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ディーバ超次元戦記 〜The World of Twenty-eight Dimensions  作者: 八雲、
2章 〜レンジャーの仕事〜
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36.初休日

 休日。5回の労働の日の後に与えられる、2回の休みの日である。


 アースと繋がる以前は1日と1年以外の時間の概念が無かったパンデムにも、この休みの2日間を含む7日で1週間という考え方が入ってきてから数百年が経つ。


 もっともアースと繋がって以降に生まれた者の方が圧倒的に少ない魔族の中には、未だに慣れないという者も少なからずはいる。


 だが数だけで言えば大多数を占める、争いの日々から離れてアース由来の企業に勤める者達などには浸透して来ており、定着はしたと言って間違いはないだろう。


 アッシュ達も今日は依頼を受けには行かずに、買い物に出かけようと決めている。


 もちろんギルドに休みは無いため、やろうと思えばできる。だがアース出身の3人にとっては、この2日間は身体に染み付いた”休むべき日”なのだ。


 そのギルドも職員の顔ぶれは普段とは異なっている。或いはそう感じるのはレンジャー用のカウンターにニーナがいないからなのかもしれないとアッシュは一瞬考えたが、やはり全体的に見覚えの無い顔が多い。


「うーん……いないみたいだね」


 ニーナがいたら後で一緒にご飯に行かないか誘ってみようというアイリの提案でギルド窓口に来た3人だが、残念ながらカウンターの奥まで見ても目当ての姿は見当たらなかった。


「そっかー残念」


「まあ休日だからね。仕方がないよ」


 アッシュ達は窓口を出ると、週明けの狩猟クエスト用のアイテムの買い出しのために、建物の3階へと上がりショップへと入った。


「クラスだけど、狩猟だからレイにナイトで前衛をやってもらって、アイリにはメイジで後衛を頼みたい」


「メイジね。了解」


 何をどのくらい持つかは、クラス構成に大きく依存する。例えばアッシュ達の場合はアイリがメイジをできるので問題ないが、できる者がいない場合はエーテル修復薬を多めに持つ必要が出てくるのだ。


「助かるよ。じゃあ修復薬はちょっと少なめで……後は僕が何をやるかなんだよね。ガーディアンか、昨日と同じくソルジャーがセオリーなんだけど」


 アッシュは修復薬を数個、買い物カゴに入れながら言う。


 “メイジがいる3人グループでの狩猟”という時点で一般的な編成論からは外れてくるのだが、セオリーに従うと残りの2人はグラディエーターやスレイヤーのような攻撃寄りの前衛クラスが推奨となる。


 ただしレイのように”片方が突出して強力”という仮定を置くと、もう1人はサポート寄りのクラスに回るというパターンもある。


 この際のサポート寄りのクラスは、攻撃役に集中してもらうために対象からの攻撃を一手に引き受けるガーディアンか、総合的に戦いやすい状況を作るソルジャーかのどちらかになる。


 勿論どちらも一長一短であり、ガーディアンは戦闘時を含めて器用に立ち回ることは難しく、ソルジャーは戦闘自体には干渉しづらいため攻撃役の負担が大きくなるのだ。


「持っていくアイテム少なくした方がいいし、ソルジャーでいいんじゃない?」


「でもソルジャーにすると、レイの負担が大きくなっちゃうから」


「私は構わない」


 アッシュの心配を余所に、レイが即答する。


「だってさ」


「レイがいいならそうするけど、ほんとにいいの?」


「戦いやすくしてくれた方が助かる」


 そこまで言われれば、逆にこれ以上気に掛けてしまうのも悪いとアッシュは考える。


「わかった、じゃあソルジャーでいこう。なら発信機も支給分で十分だし、後は……」


「せっかくお金いっぱい貰ったんだし、これから使いそうな物は買っちゃえばいいじゃん」


「……それもそうだね」


 アッシュはアイリの方を振り返りつつ応える。一昨日のリレイクの件の報酬が入り、今3人の財布はかなり潤っていた。


 必要な物を見極めつつ使っていくのが正しいやり方ではあるが、これだけ貰ったばかりだと言うのに出し渋る程、ケチな人間にはなりたくはないというのがアッシュの考えである。


「じゃあ各自で必要そうなものを買っちゃおう。お金はさっき渡した分には収まるようにね」


「さすがにそんなには使えないって。私は食料品のところ行ってるね」


「ん。砥石買ってくる」


 アイリとレイはそれぞれで欲しい物がある場所へと向かう。アッシュは自分で言っておきながら、欲しい物がすぐに出てこずに考え込む。


(修復薬はアイリがいるからあまり使わないし……)


 そこでアッシュは、ふとヘイス草原でのアイリとの会話を思い出してトラップのコーナーへと向かった。


 棚には様々なタイプのトラップが並べられていたが、その中からお目当ての物を見つけるのは然程苦労しなかった。


 トラップの多くは地面に置いて隠すために薄い円盤のような形状だが、アッシュが探していたのは筒状の物だったためだ。


 アッシュはそれを手に取り眺める。この型はガス噴射で針を飛ばす物で、その針に毒を仕込んで様々な効果を発揮することができるのだ。辺りを見回すと針と毒薬瓶も置いてある。


 トラップは一般的には使い捨てという感覚が強く、円盤状のものなどが該当する。もちろん使い捨てなので値段も低く抑えられている。


 一方で筒状の方は何度も使うことを前提としているため丈夫な作りになっており、代わりに手を伸ばしづらい値段設定である。


 だが、だからこそ今のような大金を貰ったばかりの時に試してみる価値はある。


(それに毒薬はアイリが精製出来るから、何回か使えば他のトラップよりもお得にもなる……はず)


 アッシュは自分に言い聞かせるように心の中で何度か繰り返しつつ、筒と針を持って精算カウンターへと向かった。

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