王様を欲しがるカエル(めちゃ強い)
2018年の冬の童話祭に出すつもりの作品でした。遅くなり申し訳ありません。
「蛙!豪波!」
蛙のピョン太が拳を突き出すと、拳の先から出た衝撃波が、空を飛んでいた鳥の群れを全滅させました。
どすん!どすん!
鳥たちが落ちる度に、地面が揺れます。
当然です。
だって、この鳥たちは、象を食べるというロック鳥なのですから。
「むぅぅぅぅぅぅ!他愛無いわ!」
ピョン太は、不満を隠さずに言いました。
ピョン太はオタマジャクシからカエルになって数年の雄です。
その腕はたくましく、岩を砕く事も、さっきみたいに衝撃波を放つ事も出来ます。
足だって立派です。
体を支える二本の足は、音速で駆ける事も出来、力加減を間違えると雲の高さまでジャンプしてしまう事だってあります。
……ぶっちゃけ、蛙かと聞きたくなるかもしれませんが、ピョン太は立派な蛙です。
さて、蛙の定義を揺るがしかねないピョン太ですが、今日は近隣を荒らすと噂のロック鳥の群れを退治しに来ていたのでした。
なんで、退治しに来たのかというと、ここら辺の住民に頼まれたとかではありません。
むしろ、住民たちはロック鳥を刺激しないでくれと、ピョン太を止めようとしました。
ですが、ピョン太は大声を出して住民を怯ませると、我が道を行かんと言わんばかりに、ロック鳥の群れが居る方に向かっていきました。
では、何故、ロック鳥の挑んでいったのでしょうか?
それをピョン太に尋ねると、彼はこう答えるでしょう。
「我が力を試したいからだ……」と。
そう、ピョン太は力試しに、村人の制止を振り切って、ロック鳥に挑んだのでした。
ちなみに、ロック鳥が逃げた場合とか、周囲の生態系への影響とかは、彼は考えてません。
彼はどこまでも、自分の力試しにしか興味がないのです。迷惑な話です。
そんなピョン太は、自分が仕留めたロック鳥を、遠慮なくさばいていきます。
普通の蛙は虫とかを食べますが、ピョン太は好き嫌いはしないのです。
好き嫌いというレベルを超えてるかもしれませんがしないのです。
さて、ロック鳥をさばいていたピョン太ですが、突然、使っていた刃物を投げました。危ないですね。
空を切る刃物。
それを指で受け止める者が居ました。
ピョン太の友達、ピョン吉です。
「腕はなまっておらぬようだな。ピョン吉」
「お前もなピョン太」
けろけろと笑いあう二人。
ちなみに良い子は友達に刃物を投げてはいけません。
「して、何用だ?」
「うむ、長老がお呼びだ」
「長老が?」
「我ら全員に話があるらしい」
「なんと!我ら全員を招集とは!」
驚くピョン太。
ピョン太の仲間たちは基本的に世界各地を旅しています。
そんな彼らを全員呼び集めるのは余程の事なのです。
「むぅ……、戦か!」
叫ぶピョン太。
そう言う発想が出る辺り、物騒ですね。
「かもしれぬ」
うなずくピョン吉。
どうやら、彼も物騒な用です。
「こうしてはおれぬな。ピョン吉、急ぐぞ」
「ああ、ピョン太」
そう言うと、二人は消えました。
実際には消えたわけではなく、超高速でその場を移動したために消えたように見えるだけです。
さて、さばいていたロック鳥でしたが、置き去りです。
ですが、後で様子を見にきた近隣の住民たちが美味しくいただいたそうです。
ピョン太たちは自分たちが生まれた池にたどり着きました。
そこには、ピョン太の仲間たちが集まり、話し合っていました。
「そうか、お前はサイクロプスを……、俺はミノタウロスを倒した」
「エクスカリバーを折ったと聞いたぞ」
「城一つ落とした?ははは、まだまだだな。国一つ落としてみよ」
ピョン太は皆元気だなとしか思いませんでした。
聞こえてくる会話が物騒だとかは微塵も思っておりません。
「静まれい!長老のお話である!」
ぴたりと会話を止めた蛙たちの前に現れたのは、一匹の蛙です。
この蛙こそ、ピョン太達の師であり,蛙たちの長である長老です。
二足歩行をし、筋骨たくましい体をしている蛙かどうか疑わしい所とかが、ぴょん太達と一緒です。
「うむ、皆揃うとるようだな」
長老が辺りを見回して言います。
「長老!我ら全員に話があるとお聞きしました!」
蛙の一匹が聞くと、長老は頷きました。
「そうじゃ、実はな……、我らの王を決めようと思うておる」
蛙たちは長老の言葉にざわつきました。
「王?」
「王だと?」
「偉くてふんぞり返ってるあれか?」
「それなら、俺は50人は城ごと吹き飛ばしたが……」
時々、物騒な言葉を交えながらの騒めきは、「聞け」という長老の言葉で収まりました。
「王とは我らを統べる者……。我らの意見をまとめる者じゃ」
「それならば長老!あなたがいるではないですか!」
長老は首を横に振ります。
「わしはもう長くはないし、皆を統べられるとは思うとらん。
それに王とは、我らだけでなく色々な者にそうと認められる者でないといかん」
「長老!何故、王をお決めになるのですか!」
「うむ、近頃、近隣に住まう者たちが我らを危険に思うておる」
「なんと!では、戦ですか!?」
危険発言に長老は首を振って答えました。
「戦はせぬ」
「何故!?」
「我らを危ぶむ者たちとの戦も多くなってきておる。
このままでは、我らは孤立し、疲弊し、いずれは全滅しよう。
皆も気付いておるのではないか?旅先で我らを避ける者たちが増えてきている事を……」
蛙たちは、視線を交わし合い、何も言いませんでした。
どうやら心当たりがあるようです。
長老は続けます。
「そこで、わしは近隣の者たちに我らが危険でない事を示すために、秩序を重んじる事を示そうと思うておる。
じゃから、皆や近隣の者たちに認められる王を立てる事にしたのじゃ」
落ち着いた口調で語る長老。どうやら、彼は理性的な蛙のようです。
「長老!では、我らや他の者に認められる王をどのようにお決めになるのですか!?」
「うむ、わしは神に伺いを立ててみようと思う。
神に選ばれた者ならば我らだけでなく様々な者に王と認められるじゃろう」
「おお」
「なるほど」
「神に認められたなら良いだろう。何が良いのかわからんが」
「我ら以外の者は崇めているしな」
「しかし、だいぶ偉いと親から聞いている」
「なら、納得だ」
頷き合う蛙たち。彼らにとって神の存在はあまり重要ではないようですが、偉い存在という認識はされている様でした。
そんなこんなで、蛙たちは神に王を決めてもらう事にしたのでした。
所変わって、ここは天界。
そこで、小さな女の子がうんうん唸り、頭を抱えていました。
金髪に碧眼の、この小さい可愛らしい女の子は、蛙たちの住む地方を収める神様です。
こんな女の子が?と疑問に思うかもしれませんが、深く考えてはいけないのです。
「大丈夫ですか?神様?」
神様に使える天使が、気遣いの言葉をかけました。
こちらも金髪に碧眼です。だけど、神様より年上の外見で、スタイルも立派です。
「ええ、大丈夫よ。ありがとう」
神様は唸るのを止めて、天使に笑いかけました。
ちなみに内心では、自分もこれ位スタイルが良かったらなーとか考えています。
そんな事は露知らず、天使は質問しました。
「もしかして、例の蛙達ですか?」
「ええ、そうよ」
神様はため息をつきました。
神様の悩み事というのは、ぴょん太たちの事のようです。
「また、何か騒動を?」
「ロック鳥を全滅させたり、伝説の聖剣を折ったり、やりたい放題よ……」
「はぁ……、数代前の長老からああなったんでしたっけ」
「そう……。のどかに暮らしてた蛙達の中に、自分たちを鍛えようという蛙が現れて……」
「それで、武者修行の旅を始めるようになって……」
「それが、どういう訳かああなったのよ」
はぁ、とため息をつく神様と天使。
そんな時でした。
「頼もう!!」
「「ひゃああああああああああ!?」」
突然の大声に驚く神様と天使。
辺りを見回すと、地上の様子が見れる鏡から聞こえてきたようでした。
「ちょっと!なんなのよもう!」
文句を言いながら、鏡をのぞき込んだ神様は、自分を射殺さんばかりのたくさんの視線と目を合わせました。
「ひゃ!」
悲鳴を上げそうになりながらも、深呼吸をして、神様はこらえました。
神様は威厳を示さないといけないので、簡単に悲鳴を上げてはいけないのです。
大変ですね。
とにかく落ち着いた神様は、改めて鏡を見て、ひくりと顔を引きつらせました。
そこに映っていたのは、今、自分に頭を抱えさせている蛙達だからだったのです。
内心、関わりたくないなと思いつつも、神様は威厳を込めた声で尋ねました。
「何ですか?蛙達よ」
「我らの王を決めていただきたい!」
「王?何故、王を決めたいのですか」
「それは、儂がお答えします」
神様の問いに、長老が答えました。
長老の答えを聞いた神様は「わかりました」と答えました。
「では、数日、お待ちなさい。
あなた方の王に相応しい者を向かわせましょう」
「ははぁ!」
長老の返事と共に、鏡から蛙達の姿は消え、そして、神様は肩をふるわせ始めました。
「……ふふふふ」
「……神様?」
天使が訝しげに、声をかけると、神様は天使の方を向きました。
その顔には、ものすごい満面の笑顔が浮かんでおりました。
「チャンス!チャンスよ!これを機に蛙達を服従させましょう!」
「蛙たちを服従……。ああ、我らの言う事を聞く王をあてがうのですね」
「そう、そうよ!そうすれば、蛙たちも大人しくなるはずよ!」
神様はこぶしを握り、力説します。
天使はそんな神様の様子を見ながら、(ああ、神様もずいぶん疲れていたのだな)と思いました。
「わかりました。では、信仰に厚い者を見繕っておきましょう」
「ええ、頼むわ!」
神様は満面の笑顔を浮かべておりました。
ひと月が立ちました。
神様は、口の端を引くつかせ、鏡を見ていました。
鏡には、蛙たちが並ぶ姿が映っておりました。
「それで、何故、私が選んだ王を追い出したのですか?」
神様は、額に血管を浮かび上がらせながら、蛙たちに問いました。
天使は神様の後ろで、心配そうに事の成り行きを見守っています。
「追い出してなどおりませぬ」
蛙たちの前に出ていた長老が首を振りました。
「ただ、力試しをしただけの事」
「それで、半殺しの目に合わせたと?」
神様はかなり感情を抑えた口調で、問いました。
そう、蛙たちは神様の選んだ王様に力試しを行い、半殺しの目に合わせたのです。
ちなみに、半殺しの目にあった王は、隠遁し、美しい女性と結ばれ、幸せな家庭を築いたそうです。
それはさておき。
「我らにとっては、軽い試練だったのですが」
「蛙たちよ」
「はい」
「王様は敬うものです。攻撃してはいけません」
「なんと!我らの間では力試しとして不意打ちし合っておりましたが……」
驚く長老。どうやら、長老も物騒なカエルのようです。
「ううむ。では、攻撃はしませぬ。次なる王をお決めください」
「良いでしょう。では、しばらく待つように」
「ははぁ」
鏡から、蛙たちの姿が消えると、神様はしばらく俯いていましたが、やがて、顔を上げて叫びました。
「なんなのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
力の限り叫んだ神様は、息を整え、天使の方を向きました。
「次よ!次は信仰に篤くて強い者を選びなさい!」
「はい、わかりました」
天使は、「神様も大変だなー」と他人事のように思いながら、次の候補者を探し始めました。
そして、また一月経ちました。
「蛙たちよ」
神様は柔らかな微笑みを浮かべています。
ただ、額には血管が浮かんでいますが。
「どうして、また、王を追い出したのです?」
「追い出しておりませぬ」
鏡に映った長老が、首を横に振りました。
「ただ、返り討ちにしただけの事」
「そうですか……」
神様の唇がひくりと引きつり、神様の背後で天使が冷や汗を流しました。
「しかし、聞いた話によれば、あなた方は王の命令に従わず、暴れまわり、それに怒った王を殴り飛ばしたそうでは?」
「暴れまわってなどおりませぬ」
長老はまた首を振り、重々しく告げました。
「ただ、我らに修行をするなと無理を言うので、従わなかったまでの事」
「それで、言う事を聞かせようとした王を殴り飛ばしたと?」
そう、蛙たちは、暴力行為を見かねた王に咎められ、それに従わず、言う事を聞かせようとした王を逆に殴り飛ばしてしまったのです。
ちなみに、殴り飛ばされた王は、記憶を失い、美しい女性と結ばれたそうです。めでたいですね。
「蛙たちよ」
「はい」
「王には従うものです。そして何度も言いますが攻撃してはいけません」
「なんと!いくら無茶な命令でも聞けと言うのですか!?」
「私はそんな王を選びません。ちゃんと王の言う事を聞きなさい」
「ううむ、わかりました。では、次なる王をお選びください」
鏡から蛙の姿が消えます。
そして、数秒経ちました。
「うがぁあああああああああああああああああああああああああ!!」
神様は顔を上げて叫びました。
ついでにその影響で、神様の治める地域で雷が発生したりしました。
「なんなのよ!なんなのよ!あの蛙たちは!」
神様は地団駄を踏みながら、半泣きになる神様を天使はどうどうとなだめました。
そんな時です。
「おいーっす」
軽薄といった声が神様にかけられました。
神様と天使が、そちらを向くと、そこには軽薄そうな若者が居ました。
「……何よ、兄さん」
神様は息を切らせながら言いました。
「いやいや、なんか隣がうるさいから様子を見に来たんだけど、なんかあった?」
どこか軽い調子で答える若者は、神様の兄です。
神様の治める土地の隣の地域を管理している神様です。
紛らわしいので、神様(兄)と表記しましょう。
「私から説明します」
神様を落ち着かせた天使が、これまでの経緯を説明しました。
神様(兄)は、腕を組みながら話を聞き、説明が終わるとやがて一言告げました。
「従わせるの無理っぽくね?」
「言わないでよ!」
神様が半泣きになりながら叫びました。
「だってチャンスよ!今まで治安を荒らしまわっていた蛙たちを大人しくさせる好機なのよ!」
「いや、あの蛙たちには俺んところも被害にあってるから気持ちはわかるけどさ」
頭を掻きながら、神様(兄)は言いました。
「仮にあの蛙たちを従えさせられる王がいたとしてもさ、あの蛙たちの修行にかける熱はすごいって聞くぜ。
それを邪魔するのっていうのも不満がたまるだろうし、従わない奴も出るんじゃないか?」
「じゃあ、どうするってのよ!」
「んー、俺に考えがあるんだけどさ」
神様(兄)は自分の考えを話しました。
神様は、それを聞いて一言言いました。
「うまくいくの?それ?」
後ろでは天使も、うんうん、と頷いています。
それに、神様(兄)は軽い調子で告げました。
「まぁ、うまくいかなきゃ、また、俺も色々と考えるからさ。とりあえず試してみたら?」
さて、ここは地上の神を祀る神殿。
普段なら人がにぎわうここも、今はしんと静まっています。
それは、神殿の中に蛙たちが入ってきたからでした。
近隣で危ないと噂の蛙たちにおびえ、皆、逃げてしまったのです。
さておき、蛙たちは神の声を聴くために、神と話すための鏡の前で長老を一番前に置き、整列していました。
ただ、整列しているだけなのですが、妙に殺気を感じさせる所が怖いですね。
「む、神からのお達しじゃ」
長老がそう言うと、鏡が光り始めました。
そこで、今までなら神様の声が聞こえるのですが、今回は違いました。
どすんと、鏡の前に彫像が置かれたのです。
「む?」
「なんだ、あの像は?」
「むぅ、ここからなら壊せるか?」
いつもと違う状況に蛙たちは戸惑いを隠せません。
「静まれ、神からの説明があるじゃろう」
長老の声に蛙たちの騒めきが静まると、神様の声が響きました。
「蛙たちよ。これはあなたたちの新たなる王が与えたものです」
「何ですと?」
長老の声に構わず、神様は続けます。
「これより美しい像を作りなさい。さすれば、新たなる王は姿を現すでしょう」
そこで、鏡からは光が消え、後には像だけが残りました。
蛙たちは呻きました。
「ううむ、これより美しい像を作れ?」
長老は呻きました。。
ほかの蛙たちも同様です。
そう、蛙たちは武術の修行ばかりしてきたので、美術の事などわからなかったのです。
蛙たちはしばらく戸惑っていましたが、やがて長老が言いました
「皆の者、これは新しい王から試練との事。新しい王の考えは分からぬが、試練にしり込みをしては、我らの名折れ。
ならば、やってみようではないか」
そして、ひと月が立ちました。
蛙たちの住む池、そこは、今では石を削る音が響いてます。
そこで、ぴょん太は自らも石を削っていました。
「むぅ」
手を止め、腕を組むぴょん太。
そこへ声がかけられました。
「調子はどうだ?ぴょん太よ」
ぴょん吉です。
彼も手にのみを持っており、石を削っていたようです。
「むぅ、ぴょん吉か……。なかなかうまくいかぬ。そちらはどうだ?」
「俺もだ。ただ、石を削るというだけなのに、こうも難儀するとは」
「むぅ、砕くなら簡単なのだが……、形を整えるのがこうも難しいとは……」
「確かに、ほかの者たちも同じようだ」
腕を組み、唸るぴょん吉。
どうやら、蛙たちの像作りは難航しているようです。
「しかし、長老の言った通り、これも試練。ならば、挑んでみるのも悪くない」
「そうだな、では、俺は戻ろう」
ぴょん吉は去り、ぴょん太は石を再び削り始めました。
それを天界から神様と神様(兄)が見ていました。
「どうやら、うまくいったみたいだな」
「むぅ……」
気楽な様子の神様(兄)とは対照的に、神様は不服と言わんばかりに唇を尖らせていました。
その様子を見ていた天使も、安堵した様子で言いました。
「しかし、本当に良かったですね。
蛙たちの修行にかける熱意を別の方向に向けるという考え」
「まぁな。ただ、修行を止めるように言っても蛙たちは素直に言う事を聞かんだろうし、
だったら、蛙たちの熱意を他に向けさせた方が良いんじゃないかと考えたんだが、うまくいって良かった良かった」
そう言って、天使と神様(兄)は笑い合いました。
しかし、神様は不機嫌そうにぽつりとつぶやきました。
「良くないわよ」
「おいおい、蛙たちの被害が無くなったのに何が悪いんだよ?」
「ええ、それは嬉しいわ……。でもね……」
神様はそこで言葉を切り、叫びました。
「なんで!私の!昔の!恥ずかしい過去になった!彫像を!使うのよ!」
「いや、だってなぁ……」
神様(兄)は頭を掻きながら、答えました。
「ほかの所から、像を借りるにしても時間なかったし、あの蛙たちの所に貸し出すとなると、大事な像を壊されるかもと警戒されたし……。
何より、下手に整った像を与えると、更に整った像を作られたら、蛙たちも美しいと思っちまうかもしれないし……。
だったら、抽象的で理解が出来ないような、美の基準がどこにあるかわからない物がちょうど良いと思ったんだよ」
「何が理解できなくて、美しいかどうか理解できない物よ!確かに昔は得意になって展示とかもしたわよ! でも、反応いまいちだったし、微妙な顔をされたしで、
自分でも後々、恥ずかしくなって封印してたものをどうして引っ張り出すのよ!」
「……まぁ、そこは正直すまんと思う」
神様(兄)は気まずげに答えました。
その後も、神様は不満を言いまくっていましたが、神様(兄)にお菓子をたくさんもらい、機嫌を直したのでした。
ちょろいですね。
さて、その後のお話ですが、蛙たちは彫像作りに熱中し、近隣に被害を出すこともなくなり、何代か代替わりすると、
修行よりも彫像作りばかりするようになりました。
そして、多くの名工を多く輩出し、近隣との関係も良好になったのでした。
めでたいですね。