵器を見つけ出し破壊して二度と作らせないで欲しいこと


「…戦争が終わって、どこかに隠してあるであろうその兵器を探して渡り歩いてるってわけだよ」

アーサーは少し寂しげに笑った。

ジークはその顔を見てある決意した。

「よし、わかった!オレもついていく!!」

「はぁぁ!?」

爽やかに言い放った勇者の言葉に魔王が呆れかえる。

だが、ジークの心は既に決まっていた。城を襲う行為自体は許せるものではないが、彼女らを「悪」と決め付けるのはまだ早い気がした。そこで自分もついていって見極めようと思ったのだ。

「お前なぁいいわけねぇだ…」

「うん、別にいいよ」

「えぇぇぇぇー!!??」

当たり前にアーサーが断るものだと思っていたランスロットは絶句した。

だが、次の瞬間彼女が取り出したものを見て納得がいったのだった。

「まぁ、その前に一休みしない?」

彼女の手にはスポーツ飲料が握られていた。




「まったく…お前ほんと甘いよな…」

次の国へ向かう道を歩きながらランスロットはため息をついた。

なんだかんだ言ってアーサーは誰も殺さずに目的を完遂しようとしている。

昼間の勇者との戦いだって、「翼をしまえ」と言ったのは相手を殺させないためではないのか。

先ほど勇者に渡した飲み物だって睡眠薬しか入ってなかったようだ。

「お互い様だよ。君だってあの時私を助けてくれたじゃない…見捨てれば契約も無効で自由になれたのにさー」

そう言って意地の悪い笑みを浮かべた彼女はランスロットの顔をのぞきこむ。

ふいっと顔をそむけてランスロットはぶっきらぼうに言った。

「…こんな所で死なれてもつまんねぇからな…」

「え?何?ランってもしやツンデレなの?」

「違ぇぇぇぇ!!!!」

ムキになって否定する魔王に魔女はひとしきり笑ったあと、感謝の眼差しをむけた。


私の油断が招いたことなのに君は助けてくれた。

本当に感謝してる。

だから…


「このご恩は五分後まで忘れません!!」

アーサーは親指をびっと立ててこう宣言した。

「期間短けぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」



一方その頃トーン国の広場の端では…

「…ぐーむにゃむにゃ…」

顔に散々らくがきをされた勇者がすこやかな寝息をたてていた。

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