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64.収穫祭への誘い

 機械の扉が開いて4人は変換機から出る。麓からキャンプまでの間の移動で濡れていた服もカラリとか乾いている。


 最初こそエーテル体から戻る時にリセットされるこの感覚には妙な違和感があったが、最近は慣れてきて特に感じることも無くなってきた。


「ダンはもうエーテル体には慣れてきた?」


「おう。最初はエーテル体になった時に変な感じがしたけど、もう大丈夫だ」


 アッシュは最初からエーテル体自体には特に何も感じなかったが、エーテルを身近な物として生活しているモンク族に取っては何か違和感を覚えるものがあったのだろう。


 そう考えながら受付へと出る。


「お疲れ様です。ありがとうございました。こちらが報酬のディルになります」


 アッシュはディルの入った封筒を受け取る。


「ところで皆さん、今週末は何かご予定はありますか?」


 アッシュがギルド内通貨のカードを取り出そうしているところに、ニーナが問いかける。


「え……と、僕は空いてます」


 次どうするかというような話は何度も振られたが、休日の予定についての話をニーナから振られたのは初めてのことだったので、アッシュは驚きを隠せなかった。


「特には無いかなー」


「私も」


「僕はどこかで特訓するくらいだな」


 ダンの特訓が予定に入るのかはわからないが、とりあえず全員空いてはいるようである。


「ではもし良ければですが……こちらどうでしょうか?」


 ニーナが腕に付けた端末を起動し、宙に映し出された映像をアッシュ達に向ける。そこには大きく『ワヌホート収穫祭』と書かれていた。


「ワヌホート……?」


 最近アッシュは、もっと地理を知っておこうとD2の世界地図を見ながら地域名などを勉強しているところであった。


 元々覚えるのは得意なアッシュにとって地理を記憶するのは造作も無いことであったが、その名前には覚えが無かった。


「ワヌホートはD8の農業がとても盛んな地域で、毎年この時期になると各地で収穫祭を行っています。そのうち総本社で行われる祭事に、本来は抽選になるところを午前中に収穫を手伝うスタッフとしての参加される方を募集をしていまして、皆さんにお声掛けした次第です」


 D8であればアッシュの記憶に無いのも納得がいった。さすがに他の次元までは手が回っていなかったのである。


 知らない土地のその手の行事に参加できるというのは、かなり魅力的である。アッシュとしては是非とも行きたいところであった。


「僕は参加します。みんなはどうする? D8行ったこと無いし、いい機会だと思うんだけど」


「ギルドの催しでは無いので報酬は出ませんが、美味しいご飯が出ますよ」


 それを聞いたアイリの目が輝く。


「私も行く! いい機会だもんね! レイも、ね?」


「ん」


 アイリにせっつかれてか、レイも頷きで返す。


「それは特訓になるのか?」


 ダンはあくまでも特訓が優先のようである。だがアイリとレイも行くならば、ダンにも行かせたいところである。


「収穫作業って筋肉を使いそうだよね」


「たしかに。特訓にはいいかもね」


「じゃあ僕も行くぞ!」


 ダンも満面の笑みで了承する。


「では4名参加で承ります。……調査の件と合わせまして、ご協力感謝致します」


「パンデムの観光はしたいと思ってたので、ちょうど良かったです」


 と言いつつも、アッシュの本心はもう一つあった。


 アッシュはニーナからの依頼にはできるだけ応えたいと思っているのだ。


 竜種の襲撃を受けたあの日、アッシュ自身は間に合わなかったものの真っ先に駆けつけてくれたこと、そしてアイリとレイを助けてくれたことに報いなければという思いがあった。


 無論、自分だけの話では無い受注クエストについては、アッシュの一存で受注を判断することは避けるべきとも思っている。


 かと言ってニーナとそれ以外の繋がりが濃いわけではない。その間で悩んでいたところに今回のような案件である。受けない理由は無かった。


「そう言っていただけて何よりです。カードお返ししますね。続いて受注されますか?」


「今日はこれで終わります」


「はい、ではお気をつけて」


 アッシュ達はニーナに別れを告げてギルド窓口から出る。


「D8行ったことないし、楽しみー!」


「うん。ここに来てから他の次元に行くのは、リレイクの時以来だよね」


 D8に行くのが楽しみであることは間違いない。更に抽選になる程の人気行事とのことである。もう一つの本心は一旦置いといて、アッシュもまずはその収穫祭を楽しみに待つことにした。

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