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二話

人類はその精神レベルにより五つの階層に分けられるという。

消えた親友を取り戻すため、謎の男と協力することになる。

聞いたことも無い組織がとんでもない計画を実行に移していた。

どうしようもなく平凡で何の取り柄もない29歳崖っぷちの主人公は親友を取り戻すことができるのか……?

 坂本と連絡を取らないままもう二週間以上たってしまった。

 何かがすっぽりと抜け落ちたような、変な感覚。

 まるで世界中から背を向けられたような気分だ。

 会社にも、会社の外にも坂本以外に友達なんていない。

 ただ俺のことを知っている人がいて、その人のことを俺もただ知っているというだけだ。


 窓の外の景色が移り変わっていくのを見ていると心が落ち着く。

 数えきれないほどのビル群。

 人々の営み。

 光が過ぎ行くのを見ていると、現実離れした何かを感じることができた。

 時々窓に映る自分の顔が目に入り、それだけが不快だった。

 改札を出ると少し湿った夜風が首筋を撫でる。

 駅前でいつも見かける路上ライブ。

 何を歌っているのかわからないが、嫌な気はしなかった。

 この人はどうしてこんな時間にこんなところで歌っているんだろう。

 立ち止まる人などだれもおらず、ただ通り過ぎる人々を見ながら何を思っているんだろう。


 孤独は毒だ。

 誰とも何かを分かち合うことが無いというのは、じわじわと身体を蝕んでいく遅効性の毒のようだ。

 自分の本来の性質までをも見失ってしまう。

 人との関わりの中で見つける見つける自分自身の優しさや思いやり、温かさを。

 人生はスープみたいなものだ。

 何もしなければただ無味無臭の水でしかないが、自分次第で材料をそろえて好みの味付けにもできる。

 けれどそのスープを温めてくれるのは他人でしかないのかもしれない。

 俺は死ぬまで無味無臭の冷たいスープのままなんだろうか。

 このままじゃいけない。

 何か変えたい、そう思いなら日々の仕事に追われ忙殺されていった。


「いいよ、今回は仕方ないから」

 柴田さんは上司の中でも接しやすく話も合うし、できればもう少し仲良くなりたいと思っていた。

「すいません」

 軽く頭を下げる。

 今日の仕事のことも話したいし、飲みに誘ってみようかな。

「あの、今日ってこのあと……」

「美咲ー!田辺とチーフと飲みに行くぞ」

 俺の話が聞こえているのかいないのか、柴田さんは少し離れた席の俺の後輩に言った。

 美咲というのは新人の女の子。

 田辺は俺の同期だ。

 隣の部署の。

 俺は誘わないのに隣の部署の田辺と新人の美咲を誘ってチーフと飲みに行くらしい。

 頭の中に次々に出てくる疑問が鳴りやまない。

 こういうことは始めてじゃなかった。

 あいつらと俺は違う。

 いつもそうしてやり過ごしてきた。

 ふと坂本を思い出した。

 どうしてるだろうか。


 表面ではうまくやってるように見せていた。

 同級生と会う時も、ただの知り合いに会う時も。

 家族にだって。

 でも現実はどこにも居場所が無い。

 誰かに理解してほしいのに、誰にも知られたくなかった。

 思い鉛を抱えて半ばやけっぱちで行ったこともないバーに入った。

 いつもの立ち飲み屋じゃダメだった。

 どこか別世界に行きたかった。

「いらっしゃいませ」

 誰かに見つけてもらいたくて、誰にも見つかりたくない情けない俺を間接照明が温かく受け入れてくれた。

 ぼんやりカウンターで飲む。

 明日のことなんて何も考えずに。

 カウンターには俺のほかに黒いスーツのサラリーマンと若いカップルが座っていた。

 赤いワンピースの女性が目に入った。

 派手な服だから……じゃなかった。

 目が離せない、吸い込まれるように俺は彼女を見つめていた。

 透き通るような白い肌の、とてもきれいな人だった。

 隣には彼氏と思われるスーツの男が座っているがどうも様子がおかしい。

 喧嘩だろうか。

 言い争いをしているように見える。

 彼女が席を立ち店を出ていってしまい、一緒にいた男が慌てて追いかける。

 へぇ、ドラマみたいだ。



「必要ないわ、これ以上私にかかわらないで」

 赤いワンピースの女性は不快感をあらわにした表情で男に言い放った。

「二度と戻れなくなっても知らないからな」

 男はそう言い放って街に消えていった。

 何を話していたんだろうか。

 気づけば俺は二人を追いかけて店の外に出ていた。

「あのっ……!」

 やっと絞り出した声。

 俺の呼びかけに怪訝そうな顔でこちらを見ている彼女。

 口を突いて出た言葉がこれだった。

 彼女の表情は驚きに変わった……いやこの表情は恐怖も感じているのかも。

「大丈夫ですか⁈」

 自分でも何を言っているのかわからなかった。

 何が起きてもさして驚かないし、青春とか無縁だったし、誰かを好きになることなんてそもそも無かった。

 そんな自分がこんなことするなんて。

 感情がここまで動いたのは初めてだった。

 彼女は何も言わずに去っていった。

 自分から誰かに声をかけたことなんてなかったのに、こんな形で終わってしまってなんだかとてもショックだった。

 急に現実に戻された脳ミソが夜の街の喧騒を耳に受け入れ始める。

 文字通り穴があったら入りたかった。

 俺はまた間接照明に包まれに店に戻った。

 席に戻ると置いてあったはずの荷物が全部無くなっていた、何もかもだ。

 まさに急転直下。





読んで下さりありがとうございます。

これは主人公の精神レベルが試されるお話です。

誰にも愛されず、誰も愛したことのない寂しい人生を送ってきた主人公が初めて強い感情に突き動かされます。

本当に人類は精神レベルごとに振り分けられたほうがそれぞれ生きやすいのではないか?

と本気で考えた私の計画書でもあります。

続きも読んで下さると嬉しいです。

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