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56.【C-狩猟】サミル池周辺⑦

「ほら、これ。さっきアッシュが発信機を付けてくれたから、これで位置がわかるの」


 サミル池から流れ出る川沿いの道を歩きながら、アイリが武器端末の地図を宙に映し出してダンに見せている。


「便利だな」


 ターレントのどこにいたのかはわからないが、ダンは最先端の物にはかなり疎いようだ。アイリにあれこれと機械を見せてもらっては、興味深そうにしている。


 その時だった。ダンが突如シールドを構える。アッシュ達が驚いて固まっている中、そのシールドに何か硬い物が飛んできてぶつかる音が響く。


 地面に転がったそれは矢であった。


「あいつらだ! また来た!」


 そう言うダンに向かって続けざまに矢が飛んでくるが、いずれもシールドに弾かれる。


「効かないぞ!」


 矢は前方の森から飛んできているが、射手は全く見えない。それにも関わらず、周りにいるアッシュ達などお構いなしに飛んでくる。


(隣にいる程度なら気にすることでも無いくらいの腕はある、ということなのかな)


 となれば相手はおおよそ見当が付いた。弓の名手と謳われるエルフだ。まだダンのことを追いかけていたようだ。


 だが先程のダンの話からしても、原因は森エルフ達の勘違いにある。であればアッシュとしてもできれば穏便に済ませたいところであった。


「ダン、相手はエルフだよね。ならば任せてもらえないかな?」


「いいけど、あいつら話聞かないぞ」


「うん。僕達もさっき合ったから、なんとなくそれは感じてる。……すいませーん! ちょっといいですかー?」


 アッシュは森の方へと声を張り上げる。だが矢は構わず飛んでくる。


「彼のことはセーレ様から聞きました! その上で僕達に一任されているので、話だけでもさせてもらえませんか?」


 アッシュの思惑通り、セーレの名前を出した途端に矢はピタリと止まる。そしてそのまま待っていると、前方の木の陰から女性が現れる。


 白い肌、金の髪、尖った耳。来た直後に出会ったエルフ達と同じ特徴だ。


 女性はアッシュ達と少し距離を取ったところで、立ち止まってアッシュ達をじっと見ている。その手には弓と矢が握られており、警戒は解いていないようだ。


「僕達は先程彼からも話を聞いて、お互いの勘違いから今のような状況になってしまったと判断しました。なのでここは引いてもらいたいと思っています」


「私達が勘違いをしていると?」


 女エルフは少しムッとしたような表情になる。


「納得できなくてもいいです。そちらにも事情があるでしょうし。なのでここからは交渉にしましょう。僕達は元々、セーレ様からの依頼でマカクエンを狩猟しに来ています。彼にはそれに協力してもらうことになっています。そしてそれが終わったら、僕達は彼を連れて帰ります」


 女性はそれを聞いて、何かを考えるように顎に手を当てる。


「……つまりマカクエンの狩猟の手伝いを償い代わりとした上で、お前たちがそいつを引き取るということだな」


 償いという表現が気に障ったようでダンが前に出ようとするが、アッシュがそれを抑えながら囁く。


「わかってる。けど今は我慢して」


「……わかった」


 ダンも悔しそうな表情を浮かべて呟く。


「いいだろう。私の一存では決められないので報告はさせてもらうが、それで納得はしてもらえるだろう。それと狩猟の様子は監視させてもらう」


 女性が腕を真っ直ぐに伸ばすと、小鳥が飛んできて腕に止まった。


「監視はこの者に任せる。では」


 女性はそれだけ言うと、足早に森の中へと入っていった。アッシュはその姿が見えなくなるのを待ってからダンに話しかける。


「ごめんね。でも手っ取り早く収めるには、こうするのがいいと思ったんだ」


「……仕方がない。少しくらいは我慢する」


「それでさ、ダンに言うのが後になっちゃったんだけど、この狩猟が終わったら一緒に来てくれないかな? ダンはレンジャーになった方が良いよ」


 パンデムだからこそ許されているが、例えばここがアースだとしたらそもそもレンジャー資格を持たない者が武器を持つこと自体が違法行為となる。


 ダンの言いっぷりからしてレンジャーでは無いのだろうと推測していたアッシュは、セーレからの依頼も思い出しつつダンを本部へと連れて行こうと思っていたのだ。


「レンジャー? なんだそれは」


「うーん……誰からも文句を言われずに特訓ができるところ、かな。お金も出るから、食べ物も買えるし」


 レンジャーとは何かという斜め上の質問に少し面食らうが、なんとかダンに来てもらえるよう言葉を選んで説明をする。


 アッシュ自身はクエストを特訓と考えたことは無かったが、間違ったことは言っていないはずだ。


「いいな! 僕もレンジャーになるぞ!」


 上手く伝わったようで、ダンは目を輝かせながら応じる。その横からアイリが口を挟む。


「ちょうどメンバー集めしようとしてるんだし、うちに来てもらえばいいんじゃない? ランスが得意みたいだし」


「お前たちと一緒のところか? 僕もそこがいいぞ」


 確かにランス専門がいるのは、今の編成から考えると非常に助かるところである。ダン自身も希望してくれているならば、それに越したことは無いだろう。


「レイはどう?」


「構わない」


「なら決まりだね」


 新しいメンバーとなるダンの加入をアッシュは喜んだ。

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