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ドラゴンと王子

どらごんとおうじ

作者: 紅葉

王子は自分が嫌いだった


父や兄達とは違い魔法が使えない自分が


母の死の原因を作ってしまった自分が


泣き虫で兄達のように勇気がない自分が


そんな自分が王子は大嫌いだった



人々は王子が好きだった


魔法は使えないが優しい王子が


亡くなってしまった王妃にそっくりな王子が


泣き虫だけれど弱い者を助けようとする王子が


そんな王子が人々は大好きだった



兄達は王子にドラゴンについて話して聞かせていた


ドラゴンは強い


ドラゴンはかっこいい


ドラゴンは守り神のような者である


輝く様な笑顔を見せる弟が可愛くて


兄達はうっかりしていた


王子は泣き虫だが臆病ではなかった


好奇心も旺盛だったことを




話を聞いた数日後にはドラゴンの森にいた


何処にいるかわからないので動物に聞きながら歩いた


うさぎはずっと遠くで見たと教えてくれた


鹿は水場の近くで見たと教えてくれた


鳥は大きな木の下で寝ていると教えてくれた


熊は疲れ切った王子に背中に乗るかと聞いてくれた


王子は熊にお礼を言って背中に乗せてもらった



王子は自分を呼ぶ熊の声で目が覚めた


大きなルビーのような目がこちらを見ていた


少し驚いたが怖くはなかった


王子は熊にお礼を言って林檎を渡すと地面に降りた


ドラゴンは王子が側に来るのをただ見ていた


他の動物達もその光景をただ静かに見ていた


王子の予想以上だった


鋼の様に黒々としている体


ルビーのような美しい瞳


威厳のある佇まい


緊張で言葉が出てこない


王子はドラゴンの側に来ると少しはにかんで初めましてと挨拶をした


ドラゴンは幼い王子の態度と挨拶に戸惑ったが


怖がらせないようにゆっくりと瞬きをして頷いた




王子は度々森に来るようになった


兄達に比べると弱々しい王子が心配で


森にいる間は熊や虎の中で護衛の係ができた


ドラゴンは人と関わらないようにしていたが


王子のことは好きだった


一緒に食事をし


一緒に眠り


一緒に沢で遊んだ


背中に乗せて飛んであげたかったが


国に住む人間たちに恐怖を与えるといけないと思い


長い間空を飛ぶことはしていなかった




王子はドラゴンに色々な話をした


1番上の兄は勇敢で接近魔法がとっても強いこと


2番目の兄は賢くて遠距離魔法が得意なこと


父は慈悲深くて強くて偉大な王であること


それに引き換え自分は魔法が使えず弱いこと


ドラゴンは王子が腰に下げている剣を指差した


王子は今まで魔法の練習ばかりしていた


母親からの遺伝で魔力がなく


練習しても魔法が使えないのは知っていた


平和なこの国で戦う必要はなかったが


父や兄や国民の為にどうしても戦う力が欲しかった


王子はその日魔法を使う道を諦め剣を握った




王子はドラゴンに見守られながら剣の鍛錬をし


熊や虎に戦い方を教わった


ドラゴンは強すぎてまるで王子では相手にならず


たまに手合わせを挑んでも爪の先で転ばされていた


王子は強いドラゴンにも弱点があるのか聞いた


ドラゴンは少し考えてから


自身の胸をあたりを叩いて見せた


そこは特別硬い鱗で覆われており


剣では到底傷つけられそうもなかった





ドラゴンは自分の爪や牙が抜けると王子に渡していた


売ればお金になるからだ


王子がよく話している妹分のためになると思った


王子はドラゴンがお金になる事は知らなかった


そのため貰ったその爪や牙を使い剣を作った


その剣がなんでも切れるのを優しい王子は知らない


そう、たとえ鋼のようなドラゴンの鱗でさえも


その事はドラゴンしか知らず


王子が知るのはずっと後になってからだった



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